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2022.11.19
37|九段坂公園
山田 裕貴(株式会社Tetor(テトー)|EA協会)
九段坂公園は、財務省の敷地に昭和40年に開園した千代田区が管理する公園である。開園以降50年が経過し、施設の老朽化や地盤の不陸等が目立ってきており、改修が望まれていた。公園敷地内の高低差の処理と銅像と常燈明台の存置を両立させるため、公園全体を4段の広場で構成することとし、それぞれの高低差が1m以内となるように、公園全体を違和感なく処理した。また、千鳥ヶ淵側にバリアフリールートを設け、靖国通りの歩道を拡張するような形で歩道を設けることで、公園の南北どこからでもバリアフリーで入ることができる回遊性の高い広場を実現した。
これまで靖国通りの歩道と公園は分断されていたが、公園側の階段を境界からセットバックすることで、一体的となった。どこからでも入れる構成により、整備後は多くの人が自然と公園内に足を運び、ご飯を食べる、休憩をする、散歩をする、銅像を眺めるなど、様々な利用が見られ、日常的な憩いの場となっている。
改修前の九段坂公園、歴史的な銅像が鎮座していたが、近づける状態ではなかった。また、公園と歩道に高低差があり、分断されていた。
改修にあたっては歩道の勾配を吸収しながら4つの広場(段)をつくり、銅像も広場の表に出していった。地区計画により銅像は高さ・位置が変更できなかったため、原位置で存置することをコントロールポイントとしている。
公園の一部を歩道部として拡張することで、幅の広い歩行空間を提供している。改修前は通勤時に渋滞が発生していたが、改修後は解消されている。
本公園の一部は史跡でもある。法肩にあった見晴台は修景を行いながら、公園の施設として取り込んだ。お堀側のスロープからアクセスができるようにした。
公園には境界がなく、いたる所から入ることができる。市ヶ谷駅と九段下駅の間に位置していることもあり、日常的にも多くの人に利用されている。
上から2段目の広場は眺望広場として位置付けた。ベンチからは中景に千鳥ヶ淵、遠景に東京タワーが見える。ベンチも石材と木材を組み合わせた風格のあるものを目指した。
手すりや照明柱についても、風格あるデザインを目指してオリジナルのものにしている。照明柱は公園内にある常灯燈台の八角形をデザインモチーフとしながら、対比的なデザインとなるように、透過性のあるデザインとした。
新旧の舗装の納まりについても慎重に検討を行った。写真左はもともと銅像足元にあった御影石舗装、右は新規に敷設した御影石とコンクリート平板舗装をミックスさせた舗装。
施工段階においてデザイン監理を行ったことで、きめ細やかなデザインを実現することができた。舗装材やストリートファニチャーの色彩や端部の納まり、植栽については、現地で検討を行った。
デザイン監理期間は8ヶ月とそれほど長くなかったが、定例会議を中心に検討した事項は多岐にわたっている。そのことがクオリティーの高い空間デザインの実現に向けて大きな役割を果たした。監理内容については以下の論文にもまとめている。
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00897/2020/16-A51A.pdf
以下に実際の使われ方について示す。
千鳥ヶ淵と東京タワーが一望できる眺望広場からは写真を撮る人をよく見かける。花見の時期や入学卒業シーズンの記念写真の場所としても利用されている。
銅像を広場の中に取り込んで、まちに対して開いたことで、銅像も風景の1つとして参画している。改修後、銅像やサインを眺める人が想像以上に増えた。
武道館にも程近いため、ライブ時やイベント時の待ち合わせ場所や、イベント後の憩いの場所として利用されている。写真は2022年の花見時期の様子。コロナ禍にあって千代田区の桜まつりは開催されなかったが、多くの人出が見られた。
設計時、眺望広場はイベント時にテントを配置できる場所と想定した。主には千代田区が毎年行っていた桜まつりのイベント会場として位置付けている。
改修完了(2020年3月)直後に新型コロナウイルスが蔓延した影響により、桜まつりは開催できていないが、2022年9月27日、安倍元総理の国葬の一般献花会場として活用され、多くの人が足を運んだ。
所在地:
東京都千代田区
竣工年:
2020年3月
諸元:
面積:2,043.71m2(延長120m、幅員約11〜23m)
立地環境:靖国通り及び千鳥ヶ淵に隣接
法肩2mの範囲は国指定史跡
主要施設:トイレ、ベンチ、階段、スロープ、手すり、転落防止柵、銅像2基、常灯燈台1基、歩道用照明柱
受賞:
2021土木学会デザイン賞・優秀賞
事業費:
約4億円
関係者:
事業主体|千代田区
基本設計・詳細設計|株式会社 国際開発コンサルタンツ+株式会社Tetor
デザイン監修・デザイン監理|株式会社Tetor
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山田 裕貴Yuki Yamada
株式会社Tetor(テトー)|EA協会
資格:
博士(工学)
登録ランドスケープアーキテクト(RLA)
略歴:
1984年 愛媛県新居浜市生まれ
2006年 熊本大学工学部環境システム工学科卒業
2008年 熊本大学大学院自然科学研究科社会環境工学専攻 修士課程修了
2011年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 博士課程修了
2011年 株式会社イー・エー・ユー(〜2015)
2012年- 法政大学 兼任講師
2016年- 株式会社Tetor 代表取締役
2017年- 国士舘大学 非常勤講師
2018年- 東京大学 非常勤講師
2019年- 甲州市景観アドバイザー
2021年- 株式会社 風景工房 共同代表
主な受賞歴:
2011年 グッドデザイン賞(白水堰堤鴫田駐車場・トイレ)
2017年 土木学会デザイン賞 優秀賞(西仲橋)
2019年 土木学会デザイン賞 優秀賞(桜小橋)
2019年 土木学会デザイン賞 奨励賞(ふらっとスクエア)
2020年 グッドデザイン賞 (ナギテラス)
2020年 グッドデザイン賞(フットライト・バナーポール)
2020年 土木学会デザイン賞 奨励賞(ナギテラス)
主な著書:
ようこそドボク学科へ(学芸出版社、2015、共著)
組織:
株式会社Tetor(テトー)
代表取締役 山田裕貴
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂4−2 福井ビル401
TEL:03-6280-8360
FAX:03-6280-8361
業務内容:
・土木、造園、都市等に関わる景観デザイン、設計、コンサルタント業務
・まちづくりに関わるコンサルタント業務
・土木、造園、都市、まちづくりに関わる研究・開発
・その他上記に付帯する業務
SERIAL
- EAプロジェクト100
2022.11.19
37|九段坂公園
- EAプロジェクト100
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