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2011.04.30
本格復旧まで社会基盤施設はすべからく仮設構造物での対応を!
‐現地で奮闘する土木技術者への感謝と各行政機関へのお願い‐
二井 昭佳(国士舘大学|EA協会)
いうまでもなく社会基盤施設はそこに暮らす人たちのためにある。復興にあたっては、これから地域の方たちが描くまちの将来像を踏まえたうえで、ふるさとの暮らしと美しい風景を支える社会基盤施設の整備をおこなうべきである。そのためには、いま現地で取り組まれているように、本格復旧まではすべからく仮設構造物で対応することが重要だと考える。
ほとんど報道されていないが、被災地ではものすごい速さで道路の応急復旧が進められている。東北中心部から三陸海岸から福島沿岸の各地区への緊急救援ルートは、地震当日に国土交通省東北地方整備局が決断した「くしの歯」作戦1)により、翌日には11ルートが確保され、その3日後には全てのルートが確保された。また三陸海岸沿いを走る国道45号では 22か所が通行不能となっていたが、被災から10日後には陸前高田市~南三陸町間を除く全区間が繋がった。その後も応急復旧は進められており、ほぼ1か月が経過した現在、国道45号の全線開通は時間の問題となっている。こうした迅速な対応が、どれだけ多くの命を救い、復興への足がかりを築いていることだろう。心から土木技術者たちの昼夜をおかない尽力に敬意を表したい。
国道をこれだけ短期間で応急復旧できた技術的な理由は、すべて仮設構造物や迂回路で対応していることによる。とくに国道45号では6つの橋が津波で流された。通常、橋を造るには小さいものでも1年以上の時間がかかる。にもかかわらず1か月ほどで通行可能にできたのは仮橋を用いたからだ。ただ、被災地には国道以外にも壊れた橋や道路が多く存在する。今後、復興へのさらなる足がかりをつくるためには、県道や市町村道の復旧も必要になるだろう。こうしたそれほど緊急性の高くない道路の復旧にあたっても、当面は本設構造物ではなく、仮設構造物や迂回路で対応するべきだと考える。
仮設構造物や迂回路にこだわるのには理由がある。これまで多くの被災地では、応急復旧からほとんど時間をおかずに本復旧が実施されてきた。その結果、美しい山肌は巨大なコンクリートの法面となり、思い出の詰まった橋は丈夫だけがとりえの無骨な橋に架け替えられた。たしかに機能は復旧されたかもしれない。しかしそれと引き換えに、ふるさとの情景を壊してきたのも事実である。
仮橋でも迂回路でも支障なく通行できるし、予想される余震にも十分耐えられる。まちの復興計画をしっかり固めてから本復旧に取り掛かっても決して遅くない。今後数十年に渡ってその地にあり続けるものなのだ。ふるさとの記憶を継承し、将来にわたって誇りに思えるものを造るために、本復旧ではデザインを含めた丁寧な設計が必要である。
今、被災地の方たちは、この困難のなかで懸命に立ち上がろうとしている。社会基盤施設は、その方たちを心から勇気づけるものでなければならないし、またそれだけの力も持っている。繰り返しになるが、そのためには当面仮設構造物で対応し、まちの将来像に合わせて本復旧することが望ましい。それを実現できるよう、関係機関には災害復旧制度の柔軟な運用を強くお願いしたい。三陸海岸や仙台・福島沿岸の美しい風景を引き立たせ、地域の人々の暮らしに貢献できる社会基盤施設であってこそ、真の復興を支えるものになるはずだから。
参考文献
1)「くしの歯」作戦とは、国土交通省東北地方整備局が災害時のために準備していた、東北中心部を南北に走る東北道・国道4号から、三陸・仙台・福島沿岸部を走る国道45号・6号への緊急救援ルートを確保するための作戦。全15ルートからなる。緊急救援ルートが地図上で櫛の歯のようにみえることから名づけられたと思われる。詳しくは国土交通省東北地方整備局の下記HPを参照されたい。地震当日からの応急復旧の進捗状況が毎日報告されている。
http://www.thr.mlit.go.jp/road/jisinkannrenjouhou_110311/kushinohasakusen.html
震災特別号
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―復旧、復興担当者に望む― - 篠原 修(GSデザイン会議|EA協会 会長)
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- 本格復旧まで社会基盤施設はすべからく仮設構造物での対応を!
二井 昭佳Akiyoshi Nii
国士舘大学|EA協会
資格:
博士(工学)
略歴:
1975年 山梨県生まれ
1998年 東京工業大学工学部社会工学科 卒業
2000年 東京工業大学大学院社会理工学研究科社会工学専攻修士課程 修了
2000年 アジア航測㈱ 入社(道路・橋梁部所属)
2004年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻博士課程 入学
2007年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻博士課程 修了
博士(工学)
2007年 国士舘大学理工学部都市ランドスケープ学系専任講師
2012年 スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)guest professor
2013年 国士舘大学理工学部都市ランドスケープ学系准教授
2014年 国士舘大学理工学部まちづくり学系准教授
主な受賞歴:
2006年 第8回「まちの活性化・都市デザイン競技」奨励賞
2007年 景観開花。「道の駅」佳作
2009年 広島南道路太田川放水路橋りょうデザイン提案競技(国際コンペティ
ション)最優秀賞
篠原修・内藤廣・二井昭佳編「GS軍団連帯編 まちづくりへのブレイクスルー 水辺を市民の手に」、彰国社、2010
組織:
国士舘大学 理工学部
〒154-8515 東京都世田谷区世田谷4-28-1
TEL:03-5481-3252(理工学部事務室)
HP:http://www.kokushikan.ac.jp/faculty/SE/laboratory/detail.html?id=107007
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