エンジニア・アーキテクト協会

ナギテラスは、人口約6,000人の奈義町において、人口を維持し、元気な経済がある「憧れのまち」を目指す「タウンプライド」のコンセプトを展開した空間整備の一つである。観光案内所、バス待合所、交流スペース、展示スペースなどを持ち合わせた複合建築と交通広場、バス停留所、みんなの庭が一体となった施設であり、豊かな自然の風景に開いた町民のための空間デザインである。施設の愛称は、小学6年生を対象として、自分の気に入った場所やこの場所でどんな気持ちになるかなどを話し合うＷＳを行い、まちと建築をつなぐ「テラス」の意と、奈義町の未来を明るく「照らす」場所という思いを重ねてナギテラスと名付けられた。

3つの小さな棟が集合した建築は、多方向に延びる屋根が特徴的な外観を持ち、局地風である広戸風の強風をいなすとともに、まちの全ての方向に対して表情を作っている。（Photo: Ookura Hideki）

多様なデッキ（テラス）を配置することで、室内空間とともにまちを眺めることができる様々な居場所を創出している。（Photo:Ookura Hideki）

（After） 隣接する市場池（ため池）と接続した敷地中央の土手（プロムナード）が建築を貫き、まちや周辺街路と連続的な動線を実現している。プロムナードは交通広場とみんなの庭を緩やかに分節することで、周辺や建築との柔らかな連続性を築きつつ、まとまりの良い居場所を提供している。（Photo: Ookura Hideki）

（Before） 隣接する市場池からの様子。うどん屋が閉店後、放置されていた敷地を奈義町が買い取った。周辺敷地との繋がりはない状態であった。

植栽計画では住民を交えたＷＳなどを通じて、地域の植栽に対する丁寧な調査を行い、コセ（防風林）を構成するヤブツバキやケヤキ、土手や畔から直接移植したカキドオシ、ヤマネコノメソウなどの地被植物によって多様に構成されている。みんなの庭は、奈義の豊かな自然や風景を体感でき、安らぎとくつろぎのスペースにもなっている。（Photo: Ookura Hideki）

敷地南側に位置する「みんなの庭」。学校からも近いことから子供の遊び場の1つにもなっている。サークルベンチからは町の象徴である那岐山が見える。井戸は旧建物内部にあったものを再利用した。（Photo: Ookura Hideki）

サインについても、奈義町のタウンカラー、タウンタイプをもとに一体的にデザインを行った。町の他の場所にあるナギバスサインや地区名サインも同様の思想で展開されている。

所在地：

岡山県勝田郡奈義町

竣工年：

2019年4 月

諸元：

敷地面積3,250m2、建築面積273m2、延床面積323m2

受賞：

グッドデザイン賞(2020年)

土木学会デザイン賞奨励賞(2020年)

関係者：

事業主体｜奈義町

設計｜株式会社Tetor、Eureka

設計協力｜清右衛門（佐々木知幸）

サイン設計｜株式会社Tetor、株式会社ランデザイン、有限会社クリマ

施工｜森安建設　株式会社

監修｜星野裕司（熊本大学）