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2011.06.01

03|模型の鉄則その2~表現したいイメージを決めよう

西山 健一((有)イー・エー・ユー|EA協会)

■はじめに

前号では、模型の制作範囲とスケールの話を取り上げた。土木が扱う空間や構造物は必ず周辺と繋がっている。そのため、模型の制作範囲を決めるには、周辺の何と関連付けて設計対象を捉えるのかを良く考えなければならないということを述べた。また模型のスケールについても、目的、設置場所、スケールに応じた表現、分割、そして制作期間や手間等をトータルに考えて決める必要があるということを述べた。
模型の制作範囲とスケールが決まると模型の大きさが決まる。しかしその一方で並行して考えなければならないのが、どういう雰囲気の模型を作るのかという事である。それには、表現したいイメージを決め、それに合った表現方法を選ばなければならない。今月号では、表現するイメージの設定と表現方法について取り上げる。また最後に模型制作でよく用いる材料についても紹介するので、参考にして頂きたい。

 

■ジオラマと土木の模型

最近、鉄道模型を見に行く機会が増えた。Nゲージと呼ばれる鉄道模型である。大きな山には樹林のように見える緑色の綿状の素材が敷き詰められ、また駅のあるまち中にはまるで本物のような建物の模型が並ぶ。そんな情景の中を、子供達が憧れる新幹線や特急列車が走り抜ける。私も幼い頃にはそんな現実そっくりな模型に興奮したものである。
しかし土木の設計で用いる模型は、この鉄道模型のジオラマとは異なる。伝えたいメッセージを効果的に模型に表現することが必要であるため、ジオラマのように現実に近づけるように模型を作る事は必ずしも有効ではない。むしろそれとは逆に、現実とは異なる表現を用いることの方が多い。

 

■模型に表現するイメージの決め、その表現方法を考える

では、現実に近づけるように表現しないのであれば、どのような模型を作るのか?それにはまず、模型にどのようなイメージを表現したいのかを考える必要がある。橋梁の骨組みの繊細なイメージ/にぎわう広場の明るいイメージ/きれいな水が流れる川の澄んだイメージといった具合に、模型に表現したいイメージを設定する。そして次にそれらのイメージがどのような方法によって表現できるかを考える。このプロセスの中で、私が特に気を配るのは、模型全体の色彩と使用する素材のバランスである。形や大きさが同じでも、色や素材の使い方によって、見る人が抱く印象は大きく変わってくるからである。
具体的な例の方が分かりやすいと思うので、色と素材に着目しながら、我々の事務所でよく用いる代表的な表現方法を以下に紹介する。(本来は表現したいイメージが先にあり、それに合わせて表現方法を考えるのであるが、それは工夫次第で可能性は無限に広がる。そのため、ここでは逆に代表的な表現方法を取り上げ、それがどのような特徴を持っているか解説する。)

①白模型
文字通り模型全体の色彩が白一色の模型である。色は一色であるが、テクスチャーや素材を使い分けることによって様々な物の表現が可能である。白模型は色がついていないため、純粋に対象物の「形」の表現する場合に用いることが多い。「形」そのもの美しさが出やすく、照明をうまく用いれば、陰影の美しさも出しやすい。

②着彩模型
着彩模型は模型の全体または一部に色がついている模型である。見る人の視線を引きつけることもでき、色の選択によって見る人に特定のイメージを与えることもできる。
我々の事務所で着彩模型を作る場合、現地調査で得られる現場の印象や、提案の中で強調したいものを手掛かりに色を選んでいる。ケースによっても異なるが、模型全体が優しく柔らかな雰囲気になるよう、白模型をベースに、見てもらいたい部分に薄く色をつけることが多い。(よく見かける芝生用のパウダーや樹林用の濃緑色の綿状の素材などは、色が強くきつい印象になるため、ほとんど使用しない。)濃い色を用いるとしても、使う色を限定するか、強調したい部分に面積を小さく限定することが多い。いずれにしても、絵やポスターなどにおける色の使い方と同様に、模型全体における色のバランスが重要であると考えている。
例外は人や車などの点景パーツである。点景パーツは面積が小さいため、赤、青、黄などの原色を用いても、きつい印象にはならない。逆に原色系の色を差し色として用いることで、模型に「にぎやかさ」や「楽しさ」を演出することができる。

③特定の素材を用いた模型
主となる素材に、特定の素材を用いた模型である。スチレンペーパーやスチレンボードといったよく使われる材料ではなく、コルクや木材、粘土など素材感のある材料を用いる。素材自体が持つ雰囲気や質感をそのまま模型に表現することができる。

 

写真1 上左:白模型の例(明治橋フェイシア部拡大模型(S:1/10 EAU作成))色がついていないため、純粋に形そのもののイメージを伝えやすい。また陰影の効果も出しやすい。
上右:着彩模型の例(白水ダム周辺整備検討模型(S:1/300 EAU作成))
白模型をベースに棚田や水面に薄く色がついている。
下:特定の素材(木材)を用いた模型の例
(片山津温泉砂走公園の展示用模型パネルS:1/500 EAU作成))
木材という素材で統一し全体のバランスを保ちながらも、場所ごとに様々な木材を使い分けている。木材のもつ素材感をそのまま表現できる。

 

■表現密度 ~メリハリをつける

色や素材を選び、模型全体のイメージが固まってくると、次はどのような密度で表現するかが問題となる。どのような模型でもスケール感を出す(見る人がモノの大きさを感じ取ることができ、感情移入ができるように表現する)ことは必要であるが、模型全体にわたってすべて同じ表現密度でつくる事は得策ではない。表現にメリハリをつけることで、見てもらいたい部分に見る人の視線を引きつけることができる。
例えば、まちの模型を作る場合を考えてみよう。模型作製範囲に含まれる建物の中で、「地」となる建物はその表現密度を落として省略した表現とする(但しスケールによって省略の度合いを考えないと、スケール感が出なくなるので注意が必要)。逆に対象地や注目してもらいたい建物は表現密度を上げて細かく作ることにより、強調することができる。(場合によっては、他とは異なる素材や色彩を用いることもありうる。)

 

写真2 H市街路周辺検討模型(S:1/300 EAU作成) 左:全体写真 右:拡大写真
街路の周辺の建物で注目すべき建物は表現密度を上げ、それ以外の建物は表現を省略している.

 

■おわりに

今月号では、模型に表現するイメージの設定と表現方法について述べてきた。文章の都合上、順に説明をしてきたが、本来これらは独立して考えるものではなく、前号で紹介した模型の作成範囲、大きさ、スケールなど、他の要素と連動して考えるべきものである。模型制作の目的や意図と照らし合わせながら、これらの基本的事項を、総合的に計画することをお勧めしたい。
次号からはいよいよパーツ毎の具体的な模型表現の紹介を行っていく。

ドボクノモケイ

西山 健一Kenichi Nishiyama

(有)イー・エー・ユー|EA協会

資格:

技術士(建設部門:都市および地方計画)

 

略歴:

1975年 東京都生まれ

1998年 東京大学工学部土木工学科卒業(景観デザイン)

2000年 東京大学大学院社会基盤工学専攻修士課程修了(景観デザイン)

2000年〜2002年 (株)日本設計勤務

2002年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 博士課程入学

2003年 (有)イー・エー・ユー設立

2005年 東京大学大学院社会基盤工学専攻博士課程中退(景観デザイン)

2005年〜2007年 国土交通省東北地方整備局 景観デザイン研修講師

 

主な受賞歴:

2008年 土木学会デザイン賞 奨励賞(片山津温泉砂走公園)

2009年 広島南道路太田川放水路橋りょうデザイン提案競技(国際コンペティ

ション)最優秀賞

 

組織:

(有)イー・エー・ユー

取締役代表 西山 健一

取締役代表 崎谷 浩一郎

〒113-0033 東京都文京区本郷6-16-3幸伸ビル2F

TEL:03-5684-3544

FAX:03-5684-3607

HP:http://www.eau-a.co.jp/

 

業務内容:

・土木一般、建築、造園等に関わる景観デザイン、設計、コンサルタント業務

・都市開発、都市計画、まちづくりに関わるコンサルタント業務

・その他上記に付帯する業務

 

 

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