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2012.07.12

12|いよいよ完成 その1 ~忘れちゃいけない最後の仕上げ

西山 健一((有)イー・エー・ユー|EA協会)

■はじめに

前号までは土木の模型の基本的な作り方をテーマ毎に紹介してきた。今号からは模型の仕上げや模型写真の撮影方法について紹介していく。まず第一弾として、今号では模型の仕上げと模型を収納する箱について取り上げる。

■模型の仕上げ

模型本体が完成した段階で、忘れずにやらなければならないことは「方位とスケールバー」を模型に設置することである。これらを設置しないと、模型の縮尺や模型の中での距離、さらには太陽光の向き等、模型を見る人にとって重要な情報を欠くことになる。私の事務所では、方位、スケールバー、縮尺、さらには模型のタイトルを記したプレートのようなものを作成する事が多い。必要な情報をコンピューターでレイアウトし、印刷する。その紙を厚さ2-3mmのスチレンペーパーに貼付けてカットし、それを模型の中の平らな場所に貼付ける(図1、写真1)。情報をプレートの中にまとめることで分かりやすくなる。必要であれば、模型の簡単な説明を付け加えても良い。

左:図1 タイトル、方位、スケール、縮尺等をまとめたプレートの例

右:写真1 プレートの設置例

 

さらに模型の見栄えをよくする一つの方法が模型側面の処理である。この作業を行うと模型の見栄えが一段ランクアップする。特にコンターがたくさん積まれた模型の場合、積み上げる際の精度にムラがあり、その側面はでこぼこしてしまって、見栄えも悪い。そのような場合、コンターの側面を熱線カッターでカットする(但しスチレンペーパーで作っている場合に限る)ときれいな側面を作ることができる。そしてさらにその側面の上に、紙や薄いスチレンペーパーを貼付けると、より見栄えがよくなる(図2)。この時、後から貼付ける紙やスチレンペーパーはコンターの段に合わせてカットしなければならない。平面図から形状を起こす事もできるが、コンターの積み方や材料の厚みの誤差もあるので、コンター模型の側面を直接紙に写し取り、それを元に作る方がきれいに仕上がる。

図2 模型側面の仕上げ

左:熱線カッターで側面をカットする

右:側面に紙やスチレンペーパーを貼りきれいに仕上げる

 

■甘くみてはいけない模型用の箱

出来上がった模型を保管したり、運搬したりするには模型用の箱が必要になる。模型が全て出来上がった後に作る事が多い訳であるが、これを甘く見てはいけない。私の事務所でもアルバイトの学生さんに模型用の箱を作ってもらう事が多いが、うまく箱として組み上がらなかったり、またそもそも模型自体が箱に入らなかったりといった事態をたまに目にする。

単純な箱ではあるが、きちんと設計図を書かなければならない。当然の事ではあるが、材料(強度のある段ボール板やスチレンボードなどがよく用いられる)の厚みや中に入れる模型のサイズ、開閉する蓋、開閉の方法などの事を良く考えなければならない。コツは、完成した模型ギリギリのサイズではなく、少し大きめに作っておく事である。そうすれば、厚みを計算に入れ忘れた場合であっても多少の微調整が可能であるし、最後に模型本体が入らないという事態も回避できる。箱を構成する各面を切り出し終わったら、一度仮組みをして模型本体がうまく納まるかどうかをチェックしてみると良い。各面同士の接着には、スチノリや虫ピンを用いて固定し、最後に上から布テープ等で完全に貼り合わせる事が多い(図3)。ともかく保管中や運搬の最中に箱自体が壊れてしまうことが無いようにしなければならない。

次にポイントになるのが、少し大きめに作った箱の中に入れた模型をどのように固定するかである。模型の箱を逆さまにする事はほとんどないが、平置きから縦にして持ち運ぶなど、向きを変える事は多々ある。その際、箱の中で模型がきちんと固定されていないと、運搬中の振動で模型本体が壊れてしまう。模型を固定するにはスタイロをスペーサーとして用いることが多い。模型を箱の中に入れると、箱と模型本体との間に隙間ができる。その隙間のサイズを測定し、そのサイズのスタイロを切り出す。このスタイロを模型と箱の間の左、右、上、手前などの必要な箇所に詰める。このままではスタイロ自体が動いてしまうので、虫ピンを箱の外側からスタイロの位置に数本刺して固定する。こうすることで、スタイロも動かなくなり、中の模型本体もしっかりと固定される(図4)。

最後に模型を手で持ち運ぶ際のポイントである。通常は箱を縦にして持ち運ぶ事が多いが、そんな時に便利なのが、手提げシールである。端部がシールになった手提げ用のパーツで、模型材料店などで手に入れる事ができる。模型の箱に直接手提げパーツを貼付けても良く、また大きな袋に入れてそれに貼付けても良い。手提げシールを箱の一番上に貼って手提げカバンのようにするのも一つの方法であるが、大きい箱になるとこれでは持ちづらい。大きい箱の場合、むしろ箱側面の下の方に手提げシールを貼付け、箱本体を脇にはさむようにすると持ちやすい(図5)。但しこのパーツはシールであるので、はがれやすい。布テープ等で補強しておくことをおすすめする。

上左:図3 面同士の接着方法

上右:図4 スタイロをスペーサーとして用いて模型を固定する

下:図5 手提げシールを用いると持ち運びも楽になる

 

■終わりに

ここまでくれば、模型も完成し、保管や運搬もできる状態になったかと思う。但し、いかに模型をきちんと保管しておいても、温度や湿度等の条件で、模型は時間と共に劣化していく。そのためにも出来上がった模型を一番良い状態で写真に撮って残しておきたい。次号はいよいよ「ドボクノモケイ」最終号、模型写真の撮り方について紹介する。

 

ドボクノモケイ

西山 健一Kenichi Nishiyama

(有)イー・エー・ユー|EA協会

資格:

技術士(建設部門:都市および地方計画)

 

略歴:

1975年 東京都生まれ

1998年 東京大学工学部土木工学科卒業(景観デザイン)

2000年 東京大学大学院社会基盤工学専攻修士課程修了(景観デザイン)

2000年〜2002年 (株)日本設計勤務

2002年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 博士課程入学

2003年 (有)イー・エー・ユー設立

2005年 東京大学大学院社会基盤工学専攻博士課程中退(景観デザイン)

2005年〜2007年 国土交通省東北地方整備局 景観デザイン研修講師

 

主な受賞歴:

2008年 土木学会デザイン賞 奨励賞(片山津温泉砂走公園)

2009年 広島南道路太田川放水路橋りょうデザイン提案競技(国際コンペティ

ション)最優秀賞

 

組織:

(有)イー・エー・ユー

取締役代表 西山 健一

取締役代表 崎谷 浩一郎

〒113-0033 東京都文京区本郷6-16-3幸伸ビル2F

TEL:03-5684-3544

FAX:03-5684-3607

HP:http://www.eau-a.co.jp/

 

業務内容:

・土木一般、建築、造園等に関わる景観デザイン、設計、コンサルタント業務

・都市開発、都市計画、まちづくりに関わるコンサルタント業務

・その他上記に付帯する業務

 

 

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