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2013.04.10

01|“手応え”を得るということ
~意匠と構造の統合を目指したデザイン演習~

星野 裕司(熊本大学大学院自然科学研究科/工学部社会環境工学科|EA協会)

『ドボクノ手習い-土木系大学のデザイン演習』連載の第1回という重責を任せていただいた。そこで初回にふさわしく,2012年度に始まったばかりの演習授業「社会基盤設計」(3年後期,選択)について,産まれたてホヤホヤのドキュメントを紹介し,皆様からのご指導・ご批判を受けられればと考えている。歩道橋の設計を題材としたこの演習は,受講した学生や教員の私たちもともに“手応え”を得ることができたものであった。

1.旧カリキュラムの反省

そもそも本学科は,小林一郎教授の尽力もあり,土木系大学の中では景観系の授業が充実している学科だと思う。現カリキュラムの中にも「歴史と空間」(2年前期,必修),「景観工学」(2年後期,必修),「景観デザイン」(3年前期,選択)があり,名前を変えながらも2000年度カリキュラムより継続して行われている。これらの授業は,座学半分,演習半分という構成を取っており,「景観工学」では「大学周辺の景観マスタープラン」を,「景観デザイン」では「白川とキャンパスをつなぐ広場のデザイン」を演習課題としている。学生たちは,パネルや模型を作って,一生懸命取り組んでいるのだが,一方で,のれんに腕押し感というか手応えのなさも感じていた。というのも,これは景観系の授業に限ったことではないと思うが,授業で得たことを蓄積させて自分の力としていない,異なる授業を連携させるという発想がない,いわば,単に“来た球を打っている”という印象を強く受けていた。もちろん,それでもあるだけましだとは思うが,このような演習や授業,あるいは学生の態度で,土木系の学生が持つべきデザイン力,エンジニアリング力が本当に身につくのか,これが長年の不安であった。この不安・課題を解消しようと創設したのが「社会基盤設計」である。

2.新しい演習授業の創設

2010年度からスタートした新カリキュラムでは,JABEE(日本技術者教育認定機構)で称揚され始めたエンジニアリング・デザイン教育が重視されることとなった。私たちは,エンジニアリング・デザインを,「様々な視点・知識を統合する」,「複数のアイデアから一つの解を選ぶ」,「検討を繰り返し行う」ことと捉え,旧カリキュラムでの「社会基盤設計演習Ⅰ・Ⅱ」(3年前後期,選択)という複数教員が行っていた少人数教育を改変し,「社会基盤計画」(3年前期,必修)で計画演習を,続く「社会基盤設計」で設計演習を行うこととした。「社会基盤計画」と「社会基盤設計」は課題を連携させ,「熊本大学の南北キャンパスをつなぐ」を共通テーマに,前者では詳細なリサーチからの計画立案,後者では,葛西昭准教授(鋼構造)と私(景観)の協働指導によって,具体的な歩道橋をデザインさせることとした。

一方,ブリッジコンテストなどに積極的に参加している葛西先生は,「現状の一般的な橋梁の設計プロセスを再検討し、物理的機能や経済的価値のみならず、美的な空間形成をも同時になされるような設計プロセスのあり方について研究を行う(本研究グループでは、このような設計を「ホーリスティック・アプローチ(holistic approach)」と呼ぶ)」(企画書より)ことを目的とした研究グループ「都市空間の魅力を創造する橋梁設計のホーリスティック・アプローチ」(土木学会関西支部共同研究グループ代表:久保田善明准教授(京都大学))に参加していた。そこで,この演習授業を研究グループの教育的実践と位置づけ,久保田善明准教授(京都大学)と松村政秀准教授(大阪市大)の二人に非常勤講師を依頼し,詳細な授業計画の立案から参加いただいた。構造と景観という異分野の協働ということで,意思疎通の不具合なども想定されたが,そのようなことは一切なくスムーズに指導が行えたのは,教員間で事前にビジョンを共有できていたことが大きいと思う。なお,当演習の実施に当たっては,熊本大学工学部革新ものづくり展開力の協働教育事業から75万円の助成を得ている。

 

「社会基盤設計」へのカリキュラムの流れ。このような図を何度説明しても学生にはなかなか伝わらない。いかに実感させるかが重要なのだろう

 

3.演習の内容

当演習は,中間発表,最終発表を区切りとして,段階を踏みながら進行した。ここでは,それぞれの流れに沿いながら,その内容や考えたことを紹介していきたい。

 

(1)演習のスタート

新しい演習を始めるにあたって最も不安だったのは,ちゃんと受講生が集まるかどうかということである。9/28に行った「ガイダンス」で不安は的中し,集まった受講生はたったの6名(うち1名は途中棄権)だった。集まった学生に不人気の理由を聞いてみると,単に金曜5限という時間割のせいらしい(決して教員が不人気だからとはというわけではないらしい。というか,そう思いたい)。しかも,その6人のなかで単位を順調に取得できているのはたった1人で,その他は,とりあえず単位が欲しいというスレスレの学生たち。まあ,初年度の試行錯誤の演習だし,このくらいがちょうどいいかなと気を取り直して,演習を開始することとなった。

ガイダンス翌週に行ったのは,久保田先生の「歩道橋デザインに関する講義」と「歩道橋の実地見学」。久保田先生からは,一般的に私たちが知っている歩道橋以外にも,こんなにたくさんの種類の歩道橋があるのだという楽しさと,幅員や勾配,構造などの基本事項を講義していただき,その足で,パシフィックコンサルタンツの伊東さんが担当した熊本駅東口ペデストリアンブリッジを見学に行った。これらは,街中でよく目にする歩道橋以外にイメージを持たない学生たちを啓蒙し,歩道橋デザインの可能性を実感させることを目指したものであった。特に久保田先生の講義は,印刷されたPPTを後々まで学生が参照していたようである。

そのような準備ののち,3週目に初めて課題説明および現地調査を行った。課題のテーマは,黒髪キャンパスを分断する県道を跨ぐ「熊本大学黒髪歩道橋の計画」。スパンは,最短で20m程度となる。熊本大学の黒髪キャンパスが北(文系)と南(理系)に分かれているのは,そもそも,五高と工業高等学校の別の学校だったことに由来するという歴史を踏まえ,単に機能だけではない景観的な意味を求める課題とした。なお,敷地は,理系の学生も良く使用する北キャンパスの中央食堂と教養の学生が必ず使用する南キャンパスの総合情報基盤センターを結ぶ動線上に設定した。

 

 

敷地平面図と現地写真。写真は対象地を西から見たもの。写真左端が赤門(重要文化財)前の広場。両側の石垣も歴史的な価値があるため,改修は基本的に不可とした。

(2)デザイン案の構想

具体的な検討にあたっては,まずは解析ソフトに慣れてもらうこととした。使用したソフトは汎用的なFEM解析プログラムである「ABAQUS」。その詳細については,私の手に余るのでここでは詳述できないが,このプログラムを使用して,歩道橋の死荷重と活荷重(指針を参照して3.5(kN/m2))を載荷したときのたわみをスパンの1/600以下に抑えるという条件を満たさせた。基本的な解析であるが,ほぼ実務と同様の作業をさせていることにこの演習の特徴があるだろう。難しい作業なので(おそらくだが),学生たちは最終発表までこの作業に苦労し,葛西研の学生たちの協力も相当だった。模型作成を手伝った星野研の学生も含めて,改めてここに感謝したいと思う。

その翌週からやっと本格的なデザイン検討が始まるのだが,この解析練習を行った週に,平面図・側面図・断面図の白図をA3にまとめた用紙(いわば橋梁一般図の白図)を各学生に数枚配布し,次週までに構想を描いてくるようにと宿題を与えた。この後の2週がいわゆるエスキースの時間である。そのやり方は,学生に説明させて,図面にトレペをあて,スケッチを描き込みながらアドバイスをしていくという一般的な方法である。ただ,ここで注意したのは,平立断の3面をしっかり統合して,ひとつの立体物を構想することと,配布した白図には周辺とともに人や車も事前に描き込んであり,それを手掛かりにヒューマンスケールに基づいて構想することの2点。これもまた,設計する上で最も基本的なことだと思うが,実務のお手伝いをするときに,驚くほどできない(しない)人が多いと感じることでもある。独創的な形態を構想する力などの前に,このような,ほとんどクセといっても良いようなところに,私たちが必要なデザインセンスの基礎があると考えている。

学生たちは,この図面と簡単な計算書を取りまとめ,12/7に行われた中間発表に臨んだ。

 

 

学生に配布した白図とエスキースの風景。もしすべての技術者が,ヒューマンスケールに基づき,ひとつの立体を設計時からしっかり構想できたら,それだけでおかしな構造物は劇的に減るのではないのだろうか。

 

(3)中間発表

久保田先生と松村先生を招いての中間発表。まずは,松村先生からのレクチャーから始まった。これは建築学科の講評会などに参加すると必ずゲストクリティークのレクチャーが事前についていることを真似たものである。橋の街大阪の話を中心に,橋の基本的な構造形式の種類から維持管理の話まで,久保田先生とはまた違った橋梁の現在を学生たちに伝えてくれるものであったし,彼のマッタリしつつもシニカルな関西弁は,他大学の教員の前で発表する学生たちの緊張を,多少は和らげてくれたのではないだろうか。

さて本題の中間発表。とにかく,自分のデザインについて,景観的に考えたこと,構造的に考えたこと,双方をしっかり話せと自由に発表させた。そこはさすがにこの5人。しっかりPPTを準備して話す学生,気に入った橋の事例を基にイメージだけで突っ走る学生,ほとんど準備がなく,やおらホワイトボードに描き出す学生とさまざまであった。しかし,この中間発表は私たち教員にとっては大変有意義なものとなった。なぜなら,学生にとって何ができないか明確に把握することができたからである。当初,私が注目していたのは,手を動かして考えた橋のかたちをどのように単純化して解析にのせるかということであった。しかし,図面と解析モデルの整合がある程度とれていたのは,1名のみで,ほかの学生はそれぞれとりあえずやってみましたというものであり,単純化の方法を問う以前の段階であった。これはABAQUSを使うことが難しかったという理由もあるだろうが,それとともに,やはり意匠と構造を結びつけて考えるということ自体が学生にとって難しかったのだろうと思う。一方,すべての学生の構造がガチガチに強く,ほとんどたわんでいないものだった。これは,例えば板厚10㎝の材料(鋼材はSS400)を使用しているためで,教員からは,「それって,タンカーとかに使うような鉄板だよ」と突っ込まれていた。つまり,現実的な寸法感覚が全くないのである。もちろん,学生を責めることはできない。現在の大学教育では,構造力学でもいわば数式を展開させているだけで,実寸をイメージするようなトレーニングは行っていないからである。しかし,先述したデザインセンスと同様,この単純化と寸法感覚は,私たちが持つべき最も基礎的なエンジニアリングセンスだと思う。

なお,この中間発表までは,最終提案を各自で行うのかグループで行うのか,決定していなかった。しかし,この中間発表を聞いて,すべての学生がユニークな構想を持っていることが確認できたので,最終提案も各自で行わせることとした。興味深かったのは,この決定が学生にとって嫌そうだったことだ。建築の学生はとにかくグループ活動が苦手だと聞いたことがあるが,彼らはその真逆。良くも悪くも土木の学生らしいと感じたものだった。

 

 

中間発表の風景と構造解析例。右図は,ABAQUS上で縦横比を変えてレンダリングしたものだが,材料が強すぎて構造的にはビクともしていないことがわかる。また準備がほとんどなく,ホワイトボードを使って説明を始めた学生。授業態度としては褒められたものではないが,その度胸は将来有望かもしれない。

 

(4)構造解析のあり方について

ここで,演習終了後に他教員から出されたABAQUSを使用することへの疑義について確認しておきたい。それは,計算自体はブラックボックスとなるABAQUSを使用する前に,手計算で構造の感覚をつかむ訓練の方が重要ではないかというものであった。確かに,優れた構造デザイナーの手計算つきのスケッチなどを眺めると,これこそデザインだよなあという印象を私も強く持ち,この意見には一理あると思う。しかし,カリキュラム全体の中での位置づけなどによって評価が異なるため,その是非を一概に決定することは難しいだろう。ここでは,当演習においてABAQUSを使用することを,構造の感覚をつかむことにどのように貢献しさせたかという点についてコメントしておきたい。といっても,ここに記す工夫は,ほぼ葛西先生が行ったものである。一つは,最初にABAQUSを触らせた時,単純桁に対して,まずは構造力学的な計算をさせ,その結果とABAQUSの結果を比較させたこと。二つ目は,ABAQUSの使用方法自体が難しく,最初の入力でOKが出た学生は一人もいなかったこと。この原因には,入力ミスという初歩的なものから,構造的に持たないという本質的なものまでさまざまあるが,ここでの試行錯誤に対して葛西先生がほぼマンツーマンで指導にあたった。この時,例えば構造が持たなかった場合,断面2次モーメントをあげるためにはどの部材寸法を変更すれば良いのかなど,構造力学を復習するような形でアドバイスを与えている。そして最後に,ABAQUSによる結果の可視化である。数字のみでは実感することのできないたわみの様子などを,デフォルメしたり色分けしたりして可視化できることの教育効果は大きい。今回の演習にあたっても,最終形の解析結果が,構造力学で学んだたわみ曲線とイメージとして一致しているか,学生各自に確認させている。以上の点で,私たちは十分に構造感覚を養う訓練となっていると考えているが,いかがだろうか。ぜひ,読者の皆様からのご意見をいただき,議論を深めたいと思う。

(5)デザイン案のブラッシュアップ

中間発表の翌週は,とりあえず反省会。上述したような課題を全員で共有しつつ,各自の今後の方向性について議論し,大きく2つのグループに分かれて検討を進めていった。ひとつは,構造的には十分解けそうなので早く模型作成に入り,立体的な造形を洗練させていくグループ。もう一方は,意匠的・構造的に未成熟なので図面作業からやり直し,とりあえず構造的なあたりをつけることを急ぐグループ。しかし,後期の授業すべての課題だと思うが,ここから年末年始を挟むので,学生のモチベーションを維持し,継続的に検討をさせるためのマネジメントが難しい。本学科には,五高工学部時代からの卒業設計図面の原本が残っており,レンダリングの美しい,詳細な図面なので,受講生のモチベーションを高めるために閲覧させたりしたのだが,どの程度効果があったのか心もとない。やはり,年内にある程度進捗させていくことが必要で,来年度は,もう1,2週,中間発表を早める必要があるかもしれない。

ただ,今年度の最終発表会は,教員の日程調整上,2月28日とだいぶ先に設定された。そのため,1月中は,とにかく週1回以上は学生とコンタクトを取りながら,少しずつ進めていき,試験の終わる2月中旬以降に,学生はスパートをかけることとなった。

 

 

戦前の卒業設計に見入る学生と模型を使ったエスキース風景。遠い先輩の卒業設計がすごすぎて,モチベーションを高めるという点では逆効果だったかもしれない。なお,模型作成にあたって,周辺模型は星野研の学生が作成している。

 

(6)最終発表

最終発表では,発表形式(PPTと模型による説明)だけではなく,大まかなストーリーも指示することとした。その内容は,①タイトル(デザインを一言で要約する),②現状分析(対象地の課題や良いところ。周辺も含めて),③コンセプト(この歩道橋に必要と思ったこと。3つくらい),④中間発表案(中間発表会の復習。当時のコンセプトや課題,指導内容など),⑤最終案概要(図面,全体模型写真。タイトルやコンセプトのデザイン的な確認),⑥構造解析(結果だけではなく,苦労したところなども),⑦最終案詳細(デザインのポイントを詳しく。模型で説明しても良い)である。各自,発表10~15分,質疑15~20分の計30分の持ち時間とし,一つ一つ丁寧に講評することとした。

学生たちの進捗状況やこの演習以外の普段の態度を考えると,関西からわざわざ来ていただいた二人の先生を満足させる講評会となるか心配であったが,それは全くの杞憂であった。学生の発表は堂々としており,誇らしげでさえあった。後の学生に聞いたところによると,3年間で最も大変な授業だったらしく,それをやりぬいた達成感は非常に強いものだったこと,加えて,中間発表以来ひさしぶりに対面する両非常勤講師に対して,熊大を代表する自負も相当高かったらしい。やはり,このような演習は内部だけで行っていてはいけないということを実感した。

さらに素晴らしかったのは,質疑応答において,教員からの問題点の指摘にとどまらず,その解決法にまで議論がおよび,学生と教員によるやり取りが,創造的なディスカッションとなっていったことである。つまり,教員の質問に対する学生の返答に,「なんとなく…」が一切なかったのである。例えば,五角形断面のトラス橋を提案した学生に対する質問が,学生の返答を軸に,「そのトラスがそんなにたわむ原因は?」,「デザインを崩さずにたわみを抑えるにはどういう方法がある?」,「補強部材が武骨にならないように,うまくリズム感を出して配置してみれば?」と展開していったことなどがその典型である。これは学生自身が自分の提案に対して強いこだわりを持ち,検討を深化させていたことの結果である。当演習においては常に意匠・構造の相反する視点から検討を進めているため,学生各自が,模型やABAQUSでの可視化を通じて自らの案を客観化し,自らの中で対話を行うプロセスを経ていたからこそだと思う。異なる視点を統合し,一つの提案をまとめることの実務的意義は当然として,このような創造的意義を確認できたことは,当演習の成果の一つであると考えている。以下,発表順に従って各案を紹介していきたい。ただ1点,景観を担当する教員として残念だったことは,橋詰のランドスケープまで提案が及んでいる案がほとんどなかったことである。この点に関しては,スケジューリングも含めて今後の課題であろう。

 

 

①学生O:シースルーエレベーターを内蔵した橋脚で支えられた桁橋。平面図的にメガネに見える新しい眼鏡橋らしい。構造解析にあたっては,橋脚を構成する4本の柱も合わせてモデリングしている。チューブ状のエレベーターを形態的にも構造的にも破綻なく収めることに苦労していた。

 

 

②学生M:熊大の歴史,特に赤レンガの建造物に配慮したクラシカルなアーチ橋。この学生は,コンセプトが早めに決まり(というか頑固で)中間発表時から一貫した提案を行っていた。時間も比較的余裕があったため,赤煉瓦による橋台のデザインを入念に検討している。

 

 

③学生H:五高なので五角形トラス。他愛はないが,その造形を活かすため,県道に対して斜めに架け,立体感を演出したところが非凡である。この学生は休学して世界放浪の旅に出ていたのだが,誰よりも風景を見てきた成果かもしれない。この案では,たわみを抑えるのに苦労したらしい。その原因は,五角形トラス断面の形状を拘束できないから。このような議論は,私にとってもたいへん勉強となった。

 

 

④学生W(左)と⑤学生Y(右):学生Wは,雲状のシェルターがのる桁橋。アプローチのデザインが非現実的だが,唯一,陰影の演出に配慮していた。この橋をデートスポットとしたいらしい。学生Yは,スムーズな導線を実現するY字の桁橋。橋詰を含めたランドスケープの可能性が一番高かった案だったため,そこが詰め切れなかったのが残念。解析モデルはともに一般的な桁橋であるため,ここでは割愛する。

4.おわりに

演習開始当初は受講生の少なさにがっかりしたが,結果としては幸運だったのかもしれない。もし20名も受講していたら,このような演習は不可能だっただろう。この演習は,自らデザインし,解析するという,いわば当たり前の,オーソドックスなことをしただけである。しかし(あるいは,だからこそ),最終発表会後に私の頭に浮かんできたのは“手応え”という,身体的な言葉であった。ABAQUSをいじり,模型をつくり,自らに問いかけ,他者と対話する。デザイン演習とは,このような身体的行為を促し,活性化させ,ともに参加するプロセスそのものなのだろうと思う。最後に,ご協力いただいた葛西先生,久保田先生,松村先生,葛西研,星野研のTAの学生たち,何よりも5名の受講生に感謝の意を表し,稿をしめたいと思う。

星野 裕司Yuji Hoshino

熊本大学大学院自然科学研究科/工学部社会環境工学科|EA協会

資格:

博士(工学)、1級建築士

 

略歴:

1971年 東京生まれ

1994年 東京大学工学部土木工学科卒業

1996年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 修士課程修了

1996年 (株)アプル総合計画事務所 勤務

1999年 熊本大学工学部 助手

2005年 博士(工学)取得(東京大学)

2006年 熊本大学大学院自然科学研究科 准教授

 

主な受賞歴:

2012年 グッドデザイン賞サステナブルデザイン賞 受賞

2011年 第25回公共の色彩賞 入選 (熊本駅周辺地域都市空間デザイン)

2009年 深谷通信所跡地利用アイデアコンペ 専門部門 優秀賞

2009年 平和大橋歩道橋デザイン提案競技 入選

2003年度 土木学会論文奨励賞 受賞

 

主な著書:

「風景のとらえ方・つくり方」(共著、共立出版、2008)

「川の百科事典」(共著、丸善、2008)

 

組織:

熊本大学

〒860-0555 熊本県熊本市中央区黒髪2-39-1

TEL:096-342-3602

FAX:096-342-3507

HP:http://www.civil.kumamoto-u.ac.jp/keikan/

 

業務内容:

・景観デザイン・まちづくりに関する研究および事業支援

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