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2011.09.01

06|モケイづくりを始めよう その3~敷地の表現

二井 昭佳(国士舘大学|EA協会)
西山 健一((株)イー・エー・ユー|EA協会)

■はじめに

 前回までは土台となる地形の作り方について紹介した。そこで、今回からは敷地や建物、植栽や水面などの表現方法について説明していきたい。まず今月号では、敷地の表現として、道路、広場の表現方法を取り上げる。キーワードは、「スケール感を出すこと」、「模型全体のイメージに合わせた表現とすること」である。

■道路の表現方法

表現する道路が設計対象であるかどうかに関わらず、模型のスケール感や雰囲気を出すうえで、道路の表現は意外に重要である。たとえば、アスファルトの道路だからといって黒色の紙を貼る、あるいはレンガ舗装だからといってスケールを無視した目地線を入れてしまうと、模型自体がぶち壊しになってしまう。しかし上手に表現すれば、スケール感や雰囲気だけでなく、場所のつながりも表現できることを覚えておいてほしい。
さて、その作成方法であるが、コンターを積み重ねた地形模型は階段状になっている。そのため、そこに滑らかな道路の線を表現するには、コンターと関係なく道路だけを切り出した紙を貼る方法がよく用いられる。その際に注意しておきたいのは、コンターに対して斜めに貼ることになるので、平面図よりも長めに切り出すことである。また、車道に接して歩道がある場合には、車道部分を少し幅広にカットしておいて歩道を重ねると、歩車道境界をきれいに見せることができるし、スケールによっては歩道部分が高くなっていることも表現できる。
道路に用いる紙は、スケールに応じたテクスチャーがあるもので、たとえばアスファルトであればグレーといったように実際の素材よりも淡い色を選ぶのが良い。とくに色については、模型全体のトーンに合わせることが大事である。また具体的な紙としては、緻密なテクスチャーをもつため様々なスケールに対応し、色数も豊富なラシャ紙が使いやすいと思う。写真1は、ラシャ紙で道路を表現した模型である。写真を見てもらうと分かるように、車道にはレトラのようなラインテープを貼り、白線を表現すると、よりスケール感を出すことができる。

写真1::『世田谷こめにてぃ-水辺を取り戻すダム』「景観開花。2009」国士舘大学二井研究室応募作品

写真2 ラシャ紙とレトラテープ

また、そのほかの方法としては、パソコンで色やテクスチャーを調整し、印刷した紙を用いる場合もある。とくに、実際の業務で測量や設計のCADデータがある場合には、CADやイラストレーター等のソフトを使って、横断歩道や停止線などを白抜きした紙を用いると、よりスケール感のある道路を表現することが可能である。慣れてしまえば、それほど大変ではないので是非一度試してほしい(写真3)。

写真3 CADで横断歩道などを白抜きした紙を用いた模型(N区、安田尚央君作成)

(以上二井)

■広場の模型について

次に紹介するのは広場の模型表現である。ここでは、芝生広場などの植栽による広場ではなく、舗装された広場に絞って紹介したい。
広場の模型表現を考えるにあたって大切な点が2つある。一つは「スケール感を出す」という点。もう一つは「模型全体のイメージに合わせた表現とする」という点である。

設計対象となる場合が多い広場は、模型を見る側にとって一番目がいく場所である。そのため、模型の他の部分よりもまして、スケール感を出す(見る人がモノの大きさを感じ取ることができ、感情移入ができるように表現する)ことが重要になる。また、模型全体で表現したイメージに合わせた表現にすることも重要である。広場の舗装材の表現を考える場合、実際の素材の色と必ずしも同じ色で表現する必要は無い。色紙であれば、様々な色やテクスチャーを持った紙がある。一方、印刷によって出力するのであれば、細かな色の調整も可能である。模型全体のイメージに合わせて適切な方法を選ぶようにしたい。(スケール感を出すための表現密度や模型のイメージについての基本的な考え方については、本連載の6月号に詳しく述べているので、そちらを参照して頂きたい。)
では、広場の模型表現として具体的にどのような方法があるか?その具体的な表現方法について次に述べたい。

■舗装材の表現について

広場の模型表現においてポイントとなるのは、舗装材の表現である。舗装パターンの表現、目地の表現、段差の表現などが重要になる。作成する模型のスケールによって、どのような表現をするかは異なるが、以下によく用いる2つの方法を紹介する。

①広場の図面を印刷して模型に貼る
模型用に広場の図面を作成し、それを大判の紙に印刷して切り取り、模型に貼りつける方法である。まず、舗装の割付パターンや目地等を入れ、素材ごとに面を着色した模型用の図面を作成する。次に大判の紙(大判のプリンタがなければ、通常のプリンタでも可)に印刷して、必要な部分を切り取り、最後に模型に貼りつける(写真4)。図面を作成する手間がかかるが、正確につくることのできる方法である。
CADを用いて模型用図面を作成する場合が多いが、あえて検討中であることを見せる場合や、スピードが要求される場合は、手書きで模型用図面を書くこともある。また色をつける際にはベタっとした印象にならないよう、ハッチングを用いて着色することもある。ハッチングの間隔や線の太さを変えることで、微妙な色の調整も行うことができる。

 

写真4 舗装材の目地を印刷した模型の例(熱海渚親水公園模型 S:1/100 EAU作成)

 

②舗装材ごとに異なる紙を模型に貼る
舗装材の種類や色に応じて、用いる紙を変える方法である(写真5)。色紙が一般的に用いられることが多いが、色だけでなく、表面に微妙な凹凸がついた紙や、光を良く反射する紙、透き通った紙など様々な特徴を持った紙が市販されている。先に述べたように必ずしも舗装材の色と同じ色の紙を用いる必要は無いので、イメージあった紙を選択するようにしたい(写真6)。ただし、この方法ではパーツ毎に紙を切り出していく必要があるため、パーツ毎に隙間が生じやすいので注意が必要である。
またスケール感を出すために、②の方法でも舗装の目地を表現する場合が多い。色紙に印刷する方法や、カッターで切りこみを入れる方法、またスケールが上がると舗装材を一枚一枚作成する方法などがある。但し、どの位細かく目地を表現するかは作成する模型のスケールによって異なってくる。(これは①の方法に関しても言えることである。)スケールの小さい模型であまり細かく目地を入れ過ぎても、目地だけが密に入ってしまい、目地であることが認識できなくなる。
目地を色紙に印刷する場合、目地の線の色・太さと地の紙の色との相性が重要になる。黒だけではなく、少しトーンを落とした灰色や、地の紙と同系の色を用いることが多い。いずれにしても、目地の太さ、色、表現するピッチ等を様々に変えたパターンを作成し、一度試し刷りをして確認することをお勧めする(写真7)。

 

写真5 舗装材毎に異なる素材を用いた例(N計画イメージ模型 S:1/1000 EAU作成)

 

写真6(左):様々な紙の種類(凹凸のついたものや細い線が入ったものなど様々な紙がある)

写真7(右):試し印刷(線の太さ、色、ピッチ等の様々なパターンを印刷し、地の紙の色とのバランスを見る

 

■終わりに

今月号では、道や広場の模型表現について紹介をしてきた。次号は、建物の表現である。建築模型ではない「土木の模型」において、建物をどのように表現するかについて紹介したい。
(以上西山)

 

ドボクノモケイ

二井 昭佳Akiyoshi Nii

国士舘大学|EA協会

資格:

博士(工学)

 

略歴:

1975年 山梨県生まれ

1998年 東京工業大学工学部社会工学科 卒業

2000年 東京工業大学大学院社会理工学研究科社会工学専攻修士課程 修了

2000年 アジア航測㈱ 入社(道路・橋梁部所属)

2004年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻博士課程 入学

2007年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻博士課程 修了

博士(工学)

2007年 国士舘大学理工学部都市ランドスケープ学系専任講師

2012年 スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)guest professor

2013年 国士舘大学理工学部都市ランドスケープ学系准教授

2014年 国士舘大学理工学部まちづくり学系准教授

 

主な受賞歴:

2006年 第8回「まちの活性化・都市デザイン競技」奨励賞

2007年 景観開花。「道の駅」佳作

2009年 広島南道路太田川放水路橋りょうデザイン提案競技(国際コンペティ

ション)最優秀賞

篠原修・内藤廣・二井昭佳編「GS軍団連帯編 まちづくりへのブレイクスルー 水辺を市民の手に」、彰国社、2010

 

組織:

国士舘大学 理工学部

〒154-8515 東京都世田谷区世田谷4-28-1

TEL:03-5481-3252(理工学部事務室)

HP:http://www.kokushikan.ac.jp/faculty/SE/laboratory/detail.html?id=107007

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2012.12.18

場を繋ぎ、場を創る橋を目指して
震災特別号

2011.04.30

本格復旧まで社会基盤施設はすべからく仮設構造物での対応を!
‐現地で奮闘する土木技術者への感謝と各行政機関へのお願い‐
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WORKS

西山 健一Kenichi Nishiyama

(株)イー・エー・ユー|EA協会

資格:

技術士(建設部門:都市および地方計画)

 

略歴:

1975年 東京都生まれ

1998年 東京大学工学部土木工学科卒業(景観デザイン)

2000年 東京大学大学院社会基盤工学専攻修士課程修了(景観デザイン)

2000年〜2002年 (株)日本設計勤務

2002年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 博士課程入学

2003年 (有)イー・エー・ユー設立

2005年 東京大学大学院社会基盤工学専攻博士課程中退(景観デザイン)

2005年〜2007年 国土交通省東北地方整備局 景観デザイン研修講師

 

主な受賞歴:

2008年 土木学会デザイン賞 奨励賞(片山津温泉砂走公園)

2009年 広島南道路太田川放水路橋りょうデザイン提案競技(国際コンペティ

ション)最優秀賞

2013年 土木学会田中賞(各務原大橋)

2014年 土木学会田中賞(太田川大橋)

2015年 土木学会デザイン賞 優秀賞(各務原大橋)

2016年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(太田川大橋)

 

 

組織:

(株)イー・エー・ユー

代表取締役 崎谷 浩一郎

〒113-0033 東京都文京区本郷2-35-10本郷瀬川ビル1F

TEL:03-5684-3544

FAX:03-5684-3607

HP:http://www.eau-a.co.jp/

 

業務内容:

・土木一般、建築、造園等に関わる景観デザイン、設計、コンサルタント業務

・都市開発、都市計画、まちづくりに関わるコンサルタント業務

・その他上記に付帯する業務

 

 

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