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2021.01.23

コミュニケーション

篠原 修(GSデザイン会議|EA協会 会長)

昨年春、武漢から始まり、世界的な流行になったコロナは世界史にも残る事柄となろう。いつまで続くのか分からないが、今回のコロナ流行で誰しもが最も痛切に感じたのは、コミュニケーションの問題だったと思う。

 

ソーシャル・ディスタンスなどという耳なれない言葉で、他人との距離を取れ、と指示された。しかし、それは序の口で、5人以上で集まるな、酒を飲む会食は避けよ。イベントでは人数の上限を定める、などの規制が定着してしまった。つまり、社会的な動物である人間に、社会活動の基本となっている直接的なコミュニケーションを控えよ、という指令が出ているのが現状である。
この「コミュニケーション規制社会」は我々に何をもたらすか、を考える時期になりつつある。

 

一時期「映画づくり」の本に凝った事があった。何故か?。映画づくりと、我々がやっている「まちづくり」とが同様の行為だと考えたからである。絵画や彫刻とは違って、映画は1人では出来ない。スタッフがいて俳優達がいる。スタッフは監督、脚本家、キャメラ、音声、大道具、小道具など。集団芸術なのだ。この部隊は「寅さん」映画では、山田(洋次)組と呼ばれる。なぜか?。いつも同じメンバーでやっているから。いちいち監督の指示を仰いでいるようじゃ、「いい絵」はできませんよ、とスタッフは言うのだ。もはやコミュニケーション不用の世界。

 

映画は大衆が何を欲しているか、から始まる。それを察知して、こういう映画で、監督は誰で行こう、と決めるのが松竹では社長の城戸四郎だった。誰の組にやらせば受ける、いい映画が出来るのか。

 

市民、県民がどんな街を望んでいるのか、それを考えて、誰に頼むのか、を決めるのが市長や知事である。かつては最も安い金で作ってくれる組を選んでいた。これでは、いい映画ができる訳がない。そして、映画のように一括して制作のスタッフに任せる訳でもなかった。分割発注で出来た、バラバラに作られた短編を同時に見せられていたのである。いい町ができる訳がない。

 

山田組では俳優陣もいつものメンバーであった。寅さんもさくらも、山田監督が何を考えているのか、聞かずとも分かる。街づくりではこういうコミュニケーション不用の状況は考えにくい。最近では一括して仕事が出るようになったので、設計組のコミュニケーション問題は少なくなった。最も古くからの組は、南雲、小野寺組だろう。障害は発注者との、また住民とのコミュニケーションである。今度のデザイナーは何処の馬の骨だろうか、これでは初対面の、コミュニケーション無しの関係から始まるので、上手く行く訳がない。

 

南雲君は随分前に僕にこう言った。デザインより前に、地元の人と親しくなるんですよ、と。コミュニケーション無しから、コミュニケーション、コミュニケーション不用へ。

2021年 新年のご挨拶

篠原 修Osamu Shinohara

GSデザイン会議|EA協会 会長

資格:
工学博士

 

略歴:
1968年 東京大学工学部土木工学科卒業

1971年 東京大学工学系研究科修士課程修了

1971年 (株)アーバン・インダストリー勤務

1975年 東京大学農学部林学科助手

1980年 建設省土木研究所研究員

1986年 東京大学農学部林学科助教授

1989年 東京大学工学部土木工学科助教授

1991年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授

2006年 政策研究大学院大学教授、東京大学名誉教授

 

主な受賞歴:
1986年 国立公園協会 田村賞

1990年 土木学会田中賞(森の橋・広場の橋)

1996年 土木学会田中賞(東京湾横断道路橋梁)

2000年 土木学会デザイン賞優秀賞、土木学会田中賞(阿嘉橋)

2000年 土木学会出版文化賞「土木造形家 百年の仕事-近代土木遺産を訪ねて

2001年 土木学会デザイン賞 最優秀賞、土木学会田中賞(新港サークルウォーク)

2002年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(阿嘉橋、JR中央線東京駅付近高

2004年 土木学会田中賞(朧大橋)

2004年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(陣ヶ下高架橋)

2004年 グッドデザイン賞 金賞(長崎・水辺の森公園)

2005年 土木学会田中賞(謙信公大橋)

2006年 土木学会出版文化賞「土木デザイン論-新たな風景の創出をめざして-

2007年 土木学会田中賞(新西海橋)

2008年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(苫田ダム空間のトータルデザイン)

2008年 土木学会田中賞(新豊橋)

2008年 ブルネル賞(JR九州 日向市駅)

2008年 日本鉄道賞ランドマークデザイン賞(JR四国 高知駅)

2009年 鉄道建築協会賞停車場建築賞(JR四国 高知駅)

2010年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(新豊橋)

 

主な著書:
1982年「土木景観計画」、技報堂出版

1985年「街路の景観設計」(編、共著)、技報堂出版

1987年「水環境の保全と再生」(共著)、山海堂

1985年「街路の景観設計」(編、共著)、技報堂出版

1991年「港の景観設計」(編、共著)、技報堂出版

1994年「橋の景観デザインを考える」(編)、技報堂出版

1994年「日本土木史」(共著)、技報堂出版

1999年「土木造形家百年の仕事」、新潮社

2003年「都市の未来」(編、共著)、日本経済新聞社

2003年「土木デザイン論」、東京大学出版会

2005年「都市の水辺をデザインする」(編、共著)

2006年「篠原修が語る日本の都市 その近代と伝統」

2007年「ものをつくり、まちをつくる」(編、共著)

2008年「ピカソを超える者はー景観工学の誕生と鈴木忠義」、技報堂出版

 

組織:
GSデザイン会議

東京都文京区本郷6-16-3 幸伸ビル2F

TEL:03-5805-5578

FAX:03-5805-5579

HP:http://www.groundscape.jp/

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