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2011.07.01

04|モケイづくりを始めよう その1~ベースをつくる

二井 昭佳(国士舘大学|EA協会)
安田 尚央(国士舘大学工学研究科建設工学専攻)

■はじめに

前号までで模型をつくる前に考えておきたいことについて一通り説明した。そこで、今月号からは具体的な模型のつくり方に入っていきたい。最初に取り上げるのは、模型のベースとなる地形の作成方法である。慣れるまでは難しいと感じるかもしれないが、土木の設計では地形の操作が空間の質を大きく左右することが多く、非常に重要な作業である。できるだけ初めての方にもわかるように説明していくので、ぜひ挑戦して頂きたい。

 

■まずは地図を持って現地へ行こう

設計を始める際にまずやることは、現地の様子を把握しアイディアを練るために、現地に足を運ぶことだと思う。その時に持参してほしいのが、各市町村で配布している都市計画白図である。白図の縮尺は市町村の面積によって異なるが、多くの場所では1/2500のものが用意されており、これが市販されている地図のうち最も地形の状況がわかる資料である。大学の設計演習ではもちろんのこと、実際の仕事でも1/300程度までの模型であれば、足りない情報を現地調査で補うことで模型のベース図として十分使うことができる。

それでは、実際の1/2500の都市計画白図を見てみよう。図1は、東京都世田谷区野毛三丁目の国分寺崖線の付近である。これを見ると、地形が大きく変化している場所には2mピッチの等高線が記載されているが、それ以外の場所には一部の交差点に標高が記されているだけである。これをベース図に変えるためには、現地で地形の流れを押さえていかなければならない。今仮に図1の青枠が模型作成範囲だとすると、現地では、A地点からB地点、A地点からC地点、D地点からE地点は、それぞれ一定の勾配になっているのか、それとも勾配が変化しているのであればその変化点はどこか、またF地点の高さはD地点と同じでよいかといった具合に、細かい地形の流れを地図に記入し、現地写真を撮影していく必要がある。等高線をイメージしながら、それに必要な地点を押さえていくことが、後々の作業をスムーズに進めるコツである。

 

図1:1/2500の都市計画白図と現地調査のポイント例

 

■場所のイメージにあわせて等高線ピッチを決める

現地調査で地形の流れを把握できたら、次は等高線のピッチを決めていく。これは伝えたい場所のイメージを表現する上で大事なポイントである。したがって、決めるべきことは地形を作成する材料の厚みであり、それに合わせて等高線ピッチも決まることになる。
しかし、実はその前に考えて欲しいことがある。それは、模型を作成する範囲の地形がほぼフラットだと考えてよいかどうかである。実際には多少の高低差があったとしても、それが場所のイメージに大きな影響を及ぼさないのであれば、高低差を無視して模型をつくるほうが早いし、実際のイメージに近い模型になるからだ。写真1はU市の駅前広場の模型である。ここでは、場所のイメージに合わせて、ベースとなる地形をフラットで作成している。これによって、広場内の微妙な地形の盛り上がりを理解しやすくなっていることがわかると思う。

 

写真1:U市の駅前広場の模型(EAU作成)

 

その一方で、地形の高低差が場所のイメージに大きな影響を与える場合には、等高線ピッチを決めなければならない。なおここからは話を分かりやすくするために、模型の縮尺は1/300、また最も基本的な材料であるスチレンペーパーを使うことを前提に話を進めたい。スチレンペーパーは1、2、3、5、7mmの厚さが市販されている。このうち、よく使用するのは3mmまでの厚さのものである。それ以上になると、一段の見た目の差が大きすぎるし、曲線が多い等高線ではきれいな断面に切ることが難しいからである。
ここで、縮尺によってはこの厚みが実際の高さとして中途半端ではないかと思う方がいるかもしれない(普段、学生を見ていると、たいていここで悩んでいるので)。しかし、相当の精度を出さないと場所のイメージが狂ってしまう場合を除けば、1mm×3枚、2mm×2枚、3mm×1枚が、1mだと考えて良いと思う。それよりも大事なことは、伝えたい場所のイメージに合わせて、その厚みをどのように使い分けるかである。
その使い分けとしては、設計上大事な部分はできるだけ1mmを用いて地形の細やかさを表現し、山や谷といった高低差が非常に大きい場所では3mmを使うのが良いと思う。ちなみに写真2・3は私の研究室の学生がコンペに応募するために作成した1/300の模型であるが、写真2では全体的に地形の細やかな印象を出すために設計対象地以外も1mmで作成している。また写真3では、谷地形であることがわかれば良い崖の部分を厚みのあるスチレンペーパーで作成している(この時には5㎜を使用)。

 

写真2:『世田谷こめにてぃ-水辺を取り戻すダム』「景観開花。2009」国士舘大学二井研究室応募作品

 

写真3:『森のほっとステイション』「景観開花。2008」国士舘大学二井研究室応募作品

 

■いよいよ等高線を引こう

等高線ピッチが決まると等高線を引くことになるが、まずは手書きで引くことをお勧めする。思い通りの地形をつくるためには、図面を様々な角度から覗き込んで実際の見え方を確認する作業が必要不可欠だからである。もしデータ化したい場合には、手書きの図面をスキャンし、イラストレーターでトレースするのが楽だと思う。さらにCADに移動したい場合には、EPSファイルに変換すれば読み込むことができる。
このほか等高線を引く際に覚えておいてほしいことは、①先に述べた高さの誤差を少なくするために、一番低い場所ではなく、設計上大切な場所の高さを基準にすること、②道路を横断する場合には道路線形に直交するように引くこと、③建物をよけて引くことである(図2)。あとは、現地調査で記入した地形の流れを意識しながら等高線を引いていけばよい。ちなみに図2は、5月号に掲載した『宿場町(みちのえき)』の模型下図であり、模型写真と見比べてもらうと分かりやすいと思う。

 

図2:模型作成用下図

 

■地形を切り出す作業にとりかかろう

さあ地形を切り出そうといいたいところだが、その前にやっておいた方が良い作業がある。それは、等高線があっているかどうか、残す部分がどこかを確認するために、1/1000程度に縮小したベース図を用いて、試し切りをすることである(写真4)。とくに凹凸が混在している複雑な地形の場合には、この作業をすることをお勧めしたい。
その確認が済んだらあとはスチレンペーパーを切り出し、それを重ねていけば地形は完成である。切り出す際には、試し切りの時とは違い、精度を出すために1枚の図面を低い場所から順々に切っていくのが良い。また、この作業の際に役に立つのが、貼ってはがせるスプレーのりである。これを使えば、図面をしっかりと固定して切ることができる。そして重ねる際に役に立つのが、粘着力のつよいスプレーのりである。スプレーのりはやや高価ではあるが、作業効率が大幅にアップするので、揃えておくと良いと思う。(以上二井)

 

写真4:実際に模型を作成するために試し切りした図面

 

■模型土台

地形を切り出したら、模型を載せる土台をつくっておこう。土台に固定することで、スチレンペーパーで作成した地形(コンタ)が反ってしまうことを防げるし、かさ上げすることになるためピンなどを刺すスペースも確保できる。もちろん模型の見栄えもよくなる。ここでは軽く加工しやすいスチレンボードで、土台のつくり方を紹介する。使う厚みはつくる模型にもよるが5mmでつくれば安心。

図3:土台の作成手順

 

■今月の材料

□スチレンペーパー

通称スチペ。発泡スチロールを加工したもので、1mm、2mm、3mm、5mm、7mmの厚さがある。ちなみにスチレンペーパーには裏表がある。コンタを積む際には使う面を統一した方がきれいに仕上がる。また曲げやすい方向があるので曲面を表現する際は注意したい。

 

□スチレンボード

通称スチボ。スチレンペーパーの両面に紙を貼ったもので、1mm、2mm、3mm、5mm、7mmの厚さがあるが、実際には紙の厚み分スチレンペーパーより厚い。片面の紙をはがすと曲げやすくなり、曲面を表現することが出来る。(以上安田)

ドボクノモケイ

二井 昭佳Akiyoshi Nii

国士舘大学|EA協会

資格:

博士(工学)

 

略歴:

1975年 山梨県生まれ

1998年 東京工業大学工学部社会工学科 卒業

2000年 東京工業大学大学院社会理工学研究科社会工学専攻修士課程 修了

2000年 アジア航測㈱ 入社(道路・橋梁部所属)

2004年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻博士課程 入学

2007年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻博士課程 修了

博士(工学)

2007年 国士舘大学理工学部都市ランドスケープ学系専任講師

2012年 スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)guest professor

2013年 国士舘大学理工学部都市ランドスケープ学系准教授

2014年 国士舘大学理工学部まちづくり学系准教授

 

主な受賞歴:

2006年 第8回「まちの活性化・都市デザイン競技」奨励賞

2007年 景観開花。「道の駅」佳作

2009年 広島南道路太田川放水路橋りょうデザイン提案競技(国際コンペティ

ション)最優秀賞

篠原修・内藤廣・二井昭佳編「GS軍団連帯編 まちづくりへのブレイクスルー 水辺を市民の手に」、彰国社、2010

 

組織:

国士舘大学 理工学部

〒154-8515 東京都世田谷区世田谷4-28-1

TEL:03-5481-3252(理工学部事務室)

HP:http://www.kokushikan.ac.jp/faculty/SE/laboratory/detail.html?id=107007

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安田 尚央Takahiro Yasuda

国士舘大学工学研究科建設工学専攻

1988年生まれ。岐阜県出身。

国士舘大学理工学部都市ランドスケープ学系を卒業後、大学院に在籍。二井研究室所属。学部3年生の時からイー・エー・ユーにて模型アルバイトに取り組む。

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