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2011.12.01

07|”ものこわし事業”での景観整備

関口 佳司(関口佳司マネジメント・コンサルタント&景観研究所|EA協会)

 

1.はじめに

一般に景観整備事業は構造物建設や街づくりといった“ものづくり事業”において如何に景観を保全・創造していくかという業務が多い。今回はその逆で、構造物や施設を解体・撤去した後に如何に景観を復元あるいは修景していくかという、いわゆる“ものこわし事業”における景観整備事業の事例をご紹介いたします。

景観マネジメント・サイクル(図-1)における位置づけとしては「撤去・解体」になり、①事業開始前当時への景観復元あるいは改造、②新事業構想での景観計画立案、③未利用地の景観デザイン、④景観変化の将来予測、などを検討します。さらには「マネジメント・コンサルティング」(※)として、“エンジニア・アーキテクトの学術・技術を基に、良好な景観を継承・創造・保存することによって、行政機関・地域住民・企業・店舗・訪問者等(ステークホルダー)に心理的・文化的・経済的な利益(ベネフィット)をもたらす方法や知恵を提供する”という業務もあります。

 

図-1:景観マネジメント・サイクル

 

2.事例紹介

 

 

 

「ケーブルカー施設撤去に伴う景観整備事業」を紹介いたします。
当該事業地はわが国を代表する観光地のひとつ箱根(関所・芦ノ湖・駒ヶ岳など)で、1957年開業の駒ヶ岳ケーブルカーおよび1958年開業の山頂スケートリンクに関連する施設を全面撤去し、景観整備された事例です。
通常の景観整備と同様に、
a) 安全・防災(ロープーウェイ避難路の確保、盛土・切土の斜面安定など)
b) 文化・産業遺産(観光・レジャー産業発展の回顧、歴史保存など)
c) 自然環境(植生バランス、気象など)
d) 跡地の活用(新たな展望台・散策路など)
e) 地域住民の居住地への愛着(ふるさと、地域ブランドなど)
f) 施工による環境への負荷(仮設道路・廃棄物置き場の低減化など)
さらには、「ステークホルダー・ベネフィット」(図-2)の観点から、
g) 地域産業への経済効果(宿泊施設・飲食産業など)
h) 来訪者の観光価値(自然、文化・歴史、景観など)
i) 新規事業の展開(PRツール、商品開発など)
j) 事業主体への経済的負担軽減(企業イメージ、施工方法など)
を考慮し、施設の解体・撤去ならびに景観整備事業が展開されました。

 

図-2:ステークホルダー・ベネフィット

 

植生復元時には、遠景では路線跡線形が目立たず近景では切通しや石垣といった歴史的変遷を味わえる景観、新設散策路でのシークエンス景観、新たな視点場による眺望景観、などを有する観光スポットになると考えます。

 

3.おわりに

当該事業を含め景観整備事業への積極的な展開は、関係各位の理解と協力が必要です。その際、デザインと共に重要となる要因に「ステークホルダー・ベネフィット」が挙げられると考えます。行政機関・事業主体・地域住民・商店会・企業・訪問者などに心理的・文化的・経済的な利益をもたらす事業として景観整備があることを啓蒙していくことも大切ではないかと考えます。また、その基となる学術・技術を提供するのがエンジニア・アーキテクトではないでしょうか。

※【補説】
「マネジメント・コンサルティング」とは、“人・物・金・情報などのリソース(諸資源)を、目的達成のために最良(最適・効率的)に使用するための方法や知恵を提供すること”で、業務を依頼され、指導・教育訓練、ファシリテーション(進行・運営)、診断・予測、調査・研究、戦略立案・展開支援などを行います。したがって、建設産業での建設コンサルティング(計画・設計)というよりは、ビジネスの世界での経営・戦略コンサルティング(事業展開)の業務となります(図-3)。{詳細は別機会に}

 

図-3:事業展開の代表的フロー

風景エッセイ

関口 佳司Keiji Sekiguchi

関口佳司マネジメント・コンサルタント&景観研究所|EA協会

資格:

マネジメント・コンサルタント(CMC)

技術士(建設部門)

一級土木施工管理技士

 

略歴:

1959年 埼玉県生まれ

1983年 山梨大学工学部環境整備工学科卒業

同年  鉄道系グループ建設会社入社

2000年 博士(工学)[東京大学]取得

同年  関口佳司景観研究所設立

2005年 関口佳司マネジメント・コンサルタント設立

 

主な著書:

「環境工学公式・モデル・数値集」、「土木技術者のための原価管理」、「土木技術者のための原価管理 問題と解説」、他

 

組織:

関口佳司マネジメント・コンサルタント&景観研究所

代表

〒357-0044 埼玉県飯能市川寺202-8

TEL:042-972-2728

FAX:042-972-2728

HP:http://www.sekiguchikeiji-lab.jp/

 

業務内容:

・学術および技術研究開発業務

(景観、環境、建設技術、各種マネジメント、他)

・建設系コンサルタント業務

(建設マネジメント、空間・土地利用計画、景観街づくり、他)

・ビジネス・コンサルタント業務

(事業戦略・展開、組織・体制改革、人材育成、技術・商品・サービス開発、他)

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エンジニア・アーキテクトのしごと

2012.07.31

07|エンジニア・アーキテクトが展開するマネジメント・コンサルティング
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2011.12.01

07|”ものこわし事業”での景観整備
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