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2013.01.17
年頭にあたって-善福蛙の夢-
吉村 伸一((株)吉村伸一流域計画室 |EA協会 副会長)
善福蛙ってなに?「善福寺川を里川にカエル会」の略称です。東京の善福寺川をいい川にしようと昨年3月準備会を立ち上げ、1年間ウォーミングアップ活動。今年4月6日に正式立ち上げの予定です。言い出しっぺは九州大学の島谷さん。立ち上げメンバーはほとんどが外人部隊。九州大学、東京工業大学、東京学芸大学などの学生も参加しています。若者たちは「オタマジャクション」という部会?を立ち上げ、若い女性は「川ガール」、昔若かった女性は「川マダム」。東京学芸大学では「東京川ガール」の研究が始まっています。先週は若手デザイナー3人が参加。なんとなく、盛り上がっています。
全長約2kmの善福寺川緑地。緑地はすばらしいが、川はあまりにもかわいそう。当初、私たちは公園と川とを一体化してもっと豊かな空間にしたいと考えていました。川沿いに緑地があるのだから、それをつなげればよい。ところが、地元で活動している市民グループと交流する中で、「合流式」下水道の問題が大きいということが分かってきました。合流式は、雨が降るとトイレの汚物などがそのまま川に流れ出すシステム。汚いので川で遊ぶことができない。「合流式」を「分流式」に、というのが地元市民グループの長年の訴え。でも、相手は行政。莫大なお金がかかる。十数年間活動してもなかなか前が見えない。そういうときに私たちと交流が始まったのでした。
善福蛙はちょっと常識から外れた発想をする。例えば「雨の日にはトイレに行かない。風呂水を流さない。そうすれば、善福寺川の汚れも少なくなる。分流式下水道を待っているよりいい」みんな、どっと笑う。でも、よく考えてみると、昔の水の使い方はそうだったよなと。なんとなく納得。
「カエル=蛙=変える=孵る…。新しいものが生まれるという意味も込めています。カエルは水辺と陸の両方の環境がそろわなくては生きていけません。人も現実の世界と精神の世界(夢の世界)の両者の間で生きています。環境と心が豊かになる社会を目指して、仲間と力を合わせて考え、行動し、カエル。大きな震災があり、日本人の心は沈んでいます。楽しいことを、力を合わせてすること、身近な環境をみんなで変えることが東北の復興にもつながると信じています。夢を持ちましょう。ワイワイガヤガヤと楽しく孵(か)えましょう。東京が変われば、日本は変わります。」
善福蛙のメッセージです。
ちょっと大風呂敷広げすぎ?
いやいや、先日のアクション。善福蛙メンバーが関わっている上西郷川の再生(福岡県福津市)と佐渡島加茂湖水系再生研究所(通称:カモケン)の取り組みが紹介された。最初は「そんなことできるの?」と、地元からは見られていた。だが、ちゃんと前進、実現しているのだ。だから、善福蛙の夢もきっと実現する。
そんな気がしてきた。
いつも須賀神社に集合してから善福寺川へ
昨年12月に亡くなった杉山恵一さん(NPO法人自然環境復元協会)が10月に記した「所感」が送られてきた。その最後に「『内なる自然』は『外なる自然』によって豊富化する。人が生きるために自然を守ろう。失われた自然を回復させよう。(中略)今後はもっと『内なる自然』に眼を向け、その自然修復に力を注ごうではないか。」
私たちが人間らしく生きる(内なる自然を取り戻す)ために外なる自然と関わる。善福蛙のメッセージと重なるように思う。
善福蛙 テーマソング
おにやままごたろう作
杉並流れるまちの川/ゆったりのんびり流れるけれど/コンクリートじゃ登れない/コンクリートじゃ生きられない/なんとかしなくちゃ/善福寺川/生き返らなくちゃ/善福寺川/ぜんぜんぷくぷく/かくふくかくふく/かえろかえろ/けーろけーろ/善福蛙
街中流れるふるさとは/なんでこんなになったのか/蛙のすめないところには/人間すめるわけがない/なんとかしなくちゃ/善福寺川/生き返らなくちゃ/善福寺川/ぜんぜんぷくぷく/かくふくかくふく/かえろかえろ/けーろけーろ/善福蛙
みんな集まれ蛙たち/善福寺川のせせらぎに/みんなもってるふるさとの/思い出抱いて帰ろうよ/なんとかしなくちゃ/善福寺川/生き返らなくちゃ/善福寺川/ぜんぜんぷくぷく/かくふくかくふく/かえろかえろ/けーろけーろ/善福蛙
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吉村 伸一Shinichi Yoshimura
(株)吉村伸一流域計画室 |EA協会 副会長
資格:
技術士(建設部門:河川、砂防および海岸海洋)
技術士(環境部門:自然環境保全)
特別上級土木技術者[流域・都市](土木学会)
略歴:
1948年 北海道生まれ、石狩川流域人
1971年 室蘭工業大学土木工学科卒業
1971年 横浜市役所 勤務
1998年 吉村伸一流域計画室設立、代表取締役
主な受賞歴:
2005年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(和泉川/東山の水辺・関ヶ原の水辺)
2008年 土木学会デザイン賞 優秀賞(嘉瀬川・石井樋地区歴史的水辺整備事業)
2011年 土木学会デザイン賞 優秀賞(いたち川の自然復元と景観デザイン)
2018年 土木学会デザイン賞 優秀賞(伊賀川 川の働きを活かした川づくり)
2021年 復興デザイン会議第3回復興設計賞(川原川・川原川公園)
2022年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(川原川・川原川公園)
主な著書:
日本文化の空間学(東信堂、2008、共著)
多自然型川づくりを超えて(学芸出版社、2007、共著)
多自然川づくりポイントブック(日本河川協会、2011、共著)
図説・日本の河川(朝倉書店、2010、共著)
川の百科事典(丸善、2009、共著)
川・人・街-川を活かしたまちづくり(山海堂、2001、共著)
自然環境復元の技術(朝倉書店、1992、共著)
組織:
(株)吉村伸一流域計画室
神奈川県横浜市
Email:yoshimura@ys-ryuiki.co.jp
業務内容:
・河川の自然復元および景観デザインに関わる研究、計画、設計
・川づくり、まちづくりに関わるコンサルタント業務
・市民参加、合意形成マネジメント
・その他上記に付帯する業務
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