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IMGP2344

2011.05.01

共同設計の望ましいありかたについて

椛木 洋子((株)エイト日本技術開発|EA協会)

私は、建設コンサルタントに属している橋梁設計技術者であるが、一般的な業務で求められる単体の橋梁設計にはある限界を感じている。最近の複雑な社会背景において適正な-エンドユーザーである市民が本当に満足する-社会資本整備を行うためには、単体の設計をこなすだけではなく、多分野の専門家が共同し、お互いに意見を交わしながら対象物を広くかつ深く捉え、設計を進めることが不可欠なのではないか。残念ながらそれにふさわしい設計体制は、正式なシステムとしては存在していないように思う。

【設計体制の現状】
①    設計共同体
国交省の建設コンサルタント業務のうち、公募型業務においては設計共同体が認められている。公募型業務に参加する際、あらかじめ複数の企業間で協定書を交換し、代表企業と各企業の分担範囲を明確にした上で、単体企業と同等の扱いを受けられる方式であるが、分担する業務(設計項目)を明確に分けなければならないという縛りがあるため、共同で設計すると言うよりも、得意分野を各々が分担するという意味合いが強い。
②    再委託
あらかじめ「協力者または再委託先」と業務の内容を届け出ることで、専門家に協力を仰ぐことは可能であるが、「主たる業務の再委託」は禁止されており、十分な協力体制を構築するのは困難である。また、契約上は「下請負」であり、協力者の名前が表に出ることも希である。さらに、外部に協力を仰ぐことは会社の技術力不足と評価されかねず、会社方針として回避する傾向が強い。
これらの仕組みが、本当の意味での共同設計を阻んでいる。

【例外的な運用】
これまで国内で実施された「橋梁設計」のプロポーザルやコンペにおいて、別組織のデザイン担当者を立て、共同設計体制にて応募可能なプロジェクトがいくつか行われている。このようなケースでも、構造とデザインが対等の関係で進めることは少なく、上下関係あるいは対立関係に陥り、必ずしも成功しないことがあると聞く。デザインを優先すると構造に無理が生じ、構造を優先するとデザインが台無しになる。また、景観担当者が一方的に構造担当者に形を指示し、受けた構造担当者はたとえ不合理な構造だと思っても反論せず、言われたとおりに構造計算を行う。あるいは反対に「このデザインでは構造が不成立」と言って、形の変更を要求する。デザインと設計の対立はよく起きているようである。
しかし、我々「広島南道路太田川放水路渡河部橋りょう」設計チームは、そのようなトラブルを解決しつつ、順調に詳細設計を進めてきた。このプロジェクトの経験について述べてみたい。
本プロジェクトは、国際コンペで勝ち取ったものである。その前に完敗した平和大橋歩道橋の雪辱戦と位置づけていたエイト日本技術開発、二井昭佳、eauの3者に、新たに空間工学研究所が加わった4者にて共同設計チームを構成し、コンペから詳細設計まで共同で行ってきた。具体的には、定期的に「デザイン会議」を開催、大きなデザイン方針から細部の構造のすりあわせまで、議論を重ね、詳細設計を進めてきた。そのうち9名のコアメンバーは所属、役職、経験年数、専門分野などが異なっていたが、最後まで崩壊することなく、設計チーム約30名の中心的役割を担うことができた。その成功の秘訣は、以下の3点ではないかと思う。
・お互いに相手を信頼し、意見を尊重する(技術に上下はない)
・自分の得意なことを一生懸命やる(相手の不得意なことを責めない)
・異論を隠さず、本音で議論する(面従腹背はしない)

「(専門外のことは)わからないので、専門家にすべてお任せ」では、共同設計は成立しない。専門分野や経験により技術力に差があるのは当たり前である。しかし、技術力がなくても、良い橋のあり方は考えられる。発言権が失われるわけではない。お互いに信頼しあうチームにあっては、あるメンバーが一生懸命に考えた発言を未熟な意見と切り捨てるのではなく、全員で知恵を絞り不足するところを補う、あるいは工夫や改良を加えることでさらに合理的で洗練された構造の実現を図ろうと努力するのである。
たとえ、世界初の構造であっても、社会に受け入れられない橋は、悲しい。地域に住まう人、利用者にとって価値の高い橋を提供するために、まちづくり、景観、造園、構造デザインなど様々な分野の技術者と共同で設計をしたいと思う。そのための仕組み作りを発注者に期待したい。

 

広島南道路太田川放水路渡河部橋りょう設計チーム(手前の模型は1/50模型)

公共事業のプロポーザル方式を問う

椛木 洋子Youko Kabaki

(株)エイト日本技術開発|EA協会

資格:

技術士(総合技術監理部門、建設部門)

特別上級土木技術者(設計)

 

略歴:

1955年 北海道生まれ

1977年 北見工業大学工学部土木工学科卒業

2007年 日本技術開発(株)入社

2009年 (株)エイト日本技術開発(社名変更)勤務

 

主な受賞歴:

2002年 土木学会デザイン賞 優秀賞(銀山御幸橋)

2014年 土木学会田中賞 作品賞(太田川大橋)

 

主な著書:

新しい合成構造と橋(共著)

 

組織:

(株)エイト日本技術開発

代表取締役社長 小谷 裕司

代表取締役専務執行役員 古川 保和

本社 〒164-8601東京都中野区本町5-33-11

TEL: 03-5341-5111

FAX:03-5385-8500

HP:http://www.ejec.ej-hds.co.jp/

 

業務内容:

・建設コンサルタント(河川、砂防及び海岸・海洋/港湾及び空港/道路/鉄道/上下水道及び工業用水道/下水道/農業土木/森林土木/水産土木/廃棄物/造園/都市計画及び地方計画/地質/土質及び基礎/鋼構造及びコンクリート/トンネル/施工計画、施工設備及び積算/建設環境/電気電子

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