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2012.04.10

参考資料:「大槌町東日本大震災津波復興計画 基本計画」より抜粋

(※本資料は、大槌町のホームページで公開されています。)

第6章 地域別の復興まちづくりの方向性

10月10日開催の第1回「大槌町地域復興協議会全体会」(以下「全体会」という。)を皮切りに、町内10地域に「地域復興協議会」(以下「協議会」という。)を立ち上げ、「地域復興協議会復興計画」(以下「地域計画」という。)の策定に取り組んできました。
協議会では、町の指定する4回(小鎚・金沢地域は2回)の会議のほか、地域によっては役員会及び独自開催等を積極的に開催し、非常に短い策定期間でありながら、地域の再生・復興に向けた議論を重ね、12月4日開催の第2回全体会において、10地域でまとめた地域計画を町に対して提案していただきました。
この章については、協議会から提案された地域計画をベースに、復興まちづくりの軸となる部分を、(1)基本的な考え方、(2)復興方針、(3)復興イメージの3項目にまとめたものです。復興イメージについては、協議会で行われた復興パターン図の検討段階で、具体的な事業手法等を組み入れた土地利用の議論を行っていないため、ここでは、土地利用と基盤整備の方向性を示しています。
基本計画策定後には、被災世帯を対象に「住宅再建に関する意向調査」を実施します。「大槌町内に住居を再建したいのか」、「津波浸水区域外の高台を希望するのか」、「住んでいた場所に再建を希望するのか」、「公営住宅を希望するのか」等の把握を目的としております。
今後は、「地域別の復興まちづくりの方向性」をベースに、意向調査の結果等を踏まえ、国や県をはじめとする関係機関との協議を行い、都市再生区画整理事業や防災集団移転促進事業など、土地利用に関する各種事業制度との調整を図りながら実施計画を策定することとしております。
このことから、実施計画の策定段階において、この章の内容が変わる場合もあります。

【地域別の構成】
(1)基本的な考え方
・ コミュニティ再構築の方向性
・ まちづくりの理念や価値
(2)復興方針
・ 市街の構造
・ 土地利用と施設配置
・ 避難の考え方
(3)復興イメージ
・ 土地利用と基盤整備の方向性

1 町方地域

(1)基本的な考え方

・ 大槌町の歴史的中心地である町方を、引き続き町の中心として再興することが多くの町民の願いです。安全・安心に配慮したうえで、町方を大槌の中心市街地として復興します。
・ 城山や豊富な湧水など、地域の歴史と自然の資源を活かした潤いのある都市空間の再生を進めます。

(2)復興方針

・ 城山への避難条件や津波による浸水条件を考慮しながら、市街地の集約を図り、避難しやすいまちづくりを行います。
・ 旧街道沿いには、公共公益的な施設や商業施設の立地を計画あるいは誘導し、中心市街地として再興するとともに、必要に応じて盛土等により安全性を高めます。
・ 非常時の避難拠点を兼ねる公共施設の主要な配置場所は、中心部の城山周辺、東側は大槌高等学校周辺(文教施設等)、西側は寺野周辺(公営住宅等)の3地点とし、また大槌川・小鎚川沿いの地域に移転希望者のための居住地を確保することによって、U字型のまちの骨格形成を図ります。
・ 再興する市街地をL字型に取り囲むように、公園や運動施設等を含む緑地帯を確保し、防潮林(水害防備林)の機能を場所に応じて組み込みながら、防潮堤の視覚的影響を軽減する整備を行います。
・ 中心市街地とそれを取り囲む公園・緑地帯との接合部には、水(湧水等)を配するなど、緑豊かで潤いのある魅力的なまちづくりを行います。また、その緑地帯の一部に製造業・流通業などの産業用地を確保します。
・ 城山を災害時対応の機能中枢に位置付けて必要な整備を施すとともに、市街のいずれの場所からも速やかに到達できるように、避難路の体系を組み立てます。この体系と合致するように、日常的な生活動線・居場所・散歩道となる公共空間(車道・歩道・遊歩道・広場・小公園など)を配置します。

(3)復興イメージ

2 桜木町・花輪田地域

(1)基本的な考え方

・ 津波をはじめ、洪水、土砂災害などに対しても安心できる総合的な防災まちづくりを推進します。
・ 小鎚川沿いの上下流方向の交通量の増加に対応して、子どもや高齢者が安全に活動できる公共空間の充実を図ります

(2)復興方針

・ 防潮堤を整備し、津波に対して安全性の高いまちづくりを行うことで、震災前の居住地を引き続き利用します。
・ 小鎚川の治水安全性を確認しつつ、河川堤防及び地域内の排水機能・浸水防止機能の強化を図ります。
・ 津波から人命を守るため、高台で避難しやすい場所に避難所を整備するとともに、常時避難が可能なよう緊急物資を備蓄できる施設の整備を図ります。
・ 城山に整備されている林道や今後整備される三陸縦貫道へのアクセスを確保し、また、桜木町・花輪田地域を連絡するための新たな架橋を整備する等、避難経路の充実を図ります。
・ 総合的な防災力を向上させ、災害時に早期復旧が行えるようなライフラインの整備を目指します。
・ 仮設校舎及び仮設住宅の設置により、町方からの人口が移動していることと、今後開発が想定される住宅地の造成等により、寺野から小鎚方面の人口増加が見込まれることから、小鎚川上下流を連絡する道路機能を強化し、安心して移動できる歩行空間や交通安全施設の充実を図ります。

(3)復興イメージ

3 小枕・伸松地域

(1)基本的な考え方

・ 当該地域は、集落のほぼ全域が壊滅的な被害を受け、近隣に居住環境を創出するためには、少なからぬ地形改変や集落の孤立など、克服すべき課題が残ります。そのため、この場所に集落を再興することについては、町民の意向を踏まえつつ検討を継続することとします。
・ 被災前から続くコミュニティを尊重することとし、他地域へ移住することがあっても、これらのまとまりを維持したまま移住できる方法を検討します。

(2)復興方針

・ 小枕と伸松の間の高台に居住地をつくり、被災前より続くコミュニティを極力維持できるような住宅や公共施設の配置を行い、集落の中心を形成します。
・ 低地部は産業用地、中段は緑地とし、沢となる谷筋には無理な宅地造成を行わないこととします。
・ 災害時に高台へと速やかに避難できる避難路や、孤立を回避する道路網を整備します。
・ 万が一孤立した場合に備えるため、必要な施設・設備を用意します。
・ 日常的に多用する町方への動線は、緩勾配や夜間の安全など日常生活に配慮した道路整備を行います。
・ 漁港等の施設については、漁業が再開できるよう復旧します。

(3)復興イメージ

4 沢山・源水・大ケ口地域

(1)基本的な考え方

・ 当該地域は今回の津波により一部地域で甚大な被害を受けましたが、町の中心市街地に近い主要な居住エリアであることから、より安全な住宅地として再興するとともに、豊かで活気のある地域となるよう整備を進めます。
・ 被災した沢山地域や大槌中学校周辺の土地利用の再編と、源水川付近の整備を検討するとともに、総合的な防災力の向上を目指したまちづくりを行います。

(2)復興方針

・ 防潮堤を整備することで元の住宅地を再生するとともに、空地や公共用地を中心として移転者を受け入れるための宅地、災害公営住宅用地を整備します。
・ 三陸縦貫道大槌インターをまちの入口と位置付け、関連する主要道路の整備を行い、地域はもとより町全体の活性化を図ります。
・ 大槌北小学校の北側に小中一貫教育校を設置し、大槌高等学校と合わせて町の文教拠点とします。
・ 沢山地域と源水地域を結ぶ新たな架橋を設置し、文教拠点へのアクセスを向上させるとともに、両地域の一体化を図ります。
・ 沢山の国道45号バイパスにおいては、津波防護に資する道路整備を働きかけるとともに、周辺地域の主要道路及び住宅地の整備を行います。
・ 避難施設や避難路の整備を行い、地震や津波だけではなく、洪水や土砂災害等に備えた総合的な防災力の向上を目指します。

(3)復興イメージ

5 安渡地域

(1)基本的な考え方

・ 安渡地域のコミュニティを維持しながら、高台に地域の中心を再編します。
・ 被災を免れた既存住宅地との繋がりを持たせるよう、居住エリアを山側に形成し、コンパクトで一体感を持ったまちを構築します。

(2)復興方針

・ 山側の居住エリア、非被災エリア、低地部の産業エリアを繋がりのあるまちとして形成します。
・ 安渡小学校周辺に核となる公共施設を配置し、新たなまちの中心部として位置付けるとともに、有事の避難拠点として必要な機能を持たせます。
・ 新たな居住エリアとしては、国道45号付近、大槌稲荷神社の北側、赤浜への林道に沿ったエリア、安渡小学校周辺等を候補地とします。また、安渡小学校周辺には災害公営住宅を配置し、密度の高い居住エリアを形成します。
・ 旧道(一部は県道)から山側を一定の高さまで嵩上げし、津波に対する安全性を高めます。
・ 道路網は、行き止まりをなくすなど日常的な回遊性を確保するとともに、避難路としても効果的に機能するよう体系的な整備を行います。また、この体系に合致するように日常的に利用する場(小広場・公園・公共施設等)を配置します。
・ 赤浜地域へ通じる林道の拡充整備を検討し、避難道及び連絡路としての充実を図ります。
・ 漁港及び必要な関連施設を早期に整備するとともに、地盤沈下した低地部を活用するために必要な整備を行います。
・ 災害発生時に堤外にいる人が避難できる仕組みをつくります。

(3)復興イメージ

6 赤浜地域

(1)基本的な考え方

・ 防潮堤に頼らず、非被災地域と一体となった住宅地を新たに形成します。防潮堤は旧来の高さに留め、津波を視覚的に認知できて、美しい海を悠々と望める居住エリアを創出します。
・ 赤浜のシンボル蓬莱島のある海辺にも近づきやすく、災害時にはどこからでも避難できる仕組みを構築します。
・ 災害時にも地域全体が一体性を保ち、周辺地域との繋がりを維持できるまちづくりを行います。

(2)復興方針

・ 非被災地域と一体となる高台に新たな居住エリアを設け、その中心には、日常の集いの場であり、災害時の避難場所となる公共施設を配置します。
・ 低地部は、産業・業務エリア、緑地公園として利用するだけでなく、津波被害を伝える鎮魂の場、教育の場として活用することを検討し、災害に強い人造りを行います。
・ 防潮堤は既存施設の復旧とします。防潮扉は設置せず、日常生活道路と避難路を兼ねたスロープや階段を設置します。
・ 県道吉里吉里釜石線は山側に路線変更するとともに、被災しない高さまでの嵩上げを行い、防潮堤に代わる施設として整備します。また、法面には生活道を兼ねた避難路を設置し、擁壁ではない勾配のゆるい土羽堤防とします。
・ 安渡地域へ通じる林道の拡充整備を検討し、避難道及び連絡路としての充実を図ります。
・ 漁港及び関連施設を早期に復旧し、堤外地から漁業従事者が孤立せずに避難できる仕組みをつくります。

(3)復興イメージ

7 吉里吉里地域

(1)基本的な考え方

・ 砂浜の広がる海と漁港やフィッシャーリーナ、それらに面し低地から斜面地へと広がる集落という魅力的な地の利を活かし、住民も来訪者も海とのつながりを感じることができる美しい吉里吉里地域を再生します。
・ 昭和三陸津波後に住民の手による復興計画で生まれたまちの中心を残しながら、居住エリアを山側へ移動し、安全でかつコミュニティを維持できる集落に再編します。

(2)復興方針

・ 被災前のまちの中心部を残すために、国道45号の内側に幹線道路を配置し、その山側を盛土することで、商業系を含む居住エリアを構築します。また、新たに吉里吉里中学校周辺、西側の国道45号沿い、吉里吉里四丁目等を移転候補地として検討し、宅地及び災害公営住宅を整備します。
・ 日常的な利用が見込まれる場所を選び、新たにJR山田線を越えて高台へ移動できる避難路や、地域の高台へと繋がる避難路を複数確保するとともに、合わせて既存道路網の拡幅整備を検討します。
・ 低地部の危険な区域には居住しないこととし、緑地や公園、観光施設等を配置します。
・ 当地域の重要な観光資源である砂浜を再生するとともに、海と集落の境界部分に砂浜と集落が一体的に感じられる空間整備を行うことで、災害発生時に海岸利用者がすみやかに避難できると同時に、海とのつながりを感じられる魅力的な場所を創出します。
・ 漁港及び必要な関連施設を早期に整備します。

(3)復興イメージ

8 浪板地域

(1)基本的な考え方

・ 砂浜の広がる海と松林やハマナスの咲く後背緑地、それらを望む緩やかな斜面地の集落という魅力的な地の利を活かし、住民も来訪者もつい散歩したくなる美しい浪板地域を再生します。
・ 今回の被災範囲より標高の高い場所に、既存集落と一体化する居住エリアを設けることで、まちの中心を山側に移動し、安全でかつコミュニティを維持できる集落に再編します。

(2)復興方針

・ 新しい住宅地は、既存集落に隣接した場所を選び、災害公営住宅を含めオーシャンビューが望める住宅にすることで、将来的に他地域からの移住者も受け入れられる質の高い整備を行います。
・ 浪板交流促進センターの周辺を新しいまちの中心部に位置付け、その脇を通る道路を地域の主要道路として拡幅整備することを検討します。
・ 三陸縦貫道にインターチェンジなどの設置を働きかけるとともに、地域の道路網の整備を行い三陸縦貫道と国道45号へのアクセスの向上を図ります。
・ 地域の主要道路沿いには公共的な施設を配置し、生活の利便性を高めるとともに、住民が日常的に集まれる場所をつくります。また、旧児童館については、消防屯所などの活用を検討します。
・ 国道45号においては、津波防護に資する施設について、他機関との関係も踏まえつつ、その整備を働きかけるとともに、JR山田線沿いに国道45号を迂回する道路を嵩上げし、防潮堤の機能を持たせます。日常時には、集落と国道45号との重要な連絡路として活用し、災害発生時には高台への避難路の起点として活用します。
・ 国道45号を迂回する道路と既存集落の間を盛土することで、海に面した眺めの良い場所を設け、旅館や商店などの商業地として活用します。
・ 当地域の重要な観光資源である砂浜や浪板川、松林やハナマスを再生するとともに、今回被災したエリアを緑地・公園・キャンプ場・スポーツ施設等として整備することで、海と緑地が一体となる魅力的な場所を創出します。

(3)復興イメージ

9 小鎚地域

(1)基本的な考え方

・ 災害時に避難者の受入れ、炊き出し等の支援を行うことができるような後方支援基地として位置付けます。

(2)復興方針

・ 行政との連携強化や地域内の防災組織を強化し、災害情報の地域内への伝達を徹底します。
・ 小鎚地域での在宅受入可能人数やそれに伴う物資の必要量を把握し、避難者受け入れのマニュアルを作成します。
・ 避難地住民の受け入れ候補となる公共施設等については、耐震化等の安全性を確保するとともに、食料・飲料水の備蓄や非常用発電設備の整備を行います。
・ 災害時に地域の孤立を避けるため、交通網、通信網の脆弱性を解消するとともに、ガソリン等の燃料や電力等を非常時にも確保できるような対策を実施します。

10 金沢地域

(1)基本的な考え方

・ 海岸部において大規模災害が発生した際に、内陸方面からの支援を受け入れ、被災地へと結ぶ後方支援基地として活用します。
・ 金沢地域は、平常時における山間部の交流拠点としての機能を果たすことが、災害発生時の被災地支援拠点としての活用に繋がることから、地域の総合的な機能強化を図ります。

(2)復興方針

・ 金沢支所、生活改善センター、旧金沢保育所、旧金沢小学校といった公共施設について、平常時は住民が利用でき、災害発生時にはボランティア等の活動拠点や避難者の受入れ拠点として活用できるように、再整備や利用方法の検討を行います。また、これらの施設に備蓄倉庫としての機能を持たせます。
・ 土坂峠が常に安心して通行できるよう、主要地方道大槌小国線の土坂トンネルの早期実現などを目指します。
・ 地域性を踏まえた小水力発電(水車)等、海岸部からの電力供給に依存しないエネルギー供給の手段を導入します。
・ ラジオ、防災行政無線、携帯電話といった情報インフラの整備・高度化を図ります。
・ 地域住民を対象に、被災者の受け入れを想定した避難訓練を実施するとともに、最低限の備蓄などについて、マニュアル等を作成します。