SPECIAL ISSUE/ all

top

2014.01.16

「防災」には「景観」が不可欠の相方である

篠原 修(GSデザイン会議|EA協会 会長)

「めでたさも半分位なりおらが春」とは五十を過ぎて郷里に戻ってやっと嫁をもらい、待望久しかった子が死んでしまった時の一茶の句だと言われている。東日本大震災のダメージを今もひきづる当事者や支援者、復興関係者の心境もこの句の如きだろうと思う。東日本大震災に続く台風による伊豆大島の土砂崩れなど、その他の被害は日本という国土が「災害大国」である事を我々に再認識させた。「国土強靱化」などと殊更に言われなくとも、土木・建築・都市計画などを専門とする人間には自然、人為に拘らず災害に対処する仕事が一つの大きな柱である事は周知の事柄であったはずである。

筆者はバブルが弾けて「失われた20年」という言葉が言い出され、国交省をはじめとする関係者が意気消沈し始めた頃から、「これからの土木は防災と景観の二本柱でやって行くしかない」と言い続けてきた。奇しくも東日本大震災によって前者の「防災」は関係者のみならず、広く国民の意識にも定着し始めたのかのようにみえる。しかし危惧するのは「防災」のみが単独で取り上げられ一人歩きし始めている事である。災害は「非常時」の出来事であり、従って「防災」も非常時対応であるにすぎない。「非常時」とペアになる「日常」をどう考えるかがなければ、人間の生活の全てをカバーする事は出来ない。筆者が「防災と景観の二本柱」と言ったのは、防災と景観がペアになって始めて人間の生活を考えた十全の政策たり得ると言いたかったからである。洪水は10年、30年、50年の内のわずか2、3日の事である。地震や津波に至っては100年から1000年に一度の事であろう。それ以外の大半の時間を庶民がどう過ごすのかという観点が、今盛んに言われている「国土強靭化」には決定的に抜け落ちていると思わざるを得ない。いつやって来るのか知れない 津波、地震に備えて何十年も何百年も海の見えないコンクリートに囲まれて暮らしていく、不愉快な生活が本当の生活空間作りなのだと言えようか。1971年に始めて田老のコンクリート防潮堤を見た時の衝撃は今だに忘れられない。「こんな所で暮らすのか」という驚き。そして被災直後のその防潮堤が破壊されていたのを見た時の再度の衝撃。「その我慢も報われなかった」のかという感慨。被災も悲惨ではあるが、コンクリート防潮堤に囲まれて一生を過ごすのもまた悲惨でなくしてなんと呼ぶべきか。このような悲惨は洪水、地震、台風にも通底する。景観とそれを実現する計画・設計は防災の不可欠の相方であると考えられねばならない。

2014年 新年のご挨拶

篠原 修Osamu Shinohara

GSデザイン会議|EA協会 会長

資格:
工学博士

 

略歴:
1968年 東京大学工学部土木工学科卒業

1971年 東京大学工学系研究科修士課程修了

1971年 (株)アーバン・インダストリー勤務

1975年 東京大学農学部林学科助手

1980年 建設省土木研究所研究員

1986年 東京大学農学部林学科助教授

1989年 東京大学工学部土木工学科助教授

1991年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授

2006年 政策研究大学院大学教授、東京大学名誉教授

 

主な受賞歴:
1986年 国立公園協会 田村賞

1990年 土木学会田中賞(森の橋・広場の橋)

1996年 土木学会田中賞(東京湾横断道路橋梁)

2000年 土木学会デザイン賞優秀賞、土木学会田中賞(阿嘉橋)

2000年 土木学会出版文化賞「土木造形家 百年の仕事-近代土木遺産を訪ねて

2001年 土木学会デザイン賞 最優秀賞、土木学会田中賞(新港サークルウォーク)

2002年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(阿嘉橋、JR中央線東京駅付近高

2004年 土木学会田中賞(朧大橋)

2004年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(陣ヶ下高架橋)

2004年 グッドデザイン賞 金賞(長崎・水辺の森公園)

2005年 土木学会田中賞(謙信公大橋)

2006年 土木学会出版文化賞「土木デザイン論-新たな風景の創出をめざして-

2007年 土木学会田中賞(新西海橋)

2008年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(苫田ダム空間のトータルデザイン)

2008年 土木学会田中賞(新豊橋)

2008年 ブルネル賞(JR九州 日向市駅)

2008年 日本鉄道賞ランドマークデザイン賞(JR四国 高知駅)

2009年 鉄道建築協会賞停車場建築賞(JR四国 高知駅)

2010年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(新豊橋)

 

主な著書:
1982年「土木景観計画」、技報堂出版

1985年「街路の景観設計」(編、共著)、技報堂出版

1987年「水環境の保全と再生」(共著)、山海堂

1985年「街路の景観設計」(編、共著)、技報堂出版

1991年「港の景観設計」(編、共著)、技報堂出版

1994年「橋の景観デザインを考える」(編)、技報堂出版

1994年「日本土木史」(共著)、技報堂出版

1999年「土木造形家百年の仕事」、新潮社

2003年「都市の未来」(編、共著)、日本経済新聞社

2003年「土木デザイン論」、東京大学出版会

2005年「都市の水辺をデザインする」(編、共著)

2006年「篠原修が語る日本の都市 その近代と伝統」

2007年「ものをつくり、まちをつくる」(編、共著)

2008年「ピカソを超える者はー景観工学の誕生と鈴木忠義」、技報堂出版

 

組織:
GSデザイン会議

東京都文京区本郷6-16-3 幸伸ビル2F

TEL:03-5805-5578

FAX:03-5805-5579

HP:http://www.groundscape.jp/

SPECIAL ISSUE

2017年 新年のご挨拶

2017.01.04

世を変えられる、とまでは言わないが、世は変わる
2016年 新年のご挨拶

2016.01.31

自然の偉大さ
2015年 新年のご挨拶

2015.01.13

エンジニア・アーキテクトで土木を立て直そう
2014年 新年のご挨拶

2014.01.16

「防災」には「景観」が不可欠の相方である
2013年 新年のご挨拶

2013.01.17

新年のご挨拶
re-edit 遅い交通がまちを変える

2012.08.29

都市交通の再びの多様化、分離と混合の政策
モノづくりから始める地域づくり-南雲勝志の方法

2012.05.10

南雲さんとの出会いの頃
震災特別号

2012.04.30

郷土の誇りとなる公共のデザインを
―復旧、復興担当者に望む―
復興元年を迎えて

2012.04.10

これから本格化する復興デザインに向けて
その3:まち作りのヴィジョン
復興元年を迎えて

2012.04.10

これから本格化する復興デザインに向けて
その2:防災の自治意識について
復興元年を迎えて

2012.04.10

これから本格化する復興デザインに向けて
その1:復興に使用する材料
2012年 新年のご挨拶

2012.01.03

年頭のご挨拶、平成24年
復興に向けて大切なこと

2011.11.03

人間生活圏再生に関する生態学的考察
祝!平泉、世界遺産登録決定!

2011.09.03

平泉の何を守るのか
公共事業のプロポーザル方式を問う

2011.05.01

プロポーザルの評価を考える
公共事業のプロポーザル方式を問う

2011.05.01

プロポーザルで選ぶ設計者とアフターケア
エンジニア・アーキテクト協会、始動。

2011.04.01

エンジニア・アーキテクト協会創立にあたって

SERIAL

私の一冊

2012.08.10

01|車輪の下

NEWS

WORKS

shinohara