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2011.12.01

08|「組織として石積み技術を保持する会社」第1回:(株)寒風(その3)

兼子 和彦((株)東京建設コンサルタント|EA協会)
前田 格((株)東京建設コンサルタント|EA協会)

過去2回、組織として高度な石積み技術を保持し続ける会社のお話として、男鹿石の産出と石材工事の両方を行う、男鹿の「(株)寒風」をご紹介させていただいております。前回は、実際に(株)寒風により施工された石積工事の大作、「横手川ふるさとの川整備事業」をご紹介いたしました。今回は、その他の石積工事の実施例をご紹介いたします。

 

【用水路の石積み護岸】秋田県男鹿市

写真1、2 寒風の本社傍の用水路を石積みとした事例

 

三面張りコンクリートの水路の護岸部を石積みとした事例です。

以前はごみだらけの用水路でしたが、護岸を石積みとしただけでごみを捨てる人がいなくなり、綺麗な水路となりました。

 

【男鹿総合運動公園】秋田県男鹿市

写真3 平成17年  道路脇擁壁

 

写真4  道路脇擁壁の天端処理

 

写真5  道路脇擁壁の伸縮目地処理

 

最初は間知石(けんちいし)を指定されていましたが、高さが変化する擁壁の場合は間知石が馴染まないことから乱積みへの変更を提案し、了承を得て施工しました。

天端の処理は、天端コンクリートを石の上端から10cmほど下げて打設し、その上を覆土して切天端のように見せています。草が繁茂することで、石垣が風景に馴染んでくることを期待しています。練積みのために伸縮目地が必要ですが、石なりの形に合わせて入れています。

 

写真6  建物前の擁壁

 

写真7  建物前の擁壁の天端処理

 

建物前の擁壁も最初は間知石が指定されていましたが、タイル貼りの建築外装とは合わないと考え、木っ端石への変更を要請し、了承を得て施工しました。

所々に鏡石を配してリズムを出しましたが、施工後に手前にベンチが設置されるのを見て、ベンチを置くなら鏡石を突出させて座れるようにしたら面白かったのに、と思ったものです。

石屋の視点から提案できる事項は沢山あります。図面を渡されてその通りに施工するのではなく、石屋の考え方も採り入れて欲しいと思います。乱積みや崩し積みなど、微妙なところは図面表現ができない場合もあります。図面がないと了承されないということに違和感があります。

天端処理は、本来ならば笠石を置きたいところですが、予算が無い時には真っ先に削られてしまうことが多いです。ここでは、木っ端石は石が小さく天端コンクリートを下げて打つことができないことから、天端コンクリートの上に男鹿石の鉄平石を貼ることとしました。ただし、幅50cmと指定されていたのですが、50cmのラインで直線に切らずに端部を石なりの形のままとし、植栽が繁茂してきた際に、擁壁との一体感が生じるように配慮しました。

 

【男鹿水族館GAO】秋田県男鹿市 平成16年

写真8 【男鹿水族館GAO】秋田県男鹿市 平成16年   下から見たプローチの石積み

 

写真9  上から見たアプローチの石積み

 

アプローチの石積みは、前面入江の海象条件が厳しい場所であることから強度を出すために木っ端石の長手方向を擁壁に挿す形を提案したのですが、人が登り易くなってしまうと拒否されてしまいました。結果、長手方向を横に積んだのですが、台風の時の時化で欠落が出てしまいました。欠落部分は補修しています。

 

写真10  欠落部分の補修箇所

 

写真11  石積の前に設置された疑岩構造物

 

波浪で欠落した部分は、深目地の他の部分と異なり、厚くモルタルを盛って補修しています。木っ端石の根入れが浅いため、やむを得ない処理でした。

整備後の台風の被害の後に、石積みの前面に疑岩が施工されることとなりました。この話を聞いた時、工法の変更を求めて役所に進言したのですが、聞き入れてもらえませんでした。いくら周囲の岩に似せて造ったところで、年月が経てばみすぼらしい物になってしまうだろうし、疑岩の「疑」の字に問題があると思いました。誠に残念です。

 

 

 

(株)寒風のお話は今回で終了です。次回は別の石積み施工会社をご紹介する予定です。

職人礼讃

兼子 和彦Kazuhiko Kaneko

(株)東京建設コンサルタント|EA協会

資格:

技術士(建設部門)

 

略歴:

1952年 静岡県生まれ

1976年 東京工業大学工学部社会工学科卒業

1976年 株式会社アイ・エヌ・エー新土木研究所 入社

1983年 株式会社地域開発研究所 設立

2011年 株式会社東京建設コンサルタント 入社

 

主な受賞歴:

2001年 土木学会デザイン賞優秀賞(鹿児島港本港の歴史的防波堤)

2008年 土木学会デザイン賞優秀賞(嘉瀬川・石井樋地区歴史的水辺整備事業)

 

主な著書:

「歴史的土木構造物の保全」土木学会編、鹿島出版会、2010.9(共著)

「河川博物館、構想から運営まで」(財)河川情報センター、1997.10(共著)

「新時代の河川博物館、欧州にみる博物館の可能性」河川博物館協議会編、鹿島出版会、1999.10(共著)

 

組織:

(株)東京建設コンサルタント

〒170-0004 東京都豊島区北大塚1-15-6

TEL:03-5980-2648

FAX:03-5980-2613

HP:http://www.tokencon.co.jp/

 

業務内容:

河川計画、河川構造物、河川環境、水質保全、上下水道、道路、橋梁、交通、海岸、ダム、砂防、環境アセスメント、観測技術、模型実験、都市・地域計画、廃棄物処理、事業執行マネジメント、防災、LCM、機械電気設備技術、情報通信技術、測量・地質調査、施工管理、建築設計

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復興元年を迎えて

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前田 格Itaru Maeda

(株)東京建設コンサルタント|EA協会

資格:

一級建築士

 

略歴:

1967年 千葉県生まれ

1993年 多摩美術大学美術学部建築科卒業

1993年 (株)地域開発研究所 入社

2011年 (株)東京建設コンサルタント 入社

 

主な受賞歴:

2001年 土木学会デザイン賞 優秀賞(鹿児島港本港の歴史的防波堤)

2008年 土木学会デザイン賞 優秀賞(嘉瀬川・石井樋地区歴史的水辺整備事業)

 

組織:

(株)東京建設コンサルタント

〒170-0004 東京都豊島区北大塚1-15-6

TEL:03-5980-2648

FAX:03-5980-2613

HP:http://www.tokencon.co.jp/

 

業務内容:

・土木、造園、建築の計画及び設計業務

・都市計画、まちづくりに関わるコンサルタント業務

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