SPECIAL ISSUE/ all

IMGP0542

2012.04.30

郷土の誇りとなる公共のデザインを
―復旧、復興担当者に望む―

篠原 修(GSデザイン会議|EA協会 会長)

激甚にして広範な被災に対し、道路、橋梁等のインフラの復旧の迅速さには目を見張るものがあった。まず始めに国交省東北地方整備局等の現地の活動に敬意を表したい。しかし再び来るであろう自然災害に備える本格的な復旧、復興はこれからである。復旧、復興の中心課題となる漁業、農林業等の生業には困難な課題が山積している。この問題については後日論ずることとして、ここでは復旧、復興のもう一本の柱となる公共施設、公共構造物のあり方について私見を述べることとする。

 

結論を先に述べれば、「復興なった故郷に住む人々が日本に、更には世界に誇りを持って語れるような施設、構造物を創り出す」こと。復旧、復興を担う市町村、県の担当者にはこう考えてくださるようお願いしたい。

 

1923年9月1日に起こった関東大震災では東京、横浜を中心に10万人以上の人々が亡くなられた。復興を担うことになった帝都復興院(のちに帝都復興局)には従来の枠にとらわれない有能な人材が集められた。この復興院において道路、橋梁、港湾、運河等のインフラを所管する土木局(後に土木部)には、当時の鉄道省から二人のエンジニアが着任した。土木局長の太田圓三と橋梁課長の田中豊である。太田は後に大建築家となる山口文象を相談相手に、世界の水準に並び、更には日本オリジナルな橋梁を生み出そうと想を練った。田中は、この太田の意を受けとめて、橋の実現化にまい進した。7年間に国と東京市、横浜市でなんと計400以上の橋が架けられたのだ。その結果生まれたのが「帝都復興の華」と人々が讃えた隅田川の十大橋である(国が架けた六橋に東京市が架けた三橋、それに唯一残った新大橋を加えて十大橋と呼ばれた)。

 

 

写真1(左):永代橋 写真2(右):田中豊博士

 

それから今年で88年。太田と田中が特に力を入れてデザインした永代橋と清洲橋は、現役のままで、国の重要文化財に指定されている。「復興の華」と讃えられた橋はその後も隅田川周辺の、又東京都民の誇りとなって受け継がれ、今日においても隅田川川下りの名所となっているのである。

復旧、復興を一日でも速く、という地元の人々の気持ちはよく分かる。しかしその結果出来た橋や道路、公園や広場が何の変哲もないものであったなら、先祖代々住み続けてきた故郷の地に、将来住み続けることになる子孫に、どう復旧、復興の精神を伝えることができるのであろうか。貴い犠牲の上に築かれ続け、今又多数の犠牲をものともせず、築こうと故郷復興に向かう精神を支えるものは、「郷土の誇り」ではないかと考える。その具体的な姿は帝都復興のような橋であってもよいし、防災公園あるいは慰霊の墓地であってもよい。これからも住み続ける、生き続けるという強い信念を体現するデザイン、郷土の誇りとなるデザインこそが、人々を勇気づけるのだと思う。

篠原 修Osamu Shinohara

GSデザイン会議|EA協会 会長

資格:
工学博士

 

略歴:
1968年 東京大学工学部土木工学科卒業

1971年 東京大学工学系研究科修士課程修了

1971年 (株)アーバン・インダストリー勤務

1975年 東京大学農学部林学科助手

1980年 建設省土木研究所研究員

1986年 東京大学農学部林学科助教授

1989年 東京大学工学部土木工学科助教授

1991年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授

2006年 政策研究大学院大学教授、東京大学名誉教授

 

主な受賞歴:
1986年 国立公園協会 田村賞

1990年 土木学会田中賞(森の橋・広場の橋)

1996年 土木学会田中賞(東京湾横断道路橋梁)

2000年 土木学会デザイン賞優秀賞、土木学会田中賞(阿嘉橋)

2000年 土木学会出版文化賞「土木造形家 百年の仕事-近代土木遺産を訪ねて

2001年 土木学会デザイン賞 最優秀賞、土木学会田中賞(新港サークルウォーク)

2002年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(阿嘉橋、JR中央線東京駅付近高

2004年 土木学会田中賞(朧大橋)

2004年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(陣ヶ下高架橋)

2004年 グッドデザイン賞 金賞(長崎・水辺の森公園)

2005年 土木学会田中賞(謙信公大橋)

2006年 土木学会出版文化賞「土木デザイン論-新たな風景の創出をめざして-

2007年 土木学会田中賞(新西海橋)

2008年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(苫田ダム空間のトータルデザイン)

2008年 土木学会田中賞(新豊橋)

2008年 ブルネル賞(JR九州 日向市駅)

2008年 日本鉄道賞ランドマークデザイン賞(JR四国 高知駅)

2009年 鉄道建築協会賞停車場建築賞(JR四国 高知駅)

2010年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(新豊橋)

 

主な著書:
1982年「土木景観計画」、技報堂出版

1985年「街路の景観設計」(編、共著)、技報堂出版

1987年「水環境の保全と再生」(共著)、山海堂

1985年「街路の景観設計」(編、共著)、技報堂出版

1991年「港の景観設計」(編、共著)、技報堂出版

1994年「橋の景観デザインを考える」(編)、技報堂出版

1994年「日本土木史」(共著)、技報堂出版

1999年「土木造形家百年の仕事」、新潮社

2003年「都市の未来」(編、共著)、日本経済新聞社

2003年「土木デザイン論」、東京大学出版会

2005年「都市の水辺をデザインする」(編、共著)

2006年「篠原修が語る日本の都市 その近代と伝統」

2007年「ものをつくり、まちをつくる」(編、共著)

2008年「ピカソを超える者はー景観工学の誕生と鈴木忠義」、技報堂出版

 

組織:
GSデザイン会議

東京都文京区本郷6-16-3 幸伸ビル2F

TEL:03-5805-5578

FAX:03-5805-5579

HP:http://www.groundscape.jp/

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