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2022.10.24

36|道の駅伊豆月ケ瀬

新堀 大祐((株)設計領域|EA協会)

道の駅伊豆月ケ瀬は、伊豆縦貫自動車道の南延による月ケ瀬IC開通にあわせた新しい道の駅である。伊豆市による地域振興施設・水際公園と、国土交通省による道路休憩施設・駐車場、静岡県の管理である狩野川や周辺道路が一体となって整備されることで、目の前を流れる狩野川や伊豆の山々を望む美しい風景の一部となり、来訪者だけでなく、地域に暮らす人々の「居場所」としての道の駅が実現した。

 

施設のコンセプトは「風景と暮らしをつくる道の駅」。検討委員会における議論や、地域住民らとのワークショップを経て、市民利用を想定した多目的室や、地域要望の強かった水際公園・広場を公共空間として備えるなど、交流とコミュニティの拠点となるような道の駅を目指した。狩野川の瀬を流れる水の音を聴きながら天城連峰を望む地形のポテンシャルを、建築とランドスケープが一体となった施設計画によって最大限に顕在化。商業施設や休憩施設といった機能の枠を越え、永い時間を耐える「風景と暮らしの骨格」とすることを目指した。

 

 

 

 

整備前の敷地周辺:

狩野川に向かって段々に傾斜していく地形。川に近い立地ではあるが、実際に川の流れを感じられる場所はほとんどなかった。

 

 

地元ワークショップの様子。施設のあり方や地域との連携、情報発信などについて地域住民と議論が重ねられた。

 

 

河川空間とシームレスに連続する水際公園。狩野川沿いの立地を活かした一体的な景観デザインを実現している。川に向かって緩やかに降りる元の地形を活かした計画とし、狩野川沿いの植生も出来る限り残すことで、地域の自然風景に蓄積した時間を継承することを目指した。

 

 

1階部分を土留めを兼ねた鉄筋コンクリート造として川に近い高さに埋め込むことで、周囲の山々に対して突出しないボリュームに抑えた。施設の前面はイベント活用もできる広場空間として整備。

 

 

 

開放的な吹き抜けの大空間が施設内に狩野川の自然風景を取り込む。地場のヒノキ材を用いた木屋根のトップライトからは優しい光が注ぎ込み、施設全体が地域住民の日常的な居場所になっている。

 

 

 

2階の休憩スペースは全面ガラス張りとすることで、狩野川の風景をドラマチックに楽しむことのできる特等席となっている。

 

 

 

地場産品を豊富に扱う物販スペースは、柱の少ない構造により自由度の高い利用が可能。地域振興施設の指定管理予定者とは設計段階において、事業運営計画を踏まえた協議を進め、開業後の施設の使われ方まで含めた調整を行っている。

 

 

 

水際公園の緑の散歩道は、施設と地域をつなぐ。道路工事で発生した残土を用いた築山は、子供達の遊び場所となりつつ、公園と周辺住居を緩やかに仕切るバッファーとなる。

 

 

 

デッキテラスを介して、建物と水際公園が一体的につながる。水際公園はテラス状に居場所をつなぐ構成となっており、段々と川の近くにアクセスすることができる。

 

 

 

地域振興施設だけでなく、道路休憩施設や駐車場などを含めた道の駅施設全体について、施設配置や造成計画、色彩・仕上や植栽計画までトータルに調整を行うことで、一体的な景観デザインを実現した。

 

 

 

所在地:

静岡県伊豆市

 

竣工年:

2019年12月

 

諸元:

【建築】

敷地面積:7,297.46㎡

建築面積:659.21㎡

延床面積:990.29㎡

構造:混構造(1階:鉄筋コンクリート造、2階:鉄骨造、屋根:木造)

階数:地上2階

【広場・搬入路等】

面積:2,129.56㎡

【水際公園・テラス】

面積:4,615.87㎡

 

受賞:

第13回静岡県景観賞優秀賞(静岡県建築士事務所協会賞)

 

事業費:

約8億3千万円

※市整備分(地域振興施設、水際公園及び広場)

 

関係者:

統括・マネジメント|設計領域・都市環境研究所・昭和設計・ミクスド共同企業体

共同|構造:KAP 設備:Yamada Machinery Office 照明デザイン:CHIPS
 サインデザイン:氏デザイン 水際デザイン:吉村伸一流域計画室

監修|二井 昭佳(天城湯ケ島IC(仮称)周辺構想検討協議会委員長)

 

EAプロジェクト100

新堀 大祐Daisuke Shimbori

(株)設計領域|EA協会

資格:
一級建築士

 

略歴:
1976年 神奈川県横浜市生まれ

2000年 東京大学工学部土木工学科卒業

2002年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修士課程 修了

2002年 (株)ワークヴィジョンズ 勤務

2009年 (株)設計領域 設立

2010年 青梅市まちづくり・デザイン専門家

 

組織:
(株)設計領域

代表取締役 新堀 大祐

代表取締役 吉谷 崇

〒107-0062 東京都港区南青山3丁目4-7 第7SYビル6階

TEL:03-5413-3740

FAX:03-5413-3741

HP:http://s-sr.jp/

 

業務内容:
・土木、建築、造園に関わる設計及び監理

・地域、都市計画に関する調査、研究及び計画立案

・都市デザイン、景観設計に関する調査、研究及び計画立案

・インテリア、家具の企画、設計及び販売

・公園遊具、路上施設等の企画、設計及び販売

・広告、宣伝に関わる企画、編集及び制作

・イベント等の企画及び運営

・前各号に付帯する一切の事業

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