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2018.08.10

26|富士山本宮浅間大社神田川ふれあい広場

吉谷 崇((株)設計領域|EA協会)

 

 
富士山本宮浅間大社は全国に1300社ある浅間大社の総本山であり、2013年に世界遺産登録された「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一部でもある。神田川ふれあい広場はこの浅間大社の境内に位置し、昭和39年に児童遊園として整備されて以降、四阿や藤棚、児童遊具などが置かれるなど、公園的に利用されてきた。しかし近年はそうした施設が老朽化し、見通しも悪く、特に女性や子供などにとっては利用しにくい場所となっていた。

 
富士宮市は富士山の世界遺産登録を契機に、「世界遺産のまちづくり整備基本構想」を策定し、浅間大社の周辺は「富士山信仰の歴史文化を感じるまちづくり」のコアエリアとして定められた。神田川ふれあい広場はそうしたまちづくりの拠点施設として位置づけられることとなり、2014〜2015年にかけて改修デザイン、設計を行い、2016年春に完成を迎えたものである。

 

社叢をひかえた荘厳な浅間大社本殿

 

士山の伏流水が作り出す湧玉池の澄んだ水が、そのまま神田川の流れとなる。

 

富士山に見守られながら、神田川に飛び込む学生達。富士山と湧水に支えられた、富士宮の豊かな暮らしを感じさせる象徴的な風景。

 

整備前の神田川ふれあい広場

 

施設の老朽化が進み、人々が集まりにくい場所となっていた。

 

 

 

神田川ふれあい広場の改修にあたって求められたのは、世界遺産の一部として大社にふさわしい静謐な景観形成と、門前町に面する広場として人々のあつまる賑わい拠点としての整備である。すなわち、「聖」なる空間としての浅間大社の前庭としての性格と、「俗」なる空間である門前町を繋ぐ場所という、二面性を実現することが求められた。

神田川ふれあい広場は、浅間大社と門前町をつなぐ場所に位置する。

 

 

そこで、広場の整備コンセプトを「日常と非日常をつなぐ広場」として、富士山への眺望を軸とした空間構成や社叢への連続性を意識した植栽、築山や親水池といった日本庭園的なボキャブラリーによって浅間大社の前庭としての景観形成を図ると同時に、既設の親水護岸を活かした歩経路の改修や、築山に設けた園路、ミスト噴水などによって、自然と人々が集まるしかけをつくり、水に支えられた富士宮らしい暮らしと賑わいを感じられる広場となることを意図した。

参道との関係や富士山への眺望を意図した空間構成を検討。

 

 

 

模型によるスタディ:築山の高さや水景の規模、四阿の配置などを検討

 

 

具体のデザインにあたっては、世界遺産の構成資産の一部であり、風致地区でもあることから、浅間大社の雰囲気を損なわないよう人工的な素材や色彩は用いず、自然素材を用いたしつらえとした。シダレザクラやケヤキなどの既存樹木は、元の位置で保存しながら、根上がり対策や、通気性や排水性確保などの技術的な対策を施している。一方で、広場の雰囲気を閉鎖的にしていた大社や参道側の植栽は一部を刈り込み、見通しをよくすることで、既存の水路や参道の雰囲気が感じられるようにしつらえていった。

 

 
夜間照明は高木のライトアップや路面を照らすフットライトで構成し、照明器具や光源の存在は感じさせないように配慮した。既存のサクラを活かした光のスクリーンによって空間を作るというコンセプトのもと、現地での照明実験を行い、それぞれの配置を丁寧に決めていった。

居場所をつくるあかり(フットライト)と空間をつくるあかり(ライトアップ)

 

既存樹木の水盤への映り込みを確認

 

 
大きな桜に囲まれ、美しい神田川の流れに面し、富士山を望む絶好の視点場であるふれあい広場は、四季のうつろいや風景を楽しむ「名所」として生まれ変わった。春には美しい夜桜を、夏には川の涼しさを楽しむ。秋には浅間大社の例祭があり、集まる山車や屋台と共に歴史と文化にふれ、冬には冠雪した美しい富士山を望む。竣工後のふれあい広場には、芝生で遊ぶ子供たちやそれを見守る母親たち、神田川に飛び込む男子学生、ベンチに座って将棋を指すお年寄りの集まり、ミスト噴水で走り回る女子学生、大社から歩いてきた参拝客など、いつも多様な人の姿が見られるようになった。日本における広場の原型のひとつは「境内空間」にあると言われるが、そうした多様な人々の居場所となり、催事の際には多様な人々が集い、猥雑で、地域コミュニティが結束する場へと変化する。そうした原初的な広場としての価値をこれからも持ち続けて欲しいと願っている。

春には美しいサクラとともに富士山を望む名所となる。

 

既存の親水護岸を活かした水辺の近くには、いつも老若男女が集まる。

 

親水池は、神田川から水を引き込み、そのまま神田川に戻す構造となっている。富士川の玉石を用いて自然な景観に配慮する一方、底面は砂利の洗い出しとし、子供が安全に遊べるような仕上げとした。

 

芝生の築山は広場空間の骨格をつくり、緩やかに広場と大社の間の境界をうみ出している。築山の頂点は富士山を望む視点場にもなる。

 

親水池は、夏場には小さな子供達の格好の遊び場となっている。

 

芝生に配置されたミスト噴水は、子供だけでなく多くの世代が楽しみにする夏の風物詩となっている。

 

篝火を思わせる柱の形状とライトアップが特徴的な四阿は、地場のヒノキ材を用いた構造。富士山や浅間大社との位置関係、参拝客の動線、広場利用者の使い勝手を読み込みながら、配置と大きさ、形態が決められている。

 

夜桜が親水池に反射し、幻想的かつ色気を感じさせる夜の景観をつくりだす。

 

 

 

所在地:
静岡県富士宮市

 

竣工年:
2016年3月

 

諸元:
規模│ 約4800m²

 

関係者:
事業主体|富士宮市
実施設計│(株)設計領域、富士設計(株)

 

受賞:
第10回静岡県景観賞、2018年富士宮市景観賞、2017年グッドデザイン賞、2017年土木学会デザイン賞、第3回まちなか広場賞

 

 

 

 

 

EAプロジェクト100

吉谷 崇Takashi Yoshitani

(株)設計領域|EA協会

資格:

技術士(建設部門)

 

略歴:

1978年 兵庫県西宮市生まれ

2000年 東京大学工学部土木工学科卒業

2002年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修士課程 修了

2002年 (有)小野寺康都市設計事務所 勤務

2009年 (株)設計領域 設立

 

組織:

(株)設計領域

代表取締役 新堀 大祐

代表取締役 吉谷 崇

〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町29-35渋谷Dマンション2階

TEL:03-5459-1618

FAX:03-5459-1619

HP:http://s-sr.jp/

 

業務内容:

・土木、建築、造園に関わる設計及び監理

・地域、都市計画に関する調査、研究及び計画立案

・都市デザイン、景観設計に関する調査、研究及び計画立案

・インテリア、家具の企画、設計及び販売

・公園遊具、路上施設等の企画、設計及び販売

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・前各号に付帯する一切の事業

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