エンジニア・アーキテクト協会

概要：

朝潮運河沿いは、中央区の基本計画2013に基づき、東京都の事業である護岸の耐震化に合わせて、護岸上部の修景（遊歩道化）による「水とみどりのネットワーク」構想が進められている。本橋は、「勝どき・晴海地区の歩行者混雑緩和」と「災害時の避難路確保」のために、住宅が密集する勝どき地区と、大規模施設を有する晴海地区とを結ぶ橋として、朝潮運河上に新設された。運河および周辺の厳しい制約条件の下、景観に優れた橋を実現するために、検討委員会を重ね、地域住民の合意形成を図りつつ事業を進めた結果、今年6月に橋梁本体工事が完了した。引き続き、橋面工、取り付け道路、耐震護岸工事、橋詰広場、斜路の工事が進行中である。

架橋地：

晴海側から勝どき、月島地区をのぞむ。埋立時（明治期から昭和初期）の古い護岸の前面に耐震護岸が施工される。今回の歩行者専用橋は、その耐震護岸と一体で橋台を設け、朝潮運河を越えて勝どき地区と晴海地区と結ぶ橋となる。

全体模型写真1：

この地区は、朝潮運河と月島川という２本の運河が交差する特異な場所である。耐震護岸上は、背後の港湾用地と一体で、緑道公園として整備される計画である。

全体模型写真2：

朝潮運河には、幅40ｍ、高さAP+4.50mの航路が設定されている。この橋には、大型施設のある晴海地区の現地盤高を変えずに、バリアフリーの縦断線形で航路を越えることが要求された。なお、勝どき・月島地区は、護岸高より現地盤が低いため、斜路と階段で連結する計画とした。

橋梁一般図：

航路限界とバリアフリーの条件より、支間長45m、桁高1.0mという、厳しい制限を受ける。一般的な歩道橋では非常に揺れやすくなるため、剛性の高いコンクリートのラーメン構造を基本とした。なお、この橋に添架されるφ130の電力ケーブル12条の納め方にも工夫が必要とされた。

主桁の施工ステップ：

施工時は、航路幅を20mに制限することができた。側径間部は、仮設構台上に設けた支保工にて場所打ちで施工、中央の桁は、完全に航路を閉鎖し、台船にて架設した。準備と予備日を含め4日間の航路閉鎖で架設することができた。

中央径間主桁架設時の写真：

①主桁を仮設構台から台船に移動

②台船を仮設構台に繋がれたロープにて所定の位置に移動

③主桁のセット（上下および水平方向に調整）

④主桁の支持点を台船から仮設構台に移動

橋体工完成写真：

きわめて桁が薄く、路面高が抑えられていることがわかる。なお、橋脚の前後の防衝杭も、デザインしたものである。

完成予想パース：

今後、側面のタイル、防護柵、照明、舗装、排水溝などを現地で確認しながら、橋詰やスロープ階段などとともに施工を進めていく予定である。

これらの意匠設計については、後日別途報告する。

所在地：

東京都中央区

竣工年：

2017年10月(予定)

諸元：

PC3径間連続ラーメン橋，橋長87.8m

関係者：

事業主体｜東京都中央区

詳細設計｜（株）エイト日本技術開発

設計協力｜二井昭佳（国士舘大学）、イー・エー・ユー