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2016.07.04

13|変なホテル

川添 善行(東京大学 生産技術研究所 川添研究室/川添善行・都市・建築設計研究所|EA協会)

概要:

佐世保に位置するホテルである。プロジェクトの当初から、ホテルの新しいビジネスモデルをつくることが目標だった。通常のホテル経営では、人件費と光熱水費が経費の大半と言われ、建設費を含め、三種のコストをいかに削減するかが課題であり、サービス業へのロボットの導入をはかることで乗り越えられないかと考えた。

このプロジェクトは、ロボットと建築の融合という点で完成以来多くの注目を集めることになったが、ロボットとは完結的な技術であり、ある目的や動作を果たすためには、それを保証する細かな条件(照度や勾配、床の仕上など)が必要となるとことがわかった。それはあたかも、各要素技術が必要とする多数の前提条件をすべて満たすための、建築設計における連立方程式を解くようなものであった。

 

 

配置図中、黒塗りの建物が本プロジェクトを示す。

ハウステンボスに隣接しつつ、既存のオープンスペースの構成に配慮している。建物は、南北に短く東西に長い配置とすることで、不要な熱取得を最小限化している。

 

 

 

配置図および平面図。

図中、左上のボリュームがエントランス棟。敷地の勾配にあわせ、客室棟の配置を調整することで、基礎コンクリートの量を減らすと同時に、雁行型の配置が生まれ、風の通り道をつくりだしている。また、建物内の勾配は、ロボットの走行可能な範囲で設計し、各場所をロボットが自由に動き回れる設計としている。

 

 

 

本プロジェクトに導入されている技術の一部。

各メーカーとの調整を繰り返し、数多くの技術が一つの建築に実装されるにいたった。また、将来的にも各要素技術の更新や交換が可能な設計としている。

 

 

 

外観写真。

各ボリュームが少しずつずれて配置されることで、ボリューム感を低減すると同時に、その隙間に風の通り道が生まれている。できるだけ多くの外部空間をとることで、客室の空間性の向上に配慮している。

 

 

 

エントランス棟入口周辺に実装されているロボット。

本来は工業用途の仕様であるが、建築との調整を行うことで、利用者のカバンを保管するためのロボットとして生まれ変わった。ロボットと建築の制作精度が異なるため、それを調整するディテールが必要となる。

 

 

 

客室内部。

各室からは外の緑地を望むことができる。客室にはいくつかのバリエーションがあり、少人数から大人数の宿泊客にも対応できる設計としている。

 

 

 

所在地:

長崎県佐世保市

 

竣工年:

2015年7月

 

諸元:

主要用途:ホテル

敷地面積:16,403㎡

延床面積:3,540㎡

階数:地上2階

主体構造:鉄骨造

環境配慮技術:クールチューブ、蓄熱槽、太陽光発電

 

受賞:

なし

 

関係者:

建主|ハウステンボス

統括|野城智也

建築 基本設計・監修 東京大学 生産技術研究所 川添研究室

担当/川添善行 原裕介 大川周平 小南弘季

実施設計 日大設計

担当/諫山敏志 小堀元寛

客室インテリア ワイス・ワイス

担当/菅野成人 長谷川真弓 中山利一

構造 田中構造設計

担当/田中忍 武部謙作

サンヨーホームズ(客室棟)

担当/世良守 伊藤武志 水野善和

設備 基本設計 東京大学 生産技術研究所 野城研究室

担当/森下有

東京大学 生産技術研究所 馬郡研究室

担当/馬郡文平

LIXIL(客室棟)

担当/小田方平 宍戸敏昭 藤井文徳

実施設計 島田電気商会

担当/川崎敏生

空研工業

担当/綾部修司

ブランディング・サインデザイン GRAPH

担当/北川一成 錢亀正佳 上田真理

プロジェクトマネジメント アスコット

担当/浜崎拓実 前田朋広

 

EAプロジェクト100

川添 善行Yoshiyuki Kawazoe

東京大学 生産技術研究所 川添研究室/川添善行・都市・建築設計研究所|EA協会

資格:

一級建築士

 

略歴:

1979年神奈川生。オランダから帰国後、東京大学 景観研究室 にて内藤廣に師事。現在、東京大学 川添研究室(建築設計学)主宰。川添善行・都市・建築設計研究所 代表。Dr. (eng)。

ベレン公園図書館、shibuya1000、白水ダム周辺整備計画 鴫田駐車場・トイレなどの作品があり、現在も国内外での建築設計に携わる。世界の都市再生事例を集めた『SSD100 都市持続再生のツボ』(共著)は、日本国内だけでなく韓国でも出版されている。

 

主な受賞歴:

2008年 土木学会景観デザイン研究発表会優秀講演賞

2009年 グッドデザイン賞(shibuya1000)

2011年 グッドデザイン賞(白水ダム周辺整備計画 鴫田駐車場・トイレ)

『世界のSSD100 都市持続再生のツボ』共著(彰国社)

 

組織:

東京大学 生産技術研究所 川添研究室

〒153-0041 東京都目黒区駒場4-6-1

TEL:03-5452-6153

FAX:03-5452-6859

HP: http://www.kwz.iis.u-tokyo.ac.jp

 

川添善行・都市・建築設計研究所

HP:http://www.gandz.com/

 

業務内容:

・建築設計

・地域再生に関する調査・研究

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