SERIAL/ all

2012.07.20

10|「国内の石丁場の現況」第1回:(有)額田石材

兼子 和彦((株)東京建設コンサルタント|EA協会)
前田 格((株)東京建設コンサルタント|EA協会)

前回まで、組織として高度な石積み技術を保持し続ける会社のお話を紹介してきました。今回からは、石積みの材料を産出する、国内の石工場の現況についてご紹介します。

最初は、良質な御影石の生産地として有名な岡崎から、(有)額田石材のお話をご紹介します。額田石材は、石の産出の他、石積み工事も請けております。業態的には、以前ご紹介させていただいた、男鹿の(株)寒風と似ております。

※2006年6月に実施した額田石材の畔柳社長へのインタービューをもとに構成しました。

 

1.会社の概要について

現在は工事もやっておりますが、元々は材料屋であり、額田の採石場から最盛期には3,000~5,000切/月を出していました。15~20年前には、30~40tの無垢石も出ていました。

韓国産材の輸入、オイルショック、中国産材の輸入と打撃を受けて、採石の仕事は減ってきています。今では自分も中国から入れているくらい、中国産材は安いです。国産材供給は、ユーザーにかなりの余裕がないと売れない業種です。

現在、石積工事やモニュメント等の環境石材系で7割、墓石で2割、山の石切で1割といった売り上げ比です。環境系の仕事の内、モニュメント等が3割で、積みの仕事は6割程度です。残りの1割は建築の内外装です。建築のスタッフのみ、自社にはおらず、外注しています。積み仕事の95%は公共、民間は5%程度です。公共の積み仕事は河川が7割、公園や道路が3割、港湾・海岸はありません。港湾に関しては、潜りの手配をできる石屋が優先的に仕事を取っています。

山では墓石関連の製品の他に、乱積み用の石を作っています。ラップストーン工法(ワイヤー固定の石積み)用の材料もつくっており、300~500mmの物で1,000t以上の蓄えがあります。他に、周辺の工事現場で出た石をもらってきてストックも行っています。

 

額田石材の採石場。

 

採石場で割られている積み石用の石。

 

工事現場からもらってきた石のストック。

 

2.石積み工事の動向について

地元の石屋ですら、最近では岡崎の石を見下しています。岡崎での修行生も減ってきています。修業生を人夫代わりに使ってしまっている人もおり、成長できない生徒もいるからです。石の仕事が減ってきているのが一番の課題でしょう。

20年前には石積み職人が威張っていられました。怖いくらいでした。今は紳士的で、大人しくなったものです。

現在、岡崎では乱積み用の石しか作っておらず、間知は尾鷲(紀州)から入れています。乱積み用についても、岡崎では何千~何万個といった単位では出すことができません。紀州石には雑割石があり、控えのサイズ指定ができます。

 

3.石積み技術と技術者について

自分は現在三代目であり、岡崎内の他の石切場で修行してきました。現在、石工職人6人(40~63才)と、重機オペレーター2人を常時雇用しています。6人の内、2人は積みが上手いです。皆岡崎の人間であり、額田で教わった職人です。

技能士の資格は、1名が石材加工の資格を持っていますが、石積みの有資格者はいないです。職人は、土木の現場がある時は現場に、現場がない時は山の仕事(丁場の仕事)をしています。現場は、墓の仕事や積みの仕事等様々であり、それぞれ得意な職人が中心となり、補佐が付く形で仕事をしています。積みの仕事の場合、通常3人一組で、二組で作業を行っております。現場が大きい場合、外注で個人の石工や他社を集めることもあります。他社との協力関係もできております。

仕事が遅い職人は下手であり、早いと上手いは比例していると思います。自社の職人は、割るのが早いです。山出しをやっているからです。

穴太衆との付き合いがあり、材料を供給しています。穴太衆は、かなり選別をして石を持っていきます。穴太衆は一日に1m2くらいしか積まないようです。

中国産間知なら素人でも積めます。

 

4.石積み工事について

通常、見積りを出して契約するのですが、職人の技量により見積額も異なります。

積みの仕事は図面通りにやれと言われるのですが、楽なようでいて苦しい場合があります。間知積みの場合、雑割石を叩いて出た木っ端石を胴飼に入れるのですが、図面でコンクリートになっているのだから木っ端でなくコンクリートを使えと言われるような変な公共事業の現場もあります。

石積みがわかる監督は少なくなってきています。ゼネコンでも、古い人、今の所長クラスの人でないとわからないようです。何が手抜きかわからない人が多いです。

ラップストーン工法が増えています。ワイヤーで固定すると言っても、経験のある職人でないと団子積みになってしまい、慣れも必要です。センスのある石屋ならすぐにできるであろうと思います。通常の石積みよりも早く、7~9m2/人日程度進みます。ラップストーン工法については、自社から提案するものではなく、業者の設計により決められているものです。特許があり、非常に高価なワイヤーやプレートを購入させられます。石よりも高いです。

 

 

【フォレスタヒルズ開発工事】愛知県豊田市 平成5年 トヨタ自動車

材料は岡崎産御影石です。ゼネコンの下請けで入りました。設計は大手の設計事務所でした。

スリットを開けて並ぶ景石については、設計事務所のこだわりが強く、石を集めるのに苦労しました。

設計事務所が用意した図面がありましたが、ただの叩き台であり、現場での試し積みで確認を得て施工しました。練積みです。

 

完成後の写真。

 

【つくでC.C造成工事】愛知県作手村 平成4年 大成建設

材料は岡崎産御影石です。大成建設から受注しました。練積みです。

 

完成後の写真。

 

【於御所川改修工事】愛知県岡崎市 平成18年 岡崎市

材料は岡崎産御影石です。ラップストーン工法です。

 

完成後の写真。

 

【岡崎公園石垣及び大手門】愛知県岡崎市

大手門は切り込みハギであり、大変手間がかかりました。一日に石一個しか進まない日もありました。空積みではなく、裏にはコンクリートが入っています。

 

切り込みハギで積まれた大手門の石垣。

 

石垣部分は打ち込みハギです。切り込みハギよりかは楽でした。高さが低いこともあり、角石の天端を剃り上がった形にし、寺勾配を綺麗に見せようとしました。

 

打ち込みハギで積まれた石垣。

 

次回も、石積みの材料を産する国内の丁場側にスポットをあてたお話をご紹介する予定です。

職人礼讃

兼子 和彦Kazuhiko Kaneko

(株)東京建設コンサルタント|EA協会

資格:

技術士(建設部門)

 

略歴:

1952年 静岡県生まれ

1976年 東京工業大学工学部社会工学科卒業

1976年 株式会社アイ・エヌ・エー新土木研究所 入社

1983年 株式会社地域開発研究所 設立

2011年 株式会社東京建設コンサルタント 入社

 

主な受賞歴:

2001年 土木学会デザイン賞優秀賞(鹿児島港本港の歴史的防波堤)

2008年 土木学会デザイン賞優秀賞(嘉瀬川・石井樋地区歴史的水辺整備事業)

 

主な著書:

「歴史的土木構造物の保全」土木学会編、鹿島出版会、2010.9(共著)

「河川博物館、構想から運営まで」(財)河川情報センター、1997.10(共著)

「新時代の河川博物館、欧州にみる博物館の可能性」河川博物館協議会編、鹿島出版会、1999.10(共著)

 

組織:

(株)東京建設コンサルタント

〒170-0004 東京都豊島区北大塚1-15-6

TEL:03-5980-2648

FAX:03-5980-2613

HP:http://www.tokencon.co.jp/

 

業務内容:

河川計画、河川構造物、河川環境、水質保全、上下水道、道路、橋梁、交通、海岸、ダム、砂防、環境アセスメント、観測技術、模型実験、都市・地域計画、廃棄物処理、事業執行マネジメント、防災、LCM、機械電気設備技術、情報通信技術、測量・地質調査、施工管理、建築設計

SPECIAL ISSUE

復興元年を迎えて

2012.04.10

岩手県大槌町の復興計画について
復興元年を迎えて

2012.04.10

参考資料:「大槌町東日本大震災津波復興計画 基本計画」より抜粋

SERIAL

職人礼讃

2012.10.20

12|最終章「宮島秀夫氏が語る石積み」
職人礼讃

2012.09.11

11 |「国内の石丁場の現況」第2回:呉石材合資会社
職人礼讃

2012.07.20

10|「国内の石丁場の現況」第1回:(有)額田石材
職人礼讃

2012.05.20

09|「組織として石積み技術を保持する会社」第2回:田部石材(株)
職人礼讃

2011.12.01

08|「組織として石積み技術を保持する会社」第1回:(株)寒風(その3)
職人礼讃

2011.11.01

07|「組織として石積み技術を保持する会社」第1回:(株)寒風(その2)
職人礼讃

2011.10.01

06|「組織として石積み技術を保持する会社」第1回:(株)寒風(その1)
職人礼讃

2011.09.01

05|「一人親方の石工」第2回:山本 宝彦氏の話
職人礼讃

2011.08.01

04|「一人親方の石工」第1回:丸谷 清氏の話
職人礼讃

2011.07.01

03|日本石材研究所代表小林喜勝氏の話「その3:積み石の形」
職人礼讃

2011.06.01

02|日本石材研究所代表小林喜勝氏の話「その2:透水と止水、色々な石積み」
職人礼讃

2011.05.01

01|日本石材研究所代表小林喜勝氏の話「その1:裏込めの役割」
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

前田 格Itaru Maeda

(株)東京建設コンサルタント|EA協会

資格:

一級建築士

 

略歴:

1967年 千葉県生まれ

1993年 多摩美術大学美術学部建築科卒業

1993年 (株)地域開発研究所 入社

2011年 (株)東京建設コンサルタント 入社

 

主な受賞歴:

2001年 土木学会デザイン賞 優秀賞(鹿児島港本港の歴史的防波堤)

2008年 土木学会デザイン賞 優秀賞(嘉瀬川・石井樋地区歴史的水辺整備事業)

 

組織:

(株)東京建設コンサルタント

〒170-0004 東京都豊島区北大塚1-15-6

TEL:03-5980-2648

FAX:03-5980-2613

HP:http://www.tokencon.co.jp/

 

業務内容:

・土木、造園、建築の計画及び設計業務

・都市計画、まちづくりに関わるコンサルタント業務

SERIAL

職人礼讃

2012.10.20

12|最終章「宮島秀夫氏が語る石積み」
職人礼讃

2012.09.11

11 |「国内の石丁場の現況」第2回:呉石材合資会社
職人礼讃

2012.07.20

10|「国内の石丁場の現況」第1回:(有)額田石材
職人礼讃

2012.05.20

09|「組織として石積み技術を保持する会社」第2回:田部石材(株)
職人礼讃

2011.12.01

08|「組織として石積み技術を保持する会社」第1回:(株)寒風(その3)
職人礼讃

2011.11.01

07|「組織として石積み技術を保持する会社」第1回:(株)寒風(その2)
職人礼讃

2011.10.01

06|「組織として石積み技術を保持する会社」第1回:(株)寒風(その1)
職人礼讃

2011.09.01

05|「一人親方の石工」第2回:山本 宝彦氏の話
職人礼讃

2011.08.01

04|「一人親方の石工」第1回:丸谷 清氏の話
職人礼讃

2011.07.01

03|日本石材研究所代表小林喜勝氏の話「その3:積み石の形」
職人礼讃

2011.06.01

02|日本石材研究所代表小林喜勝氏の話「その2:透水と止水、色々な石積み」
職人礼讃

2011.05.01

01|日本石材研究所代表小林喜勝氏の話「その1:裏込めの役割」
OLYMPUS DIGITAL CAMERA