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2015.05.18

07|大分都心南北軸整備事業

西村 渉((株)ワークヴィジョンズ)

概要:

大分駅周辺の連続立体交差事業、新駅ビル建設と足並みを揃え、駅と交差する大分都心南北軸を一体的に整備するプロジェクト。マスタープランではこの都心南北軸を「都心の顔となるメインストリート」として位置づけている。駅南側にはシンボルロード(大分いこいの道)、駅北側には北口駅前広場と市道中央通り線(駅前通り)が位置し、これら3つの空間が南北に連なり都心軸を形成している。都心にできるこの巨大な公共空間に定めたトータルデザインコンセプトは「小さな森から大きな森へ」。上野丘の森へ至る緑の軸は、周辺の街と関係性を持ちながら、中心市街地の賑わいを持続させる空間としての役割を担っている。

 

 

 

シンボルロードの全景。市民が自由に使い、育てながら成長していく場所として、作り込みすぎない緑の広場が駅前にできた。「駅裏」と呼ばれていた頃の面影はなく、新たな駅前の顔として、四季折々の木々と共に都心の森を形成している。

 

 

 

地形に微妙なアンジュレーションをつけ、隣接する車道の存在を感じさせないようにしている。緩やかな丘が連続すると、子供達は走り回り、大人達は寝そべるなど、様々なアクティビティが生まれ続ける。

 

 

 

市民が芝張りを行った植樹祭の様子。自らが広場を育てる第一歩として、この場所へ愛着を持って頂けたイベントとなった。完成した芝生広場は、その後立ち上げられた「大分いこいの道協議会」によって定期的な手入れがなされ、いずれは市民による自主的な維持管理運営ができることを目指している。

 

 

 

ファニチュア類は、南北軸全体で統一して使えるものを念頭においてデザインした。例えば歩道用の照明については、コストコントロールに配慮し、柱部分は既製品、灯具は同形状の鋳物パーツを使いながらタイプの違う2つの器具をデザインした。

 

 

 

既存の樹木は極力移植を行い、かつての土地の記憶を継承した。シンボルツリーとして新たな役割を得たこれらの木々は、クリスマスには電飾で飾られ、日常はこの場所一番の木陰として愛されている。写真は地元の高校生が部活動をしている様子。日陰に並んで腕立て伏せをしていた。

 

 

 

場所は駅北側に移り、リニューアルした北口駅前広場の全景。一部未施工部分もあるが、写真は開業式典の様子を撮影したもの。西側に大きく広場を作り、中央通りへ繋がる市民の活動の舞台として計画した。写真左下に見えるのは、市の施策として取り組んでいる南蛮文化を象徴する銅像や床面に貼られた南蛮地図。

 

 

 

新駅ビルから出ると、ロータリーの形状に沿って、大きく弧を描いたシェルターが出迎える。3次元曲面となる天井は、地場産の杉材を高い施工技術により貼り付け、特徴的な美しい表情を作ることができた。夜間はLEDライン照明により照らされ、リング状の光が浮かび上がる。

 

 

 

広大な駅前広場に居場所ができるよう、憩いの空間を緑陰とベンチのセットで設えた。隣接する駅前商店街の前や、中央通りに連続する位置に配置し、周辺と賑わいが繋がることを期待している。

 

 

 

市民が自由にステージとして使うこともできる「みんなのテーブル」と、その真向かいにあるミストの水景施設。日常的な賑わいのシンボルになるよう、こうした舞台的な施設を駅前広場に作った。写真はその使い方の一例だが、話を聞くと「このテーブルの上で待ち合わせの約束をしているのです」とのこと。周りに座っていた方を巻き込んで遊んでいた。

 

 

 

整備計画策定に向け、仮設工事が行われた市道中央通り線。片側3車線のうち1車線を減車線化し、歩道を広げる計画である。賑わいづくりを担う市民有志が広がった歩道にて様々な活動を行い、街へ訪れる新たな動機へと繋がる仕組みを模索中である。

 

 

 

プロジェクトに関わってから5年が経過したところだが、南北軸全体の完成にはまだまだ時間が必要である。特に中央通りの減車線化については未だ議論が続いており、新駅ビル開業後、仮設工事によって広がった歩道への人の流れがどのように変わるかを慎重に見定めている状況である。街を変えるまたとないこの機会に、未来を見越した「市民が使いこなせる通り」として再発進することを願うばかりである。

 

 

 

所在地:

大分県大分市 大分駅周辺

 

竣工年:

【シンボルロード(大分いこいの道)】
2014年7月 全面供用開始
【大分駅北口駅前広場】
2015.年3月 一部供用開始

 

諸元:

【シンボルロード】
広場空間 :A=57.0m×440m=25,080 ㎡
西側歩道:W=10m L=440m
東側歩道:W=6m L=330m
【大分駅北口駅前広場】
A=16,200 ㎡
【市道中央通り線】
W=36m L=550m

 

受賞:
2015年 九州まちづくり賞(ホルトホール大分と大分いこいの道の一体整備によるにぎわいの創出)

 

関係者:
事業主体|大分市
詳細設計|パシフィックコンサルタンツ株式会社・株式会社ワークヴィジョンズ・東亜コンサルタント株式会社

EAプロジェクト100

西村 渉wataru nishimura

(株)ワークヴィジョンズ

1979年 山口県生まれ
2002年 熊本大学工学部環境システム工学科卒業
2004年 熊本大学大学院自然科学研究科環境土木工学専攻 博士前期課程修了
2005年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 博士課程中退
2005年 株式会社ワークヴィジョンズ 勤務

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