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2015.12.09

12|西鉄柳川駅周辺地区

辻 喜彦(合同会社アトリエT-Plus建築・地域計画工房|EA協会)

概要:

水都・柳川の玄関口である西鉄柳川駅周辺地区の利便性・快適性を高め市民と来訪者の交流の場として再生させるために、柳川市は西鉄と共同し、西鉄天神大牟田線により分断されていた東西エリアを繋ぐ自由通路、東口駅前広場新設と既存の西口駅前広場リニューアル、駅舎の橋上化を実施した。
設計デザインにおいては、柳川市と建築・都市設計・施設デザインおよび交通計画の専門家による設計チームとの協働により、一体的かつ質の高い駅前空間を実現した。
また本プロジェクトにおいては、まちづくりへの理解を深めると共に、市民が誇りと愛着を持てる「駅前空間=みんなの居場所」とするために、計画段階から“利活用WS”など市民の参画機会を数多く設けている。

 

 

 

【駅前交通の整序化】

市街地全体に掘割が巡る柳川は、年間約125万人が訪れる観光都市である。しかし、その玄関口である西鉄柳川駅前は、観光客と一般市民の歩車動線が交錯し危険な状態だった。整備にあたっては、駅前の交通処理が最重要課題であり、現況と計画交通のシミュレーションを実施し、駅利用者への説明および警察協議を重ね、安全性の確保を図った。
(写真左上:整備前の渋滞状況、写真右上:整備前状況を再現したシミュレーション、写真左下:計画シミュレーション、写真右下:整備後の状況/交通計画担当:(株)アルメックVPI・五十嵐淳氏)

 

 

 

 

「西鉄柳川駅周辺地区デザイン検討会議」
西鉄柳川駅周辺地区整備の検討にあたっては、事業者(柳川市・西鉄)と学識者、専門家が一堂に会し、“駅とまちなかの連携強化”“柳川らしさを表現する駅前空間のデザイン”“まちづくりへの市民参画”等を主テーマとして「デザイン検討会議」を開催した(平成23〜26年度:計8回開催)。

 

 

 

 

「全体平面計画図」
既存の西口駅前広場(約3,900㎡)を改修するとともに、土地区画整理事業によって新たに東口駅前広場(約4,400㎡)を開設し、東西を自由通路(延長約120m,階段部含む)によって繋いでいる。西口は主に柳川観光のおもてなしの空間、東口は生活交通の結節点として性格づけた。

 

 

 

 

「柳川らしいデザインを考える(自由通路)」
既存の西口駅前広場と新たな東口駅前広場を結びつける「自由通路(設計/渡邊篤志氏(WAO建築設計事務所))」の設計にあたっては、当初案の大屋根構造(写真左上)から最終案(写真下段)に至るまで、デザイン検討会議のみならず、地元有志による「柳川らしいデザインを考える会」や設計チーム内で、水郷・柳川の玄関口にふさわしい駅イメージについての議論が重ねられた。
自由通路デザインは、歩行者通路という機能の中に、最先端の土木技術を用いながらも、その表情は、現代的デザインとは異なった優しい表情や四季・一日の朝夕の変化が感じられるように、屋根の段形状や天井の杉材、格子等をデザインに組み込んでいる。

 

 

 

 

「柳川らしいデザインを考える(ストリートファニチャー)」
西鉄柳川駅前の空間デザインは、本物の素材を用いながらも、さりげなく高い技術や市民の篤い想いを込めたモノ・空間で“おもてなし”することを基本としている。
ストリートファニチャーについては、煌々とした均一的な明りではなく、照度機能は確保しつつ、優しく暖かな、それでいて変化のある照明灯。水面の柔らかさを表現した車止(ボラード)。前年に水害を被った矢部川の川石を利用し子供が思わず遊びたくなるような石のベンチ。格子から差し込む木漏れ日を浴びられるシェルターなどをイメージしたデザインとしている。
(施設デザイン/ナグモデザイン事務所・南雲勝志氏)

 

 

 

 

「市民参画機会の促進」
西鉄柳川駅前空間整備においては、計画当初から市民への情報公開やまちづくりへの参画機会を促進するために、「デザイン検討WS」「シンポジウム」「利活用WS」等の市民参加プログラムを実践している。これまで通過点に過ぎなかった駅前空間は、市民生活の中の“居場所”、来訪者の“おもてなし”の場となりつつある。(市民参加コーディネーター/九州大学・高尾忠志准教授、永村景子特任助教)

 

 

 

 

【東西駅前広場】
西口駅前広場(写真上)は、柳川観光の来訪者おもてなしの空間とし、待ち合わせスペース等を確保した。東口駅前広場は、生活交通の結節点とし、市民主体のイベントスペース等を確保している。(広場設計/小野寺康都市設計事務所・小野寺康氏)

 

 

 

 

西鉄柳川駅前空間は、平成27年3月に供用開始されて以来、柳川市と西鉄の共同による観光振興PR、そして市民によるイベント開催等、さまざまな利活用がされ始めている。しかし、本プロジェクトの最終目標は、駅を起点としてまちなかとの連携強化による、地域の活力づくりにある。駅前空間整備は、そのための“弾み”となることが期待されている。

 

 

 

所在地:

福岡県柳川市

 

竣工年:

2015年3月(供用開始)

 

諸元:

【東西自由通路】
(都市計画道路8・7・3号 西鉄柳川駅自由通路線(計画延長約120m、計画幅員4.0m)
ブリッジ部|鋼ラーメン偏心トラス桁橋,橋長44m,桁長43.4m,支間長36m,有効幅員4m
デッキ部|鋼H桁橋
全体延床面積|813.3㎡
全体総延長|116.05m
【西口駅前広場】
全体面積|3,900㎡
【東口駅前広場】
全体面積|4,400㎡

 

受賞:
2015年度グッドデザイン賞受賞

 

事業費:
約36億8千万円(自由通路整備費、東西駅前広場整備費、用地費等(柳川市)、駅舎改築費等(西鉄)を含む)

 

関係者:
事業主体|柳川市、西日本鉄道株式会社
詳細設計|株式会社 建設技術センター
設計協力|小野寺康都市設計事務所、ナグモデザイン事務所、WAO渡邊篤志建築設計事務所、
株式会社アルメックVPI国内事業本部、アトリエT−Plus建築・地域計画工房、
監 修|「西鉄柳川駅周辺整備デザイン検討会議」
篠原 修(顧問)、出口 敦・東京大学教授(委員長)、
辰巳 浩・福岡大学教授、高尾忠志・九州大学准教授

EAプロジェクト100

辻 喜彦Yoshihiko Tsuji

合同会社アトリエT-Plus建築・地域計画工房|EA協会

資格:

一級建築士

技術士(建設部門)

博士(工学)

 

略歴:

1960年      東京生まれ

1982年      東海大学工学部建築学科卒業

1982年 (株)アトリエ74建築都市計画研究所 勤務

2001年 同 取締役、計画・設計部部長

2007年      宮崎大学大学院農学工学総合研究科 博士課程入学

2008年      合同会社アトリエT-Plus 設立

2010年     宮崎大学大学院農学工学総合研究科 博士課程修了

 

主な受賞歴:

1992年「第2回兵庫県さわやかまちづくり賞」 <まちなみ部門・姫路市道今宿二号線設計>

1995年「静岡県都市景観賞 優秀賞」 <掛川城と城下町風街づくり計画設計>

2003年 「グッドデザイン賞(新領域デザイン部門)」 <日向市に於ける「木の文化のまちづくり」の実践>

2005年「グッドデザイン賞(新領域デザイン部門)」 <ふれあい富高小学校特別授業「移動式夢空間」>

2010年 日本照明学会 優秀賞 <福岡県柳川市外堀線>

 

主な著書:

2006年「歴史を未来につなぐまちづくり・みちづくり」(共著)学芸出版社

2009年「新・日向市駅」(共著)彰国社

 

組織:

合同会社アトリエT-Plus

代表社員 辻 喜彦

〒 102-0074 東京都千代田区九段南2-2-5九段ビル2F

TEL:03-3239-0151

FAX:03-3239-0154

 

業務内容:

・都市計画、建築、土木等に関わる計画、設計、コンサルタント業務

・まちづくりに関わるコンサルタント、マネジメント業務

・その他上記に付帯する業務

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