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2018.05.02

25|桜小橋

安仁屋 宗太((株)イー・エー・ユー|EA協会)

 桜小橋は、東京都中央区の勝どきと晴海をつなぐ歩行者専用橋で、周辺歩道の混雑緩和と災害時の避難路確保のため計画された、橋長87.8m、幅員4.5mのPC3径間連続ラーメン橋である。「歴史的な水辺空間の魅力を活かし、周辺地域および運河空間の回遊性を生み出すことで、今まで以上に地域の魅力を向上させる」というコンセプトのもと、橋本体に加えて橋詰めそして接続街路まで一体的な設計・整備がなされた。平成29年10月の開通以降、地区住民や晴海への通勤客、街の来訪者など多くの人に利用されている。

 なお、桜小橋という名称は公募により決定されたもので、晴海側区道「桜の散歩道」と「桜」をシンボルとする勝どき側橋詰を結ぶ「小橋(歩行者用の橋)」であることが由来である。

 

 橋の計画・施工に関しては以前の記事を参照いただくとして、ここでは完成後の写真を中心にそのデザインにフォーカスを当てる。

 水辺にふわりと浮かぶ薄い桁。先述のコンセプトのもとに、水辺が主役となるよう上部に構造を出さない、できるだけシンプルで薄い橋とした。

 

 遠目にはシンプルな橋だが、近づくと地覆を彩るタイルが豊かな表情を見せる。4.5mの幅員と5%以下の緩やかな勾配で、まわりを眺めながらゆったりと歩いたり、橋の上でしばらく立ち止まって水辺の景色を楽しむことができる。

 

 スムーズなアプローチのために、橋のたもとに向かって+1mのゆるやかな平面拡幅を入れている。航路条件および取り付き高さやバリアフリー勾配により、スパン割や桁高に厳しい制約がかかったが、70N/mmの高強度コンクリートを用いることで、中央支間45mかつ桁高1mという薄くて揺れにくい橋を実現した。

 

 晴海側の橋詰。縦断勾配と平面拡幅が組み合わさる3次元の線形について、3Dモデルによる詳細検討を重ね、渡る人を迎え入れるゆるやかな線形を実現した。高欄トップレールの基部にシンプルな親柱を配し、運河の歴史を解説するサインや水辺に向いたベンチを備え、しばらく佇むことができる橋詰空間とした。

 

 外から見た際に桁が薄く見えるよう、両端に向かって薄くなるやわらかい曲線を用いた断面形状とした。なお、上図は場所打ちとした側径間の断面で、平面拡幅に対しては中央の直線区間を伸ばすことで対応している。

 


 寄りかかって水辺の景色を眺められるよう、手触りの良い鋳鉄を用いた柔らかい形状のトップレールとした。また、角形鋼管の下段ビームを斜めに傾け、歩きながら水面がよく見える透過性の高い高欄とした。万が一の補修にも容易に対応すべく、支柱足元を埋め込みではなくカバー式とし、内側には橋の側面を演出するLED照明を仕込んだ。

 

 地覆タイルの配色決め(上)と舗装の試験施工(下)の様子。現場監理業務が組まれたわけではなかったものの、「いいモノを作ろう」という発注者と施工者の意識の高さと協力により、事前の3者協議を重ねた上で、ほぼ全ての材料・仕上げについて現場における最終確認を実施することができた。

 


 地覆には、2面を施釉したタイルを用いた。現場で11色のサンプルを並び替えながら、最終的に全7色、並び方4パターンを決定し、実施工に反映した。なお、本橋の東側、月島と晴海をつなぐ位置に同形式の橋を架ける計画があり、それぞれの土地利用や想定される利用シーンに合わせて、2本の橋でタイルの色を使い分ける計画である。

 

 架橋位置付近はちょうど月島川と朝潮運河が交わる場所であり、空の抜けた開放的で魅力的な水辺空間が広がっている。運河沿いは全線にわたり、耐震護岸工事に合わせてその上部を遊歩道化する計画が目下進行中であり、桜小橋周辺の整備と連携することで、水辺を中心とした回遊性が一層高まると考えられる。

 


 勝どき側の橋詰めでは約2mのレベル差が生じるが、まっすぐアプローチする幅広でゆるやかな階段と護岸沿いに5%スロープを設け、橋への動線をスムーズにつなげた。また、小幅板の表情をもつやわらかい印象のコンクリート擁壁と透過性の高いシンプルな柵を組み合わせ、圧迫感を抑えたすっきりした空間を目指した。

 


 折り返しスロープ間には転落防止のための立ち上がり1,100mmが必要となるが、全てを壁とするのではなく、H400mmの半壁と透過性の高い横桟の柵として、下のスロープへの圧迫感を抑えた。また、計画当初からの大きな課題であった周辺住民のプライバシー確保のためもあり、常緑高木を基調としつ落葉樹を織り交ぜた緑豊かな橋詰空間としている。

 

 勝どき側の延長約220mの街路は、元の片側歩道から両側歩道へと横断構成を見直し、さらに通過車両交通のほとんど無い橋側の区間約100mでは、歩道と車道の舗装を脱色アスファルトで統一するなどし、歩行者優先の街路空間にリニューアルした。ボーダー舗装に橋や橋詰と同じ御影石を用い、一連の歩行空間として一体的にデザインした。

 

 勝どき側の高層ビルには飲食店など商業施設が多く並んでおり、夜間に橋を渡る姿も多く見られる。高欄トップレールに組み込んだLED照明により路面全体を一様に照らし、適度な明るさが利用者を導く。水辺の夜景を眺めながら心地よく渡ることができる。

 

 高欄支柱の足元に仕込んだLED照明により、橋側面をポツポツとした灯りで演出している。遠くには都会的な夜景を望み、週末ともなると運河には宴に賑わう多くの屋形船がゆったりと行き交う。こうした周りの夜景とともに、水辺を中心とした地域の魅力が一層高まっていくことを期待している。

 

所在地:
東京都中央区

竣工年:
2014年3月

 

諸元:
PC3径間連続ラーメン橋
橋長87.8m
支間割 20.7m+45.0m+20.7m
有効幅員 4.5〜5.5m

 

事業費:
約25.5億円(橋梁および取り付け護岸・橋詰めを含む)

 

受賞:なし

 

関係者:
事業主体|東京都中央区
詳細設計|(株)エイト日本技術開発
設計協力|二井昭佳(国士舘大学)、(株)イー・エー・ユー

EAプロジェクト100

安仁屋 宗太Sota Aniya

(株)イー・エー・ユー|EA協会

略歴:

1980年 沖縄生まれ

2003年 東京大学工学部土木工学科卒業

2005年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 修士課程修了

2005年 有限会社イー・エー・ユー 勤務 (2015年より株式会社イー・エー・ユー)

 

主な受賞歴:

2010年 グッドデザイン賞 (長崎中央橋)

2013年 土木学会デザイン賞 奨励賞(旧佐渡鉱山 北沢地区工作工場群跡地広場および大間地区大間港広場)

2013年 土木学会田中賞(各務原大橋)

2014年 土木学会田中賞(太田川大橋)

2015年 土木学会デザイン賞 優秀賞(各務原大橋)

 

組織:

(株)イー・エー・ユー

代表取締役 崎谷 浩一郎

〒113-0033 東京都文京区本郷6-16-3幸伸ビル2F

TEL:03-5684-3544

FAX:03-5684-3607

HP:http://www.eau-a.co.jp/

 

業務内容:

・土木一般、建築、造園等に関わる景観デザイン、設計、コンサルタント業務

・都市開発、都市計画、まちづくりに関わるコンサルタント業務

・その他上記に付帯する業務

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