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2011.12.01

09|モケイづくりを始めよう その6~水の表現

西山 健一((有)イー・エー・ユー|EA協会)

■はじめに

前号では植栽の表現方法について紹介した。今号では、土木の模型に欠かせないもう一つの要素、「水」について取り上げる。

土木の模型には、その多くのケースで、「水」が何らかの形で登場する。一番分かりやすいのは河川空間。そして河川にかかる橋梁、池のある公園や広場、堀や水路沿いのプロムナード、海岸沿いのウォーターフロント空間など、例を挙げればきりがない。(しかもこれらの設計対象はどれも、水との関係を抜きにしては考えられない。)

「水」の模型表現というと、読者の中には、単に「青い紙を貼ればよい」と思う方もいるかもしれない。しかし表現する「水」そのもの、又は設計対象と「水」との関係をよく考えていくと、その表現は様々な形となって表れるはずである。

では、「水」そのもの、又は設計対象と「水」との関係をどのように考えれば良いか。以下ではこうした点に着目しながら、具体的な「水」の模型表現を紹介する。

■どのような水か?

まず具体的な表現を考える前に、これから作ろうとしている「水」が一体どのような「水」であるかを考える必要がある。湖や池のような静水面と、川のように動いている水とではその姿は異なる。また同じ川であっても、上流と下流では流速が異なり、流れ方も違う。他にも水深、波の有無、水質などによって、水は様々な姿を見せる。作ろうとしている「水」がどういう性質を持っているのかをよく考え、それにふさわしい表現を選ぶようにしたい。そうすることによって、対象となる場所の水の表情、質、動きまでも表現することができ、模型に臨場感が生まれてくる。以下にいくつかの水の表現例を紹介する。(写真1~4)

 

左)写真1 水の表現に用いる様々な紙(一番上にある縞模様の色紙は水の流れを表現す

る場合によく用いる。川の流軸方向に線を合わせれば流速の早い川、直角方向に使う

と流れが遅い水を表現できる)

右)写真2 波打ち際の表現例(トレーシングペーパーを重ねて配置し、水深が徐々に

変わる波打ち際を表現している)

(K島スタディ模型 S:1/500 EAU作成)

 

写真3 堀割の水の表現例(アクリワーロンという素材を使用。水面に波が立った動きのある水を表現している。)

(東京駅周辺模型 S:1/500 GSデザインワークショップ2004参加者有志+東京大学景観研究室有志作成)

 

■水は青とは限らない

次に色について考えてみよう。水の表現というと「水=青」と考えがちである。間違えではないが、必ずしも水は青とは限らない。周囲を緑で囲まれた水面であれば、その水には緑が移り込む。水深が深い水面であれば、黒っぽい色になる。作る対象となる「水」がどのような色を持つべきかをきちんと考えると、青以外の選択肢も生まれるはずである(写真4)。それには、現場に何度も通って、その「水」が何色なのかをよく見てくることが必要だ。

また色を選ぶ上で、重要な点がもう一つある。本紙6月号「ドボクノモケイ03」でも述べたが、模型全体の色のバランスを考える必要がある。緑の存在をアピールしたい模型であれば、水も緑系統の色を用いることもある。またコルクや木材といった特定の素材を用いてイメージを伝えるような模型であれば、あえてその素材の色を活かす方法もある。いずれにしても、模型全体で伝えたいイメージを考え、適切な色を選択するようにしたい(写真5)。

矛盾する内容になるかも分からないが、色について一点だけ注意すべき点がある。「水は青とは限らない」とは言ったが、多くの人が水の色としてイメージするのは「青」である。特に住民ワークショップなどに出席する一般市民の多くは模型を見慣れていない。そういった方々に模型を見てもらう場合、やはり青系統の色を用いるのが望ましい。他の色を使った場合、一見して水面であるかどうか分からないからである。模型を見てもらう人がどのような人で、模型を見たときにどのような印象を抱くかをよく想像することも必要である。

 

左)写真4 緑色の紙による水の表現例(少し濁った現場の水の雰囲気を大事にし、あえて深い緑色の紙を用いて表現)

(長崎県長崎市中央橋周辺模型 S:1/200 EAU作成)

右)写真5 木材を用いた池の表現例(木材の木目が出るように塗装した例。素材感を活かしつつも、周囲よりも濃い色で塗装することによって水を表現。また水面に浮かぶ水生植物もOHPシートに印刷して貼りつけている)

(片山津温泉砂走公園の展示用模型パネルS:1/500 EAU作成)

 

■設計対象との関係で水の表現を考える

設計対象との関係で、水の表現を決める場合もある。一つ例として河川にかかる橋梁の模型を制作する場合を考えよう。作る模型は橋梁の模型ではあるが、このようなケースでは、水面に反射する材料を用いることが多い。例えば、下に黒い紙を貼り、その上にプラパンやアクリルの板を敷くと、光を反射する水面ができあがる。こうすることによって、水の透明感も表現しつつ、水面に映る橋自体も表現することができる。特に橋梁の桁裏のデザインをアピールしたい場合には、桁裏の表情を水面に映すことができるので、有効な表現方法である。(写真6)。

このように主となる設計対象をより効果的に見せるために、水面を利用するという方法もある。設計対象と水との関係性を考えていくと、新しい水の表現方法が浮かぶかもしれない。

 

写真6 橋梁の桁裏が見えるように水を表現した例(連続した桁裏のブラケットが水面に映り込む)

(晴豊2号橋(仮称)検討模型 S:1/100 EAU作成)

 

■終わりに

今号では水の表現について紹介してきた。植栽の表現と同様に工夫次第で、様々な表現のバリエーションが生まれる要素である。模型を誰にどのように見せるのかをよく考えて工夫してされたい。

次号は、模型のスケール感をアップさせる「人の表現」について紹介する。

ドボクノモケイ

西山 健一Kenichi Nishiyama

(有)イー・エー・ユー|EA協会

資格:

技術士(建設部門:都市および地方計画)

 

略歴:

1975年 東京都生まれ

1998年 東京大学工学部土木工学科卒業(景観デザイン)

2000年 東京大学大学院社会基盤工学専攻修士課程修了(景観デザイン)

2000年〜2002年 (株)日本設計勤務

2002年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 博士課程入学

2003年 (有)イー・エー・ユー設立

2005年 東京大学大学院社会基盤工学専攻博士課程中退(景観デザイン)

2005年〜2007年 国土交通省東北地方整備局 景観デザイン研修講師

 

主な受賞歴:

2008年 土木学会デザイン賞 奨励賞(片山津温泉砂走公園)

2009年 広島南道路太田川放水路橋りょうデザイン提案競技(国際コンペティ

ション)最優秀賞

 

組織:

(有)イー・エー・ユー

取締役代表 西山 健一

取締役代表 崎谷 浩一郎

〒113-0033 東京都文京区本郷6-16-3幸伸ビル2F

TEL:03-5684-3544

FAX:03-5684-3607

HP:http://www.eau-a.co.jp/

 

業務内容:

・土木一般、建築、造園等に関わる景観デザイン、設計、コンサルタント業務

・都市開発、都市計画、まちづくりに関わるコンサルタント業務

・その他上記に付帯する業務

 

 

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