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2018.01.13

地域のためのデザイン/理にかなっているか/統合して考える

吉村 伸一((株)吉村伸一流域計画室 |EA協会 副会長)

 昨年12月京都大学で開催された景観・デザイン研究発表会では、「景観・デザインは日本を救うか?」をテーマに「20周年記念シンポジウム」が企画された。中村良夫先生(東京工業大学名誉教授)の基調講演に続き、第1部:景観・デザインを問い直す、第2部:デザインの未来、第3部:景観学と政策というテーマで報告と討論がなされた。若手が主体で企画したもので大変面白かった。


 印象に残ったことをいくつか記す。建築家の内藤廣さんはインタビューの中で「これまでの地勢的な最適解ではなく、来るべき時代の地域固有の最適解を導き出す」と述べている(景観・デザイン委員会設立20周年記念シンポジウム資料集:以下資料集)。長谷川浩巳さん(オンサイト計画設計事務所)は「よりよいこれからを目指す」という表現をした。末祐介さん(中央復建コンサルタンツ)は宮城県女川町の復興に関連して「地域が持続的になっていく」ことが目標だと述べた。いい場所をつくることで地域を主体的に考える人が増えたと。星野裕司さん(熊本大学)は、風景とは一番身近にあるもので、だから日常生活(地域)を大事にするという視点が重要だという。地域にとって本当に必要なものはなにかを読み解き、地域の可能性を引き出していくという姿勢が重要だろう。

 長谷川浩巳さんは「理にかなっているか」という問いかけが大事だと言う。「いじらないでつくる」ことを考え、そこに新しい価値を付け加える。横張真さん(東京大学)は土木、建築など「つくる」を前提とした既成の枠組みに対して「つくらない」「つかう、再利用」といった概念を導入し、具現化する計画論の創出ということをインタビューで述べている(資料集)。人口減少、高齢化、経済の縮小といった社会変化を踏まえると、「つくらない」「いじらないでつくる」という考え方は重要だと思う。

 

 昨年は、河川法改正20周年でもあった。それまでの治水・利水に加えて法の目的に「環境」を付け加えた。河川整備計画への市民参加も含め画期的な法改正だったと思う。しかし、現場の多くでは、環境はプラスアルファーとして扱われているのが実情だ。治水・利水が第一義的な課題で環境は可能な限り配慮する(できないと判断すると配慮しない)。治水・利水・環境は分離して捉えられ、環境が最優先になることはまずない。

 多自然川づくりも同様である。この考え方をどう転換したらいいのか。簡単ではないが「治水と環境を統合して考える」という思考スタイルをいかにして説き起こし浸透させていくかということだと考えている。歴史的には、近世までの治水施策・治水技術にそれを見ることが出来る。先のシンポジウムでも「平常時のデザインと非常時のデザインの統合化」や「防災景観論」という提起がなされた。「安全な川」というのは設計条件の一つであり、「いい川」こそが本来的な目標になるべきであろう。

 

 昨年善福蛙(善福寺川を里川にカエル会)で「川は誰のものか」というテーマで話し合ったことがある。よく聞くのは「川は国民共有の財産である」という言い方である。特に異論を挟むような考え方ではないように聞こえる。しかし、そこには「川は国家のもの」という響きがあるという指摘があった。そう言われてみると、河川管理者は国土交通大臣であり都道府県知事である。「川は地域のもの」と考えるべきではないか、というのがそのときの議論である。国家(管理者)の目線からの川ではなく、地域・住民目線からの川という考え方に立ちたい。

 

 行政が復旧・復興方針を地元に示す。それが、これまでの災害復旧であるが、新しい動きもある。昨年7月の北部九州豪雨災害に関連して、九州大学は約50名の分野横断的な研究者で構成する「災害調査・復旧・復興支援団」を結成した。これは画期的なことだと思う。島谷幸宏流域システム研究室では、集落ごとに住民との話し合いを重ね、地域住民による地域発の復旧・復興方針を策定しようと精力的に活動している。期待したい。

 

2018年 新年のご挨拶

吉村 伸一Shinichi Yoshimura

(株)吉村伸一流域計画室 |EA協会 副会長

資格:
技術士(建設部門:河川、砂防および海岸海洋)

技術士(環境部門:自然環境保全)

特別上級土木技術者[流域・都市](土木学会)

 

略歴:
1948年 北海道生まれ、石狩川流域人

1971年 室蘭工業大学土木工学科卒業

1971年 横浜市役所 勤務

1998年 吉村伸一流域計画室設立、代表取締役

 

主な受賞歴:
2005年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(和泉川/東山の水辺・関ヶ原の水辺)

2008年 土木学会デザイン賞 優秀賞(嘉瀬川・石井樋地区歴史的水辺整備事業)

2011年 土木学会デザイン賞 優秀賞(いたち川の自然復元と景観デザイン)

2018年 土木学会デザイン賞 優秀賞(伊賀川 川の働きを活かした川づくり)

2021年 復興デザイン会議第3回復興設計賞(川原川・川原川公園)

2022年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(川原川・川原川公園)

 

主な著書:
日本文化の空間学(東信堂、2008、共著)

多自然型川づくりを超えて(学芸出版社、2007、共著)

多自然川づくりポイントブック(日本河川協会、2011、共著)

図説・日本の河川(朝倉書店、2010、共著)

川の百科事典(丸善、2009、共著)

川・人・街-川を活かしたまちづくり(山海堂、2001、共著)

自然環境復元の技術(朝倉書店、1992、共著)

 

組織:
(株)吉村伸一流域計画室

神奈川県横浜市

Email:yoshimura@ys-ryuiki.co.jp

 

業務内容:
・河川の自然復元および景観デザインに関わる研究、計画、設計

・川づくり、まちづくりに関わるコンサルタント業務

・市民参加、合意形成マネジメント

・その他上記に付帯する業務

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