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2012.04.21

10|モケイづくりを始めよう その7~人の表現

西山 健一((有)イー・エー・ユー|EA協会)

■はじめに

前回(2011.12月号)は水の表現方法について紹介した。今号では「人物」の表現方法について紹介する。これまでに紹介したベース、地形、敷地、建物、植栽、水といった主要な要素で模型の大部分は完成する。しかし、これだけでは何か物足りない。そこに人の活動が表現されていないからだ。点景として「人」を表現することにより、模型にスケール感や臨場感を持たせる事ができる。

■模型に人を表現することのねらい

模型に「人」を置く理由はいくつかある。一つ目は周囲のスケールの基準となることである。人物模型がスケールの基準となり、模型を見る人は、設計対象物、周辺の風景、素材など、模型に表現されているものの大きさを把握する事ができる。
二つ目はそこで行われる「人」のアクティビティ(活動)を想像させることである。広場の模型を例に取って見よう。広場に人が置かれていない場合、模型を見慣れていない人にとっては、広場でのアクティビティをすぐに想像するのは難しい。逆に、具体的な活動をイメージできるような形で人が配置されていれば、見る人は広場でどんな活動ができるのかをすぐにイメージすることができる。それには設計者が具体的な活動のイメージを持たなければならない。多目的利用といった漠然としたものではなかなか活動イメージは伝わらない。
三つ目は、模型に賑わいや明るさを与える事である。人が模型に置かれると、具体的な活動イメージを想像できるようになるだけでなく、模型全体に動きが出て、「賑やかさ」や「明るさ」が生まれる。「賑わい」や「明るさ」を表現したい場合、人を模型に配置することは有効な手段となる。

■人の表現のポイント

次に「人」の表現における具体的なポイントをいくつか紹介しよう。
①適切なサイズでつくる
まず一つ目のポイントは「適切なサイズでつくる」ということである。先に述べたように模型の中で人はスケールの基準になるものである。その人のスケールが正確に作られていないと、周囲のもののスケールがすべて狂って見えてしまう。男性であれば170cm程度、女性であれば男性よりも若干低く作るとそれらしく見えるようになる。子供であれば、110〜130cm前後が適正な大きさであろう。1/500程度のスケールまでであれば、市販の人物パーツが手に入るが、価格は比較的高い(写真1)。1/1000程度のスケールになると市販されているものを手に入れるのは困難である。このスケールになるとある程度省略した表現をしても影響がないので、自作する事が多い。以下に簡単にできる1/1000の人物模型の作り方を紹介する(図1)

左)写真1 市販されている人物及び自動車の模型パーツ(カラースプレーで色を付けて配置する場合が多い。)
右)図1 簡単にできる1/1000人物パーツの作り方

②どのような人が何をしているのかが分かるような形で配置する
二つ目のポイントは「どのような人が何をしているのかが分かるような形で配置する」ということである。例えば同じ二人の人物が歩いている場合でも、「男女が腕を組んで歩いている」、「親が子供を連れて歩いている」では当然表現方法は異なる。また「子供達がサッカーをしている周りを親達が見守る」というように、誰が何をしているのかが分かるように人を配置していくと、より臨場感が出る(写真2)。ただ人を適当にバラバラに配置したのでは、そこでのアクティビティを想像するのは難しい。繰り返しになるが、このように人を配置するには、設計段階から具体的なアクティビティをイメージする事が重要である。具体的なアクティビティをイメージする事は、設計そのもののトレーニングにもなるし、設計案をより良い案にブラッシュアップすることにもつながる。
また複数の人をセットで置く事もコツの一つである。複数の人物をセットで置く事により、模型の中の人物にも相互に関係性が生まれ、より臨場感のある模型となる。

 ③人以外の要素も加えてみる
三つ目のポイントは人以外の要素も作ることである。建築の模型では、机や椅子といった家具を表現するのは当たり前である。土木の模型でもこうした人以外の物も表現すると、より表現が豊かになる。具体的には、車や自転車といった乗り物(写真3、図2)、パラソルや机・椅子といったもの、そしてボールや風船などの小さいアイテムも表現の対象となる。散歩している犬なども表現してみても面白い。

上左)写真2 人物の表現例1(具体的な活動のイメージが分かるように配置→例はステージの演者を何人かの観客が見ている様子)
(U市駅前広場スタディ模型 S:1/150 EAU作成)
上右)写真3 様々なスケールの車の模型
下)図2 簡単な車パーツの作り方(市販されている車パーツを用いても構わないが、価格が比較的高い。上記の作り方で作ると、簡単に大量生産する事ができる。)

④様々な色に着色された人を置く
四つ目のポイントは色である。「人」の色も模型全体の色調や雰囲気に合わせることが重要ではあるが、模型全体の色調からは離れて、あえて赤、黄、青などの原色系の強い色を用いることも多い。もちろん模型全体の色調が薄く「地」の色になっていることが前提であるではあるが、差し色として強い色を用いることで模型全体が華やかな印象になる。賑わいや明るい感じを表現するには有効な手段である(写真4)。

写真4 人物の表現例(原色系の色の人物模型を配置することで模型全体が華やかに見え、明るい印象の模型となる。)
(N計画スタディ模型 S:1/1000 EAU作成)

■終わりに

今号では人の表現について紹介してきた。実は今号で述べた内容はパースやスケッチを描く時にも当てはまる内容である。パースやスケッチにおいても、人を効果的に表現することで臨場感のある絵になる。この点についてはまた別の機会に紹介したいと思う。

ドボクノモケイ

西山 健一Kenichi Nishiyama

(有)イー・エー・ユー|EA協会

資格:

技術士(建設部門:都市および地方計画)

 

略歴:

1975年 東京都生まれ

1998年 東京大学工学部土木工学科卒業(景観デザイン)

2000年 東京大学大学院社会基盤工学専攻修士課程修了(景観デザイン)

2000年〜2002年 (株)日本設計勤務

2002年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 博士課程入学

2003年 (有)イー・エー・ユー設立

2005年 東京大学大学院社会基盤工学専攻博士課程中退(景観デザイン)

2005年〜2007年 国土交通省東北地方整備局 景観デザイン研修講師

 

主な受賞歴:

2008年 土木学会デザイン賞 奨励賞(片山津温泉砂走公園)

2009年 広島南道路太田川放水路橋りょうデザイン提案競技(国際コンペティ

ション)最優秀賞

 

組織:

(有)イー・エー・ユー

取締役代表 西山 健一

取締役代表 崎谷 浩一郎

〒113-0033 東京都文京区本郷6-16-3幸伸ビル2F

TEL:03-5684-3544

FAX:03-5684-3607

HP:http://www.eau-a.co.jp/

 

業務内容:

・土木一般、建築、造園等に関わる景観デザイン、設計、コンサルタント業務

・都市開発、都市計画、まちづくりに関わるコンサルタント業務

・その他上記に付帯する業務

 

 

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