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2011.10.01

05-1|別府港海岸の整備と里浜づくり その1

町山 芳信((株)地域開発研究所|EA協会)

はじめに

明治末期に広められた「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」のコピーがあるように、別府は海のある温泉として著名であるが、高度経済成長期に整備された現在の海岸線のほとんどが消波ブロックで被覆され、さらに、国道10号の開通により海岸線と市街地が分断されたことで、現在では海に近付くこともほとんどできない状況にある。
戦前までの別府は海岸線の殆どが砂浜であり、砂から噴出する天然海浜砂湯は、県内外から多くの人を集め、砂湯や潮干狩り、海水浴などで一年中賑わっていた。しかし、大正期からの市街地拡大や港の拡張等により、かつての砂浜は埋め立てられ、近年では市民が海辺の自然にふれあえる空間は少なくなり、また、コンクリート護岸に覆われた海岸線は、直背後までホテル・人家等が立ち並ぶなど都市化がすすめられてきた。
今回は、この別府で実施されている事業概要を説明する。

 

 

図-1 別府市街地の変遷(左:明治36年、右:現在)

 

別府港海岸事業の概要

別府港の海岸線は、港の拡張整備等に伴い築造されてきたが、老朽化が激しく、また、台風等による異常時の防護機能も現在の基準に照らして不足しているため、越波や高潮による被害が継続的に発生し、背後住民に不安を与えている。

こうしたことから早急な整備要請が強く、さらに、護岸背後には国際観光都市別府を代表する温泉旅館街や多数の商業施設及び公共施設が密集していることから十分な防災機能を有する整備が急務な状況にあった。このため、平成13年度より、北浜地区、餅ヶ浜地区、上人ヶ浜地区の3地区(2.15km)を直轄海岸保全施設整備事業(高潮対策)として事業着手している。

この事業は、当初の構想段階から有識者による検討委員会と住民参画(PI:パブリック・インボルブメント)により、地域住民と行政が海岸の課題を共有し、協働で計画を策定する取組みを進めてきた。

 

図-2 整備地区位置図

 

上人ヶ浜地区の概況

上人ヶ浜は別府港の北側に位置し、自然海岸の残る上人ヶ浜公園に隣接し風光明媚な海岸景観を楽しめることから、保養所やホテル等宿泊施設が国道10号との間の海岸直背後に立地している。北部には下水処理場や遊興施設、集合住宅といった土地利用となっている。

 

図-3 上人ヶ浜地区航空写真

 

 

図-4 隣接する上人ヶ浜公園の自然海岸(左)と対象地区(右)

 

餅ヶ浜地区の概況

餅ヶ浜は国際観光港に隣接し、別府港のほぼ中央部に位置する。背後土地利用は郊外型の比較的規模の大きな商業施設が多く立地するほか、別府警察署・別府郵便局等の中核的な公共施設やホテル、集合住宅等も立地する。

 

図-5 餅ヶ浜地区航空写真(整備中)

 

 

図-6 整備前の餅ヶ浜地区

 

北浜地区2の概況

本地区の北浜二丁目・三丁目地先は別府市の中心市街地が海岸背後に立地する。海岸直背後は大正期に埋め立てられた北浜旅館街で、別府八湯のうち別府温泉の中核となっている。

 

図-7 北浜地区2航空写真

 

 

図-8 整備前の北浜地区2

 

北浜地区1の概況 

地区南側の浜町地先は旧別府町の中心であった浜脇に隣接する古くからの市街地で、護岸背後には家屋が密集している。海岸背後は遊興施設、ホテルや飲食店が立地している。

 

図-9 北浜地区1航空写真

 

 

図-10 整備前の北浜地区1

 

別府港海岸における「里浜づくり」

これまでの海岸整備は、安心・安全な暮らしを守るための「防護」に主体が置かれてきた。いうまでもなく今年3月の東日本大震災により、これまで以上に「防護機能」の充実が望まれている。しかし、施設のみによる防護には限界があり、防災意識の必要性も多くの人々に理解されているだろう。
平成13年度から始まった別府港海岸整備事業(高潮対策)では、ほぼ同時期に国土交通省港湾局により検討が行われていた「里浜づくり」の概念を、海岸整備を契機として実践した事業でる。「里浜づくり」とは、簡単にいえば「海辺でこころ豊かに、安心・安全に暮らすために、海辺を慈しみ、大切にしていくと同時に、海の脅威を知り、それに備えること。」と定義される。
前述のように、特に高潮対策事業では、圧倒的な海の外力に対して、どのように防護するかは海岸工学の専門領域であり、住民の参加する余地はほとんどなかった。これに対して、別府港海岸では自由参加によるワークショップで、住民に理解できるよう計画案における防護機能、景観機能、環境機能、利用性を丁寧に説明し、討議により聴取した意見をさらに計画案に反映させるという方法によって合意形成を図ってきた。
次回以降は、この合意形成のための取組みや、海岸工学や海域環境・景観の専門家と連携したデザイン検討について述べる予定である。

エンジニア・アーキテクトのしごと

町山 芳信Yoshunobu Machiyama

(株)地域開発研究所|EA協会

資格:

技術士(建設部門)

 

略歴:

1960年 千葉県生まれ

1982年 東京農業大学農学部造園学科卒業

1982年 (株)ラル計画事務所勤務

1984年 自営

1987年 (株)シビルテック勤務

1990年 (株)地域開発研究所勤務

 

主な受賞歴:

2001年 土木学会景観・デザイン賞 優秀賞(鹿児島本港の歴史的防波堤)

 

主な著書:

歴史的土木構造物の保全、鹿島出版会、2010.9.20、(共著)

 

組織:

(株)地域開発研究所

代表取締役 山下 正貴

〒110-0015 東京都台東区東上野2-7-6 東上野T.Iビル

TEL:03-3831-2916

FAX:03-3831-6259

HP:http://www.rdco.co.jp/

 

業務内容:

・開発史、港湾、海岸、河川、景観、地域計画・観光計画、経済、環境、広報・PI、国際協力、地域開発全般の調査・計画・設計業務

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